第22話

文字数 2,150文字

「聖治さんッ!みっ、南森町でよろしいですか?」興奮状態で呂律が回らない占部が確認した。「せや、先ずは、斉加さんに報告や。最短距離で行きや!警察の検問は早いでっ!、ラジオやッ!ラジオつけとき」聖治が占部に指示した。幸いラジオではまだ、聖治たちのことはニュースにはなっていなかった。「やっ!やりましたね、俺たち、会長の敵を取ったんですね」何時もは冷静な島内も、感情が激していたせいか、饒舌だった。占部が運転する車は、京阪国道を東へと抜け、斉加と高木が待つ南森町のアジトへと向かった。ヘッドライトの光の中ガレージのシャッターを全開にして高木が両手を広げて待っていた。占部がガレージの中へ車を頭から入れた。「やったか!」車を降りた三人に高木が声をかけた。「嗚呼!、手応えはあった、徳重が倒れて動かなくなったのは確認したは」聖治が高木に答えた。「よっしゃー・ーアッ!、さあ、斉加さんがお待ちや行こうか」高木が三人を先導するように斉加の元へと急いだ。「聖治!、やったな、これで、兄貴も成仏できる!ほんま、おおきにな」涙を浮かべた斉加が聖治の手を握り頭を垂れて礼を言った。「さあ、後は、バラケルで、これ持って行ってくれや、逃亡の為の資金や」言いながら斉加が三百万円が一束になったものを四束机の上に置いた。「さあ、いってや、此処は今日限りに引き払う、早田の親父と車は俺の方でかたづけとくさかいに」斉加が聖治たちに言い急かした。「此処を閉めるとなったら、事後の連絡はどうなりますのやろ」斉加に高木が言った。「取り敢えずはスマホで連絡を取ることになる、集合が必要になるときは俺の方から場所と時間は決めて連絡を入れるから、取り敢えずみんなはなるべく目立たん所へ身を隠してくれ」斉加がそれぞれに指示を出した。「ちょっと待ってくれ」聖治がはやる面々を制して口を開いた。「徳重の死亡が確認出来たら、俺は速やかに自首するつもりや」聖治が心の内を正直に吐露した。「それについては、後日にしようやないかい、それよりも今は一刻も早くそれぞれが身を隠すことや。至誠会の狩りが始まる、今日は俺たちの夜やったけど、今度は向こうが捕食者や、伊吹会の他の組にも、逃亡の事、協力を要請してみるし」斉加が聖治を宥めて言った。「解った!」聖治が斉加に返した。
 他のメンバーと分かれ、南森町のアジトを出た聖治は、タクシーで香穂の待つ十三のアパートに移動することにした。大通りに出て手を上げると、一台のタクシーが聖治の前を行き過ぎた所でハーザードランプを点滅させ停止した。後のドアが開くと聖治は後部座席に乗り込むみ行き先を告げて、深くタクシーの座席に身を沈めた。「お客さん飲みの帰りですか?」何も知らない運転手が軽口を掛けてきた。「解ります?」運転手の問いに聖治が乗った。「イヤーッ!ルームミラーで見てたら、なんや、えらい、お疲れに見えたので」運転手がルームミラー越しに聖治を見ながら言った。「まっ!そんなとこですは」聖治が返事を返した。タクシーの車窓越しに赤色灯と大音量のサイレンを鳴らしながらパトカーが何台か聖治の乗るタクシーとすれ違い、北新地の方向へと消えて行った。「えらい、騒々しいな、さては、大きい事故でもあったかな」運転手がドアミラーを確認しながら言った。聖治は走り去るパトカーを見ることもせずにまっすぐに、タクシーのルームミラーで後方の景色に視線を投げ掛けていた。『追跡は着いていないみたいやな』心の中で呟いた。十三の駅の東改札出口付近でタクシーを降りると、二月の寒風が聖治の体を刺した。しかし、聖治は寒さはまるで感じなかった、いや、むしろ、体は言いようのない熱を帯び、毛穴は開きこの季節には不釣り合いな汗さえかいていた。感情は異常な高ぶりを覚えて、押さえようのない興奮状態が香穂の待つアパートへと歩き出した聖治を支配した。スマホの番号を押した。呼び出し音の向こうから香穂の声が聞こえた。「寝てたか?起こして済まん。今駅やねん、もうすぐ帰るから、ドア開を開けといてくれ」手短に言うとスマホを切った。アパートの自分の部屋の前に立つとドアのノブを回す、鍵は掛かっていなかった。「お帰りなさい!こんな時間までご苦労様」香穂の穏やかな声が聖治を包んだ。「シャワー浴びたいねん」体の高ぶりと熱を取りたい聖治が香穂に訴えた。「解った!今着替えとか用意するから先に入って」言うと香穂は部屋の奥へ入っていった。聖治はシャワーの温度調整のノズルを冷水に合わせて頭から被った。アドレナリンを出し続けていた体には、冷たい水が心地よく聖治の体の奥の奥まで浸透していった。「タオルと着替え此処に置いとくね」香穂の声が扉の向こうから聞こえた。その時、聖治の中で何かが暴発した。「入れよ!」言うと同時に聖治は香穂の腕を掴みシャワー室に無理矢理引き釣り混んだ。「キャッ!何、どうしたの!」驚いたように香穂が声を出した。「・・・・・」それには答えずに聖治は香穂の衣服を全て剥ぎ取り、獣のようになった己の体の我慢ならない高ぶりと、熱さを香穂の小柄な体に何度もぶつけた。香穂はシャワーに撃たれながら、両手で口を押さえて野獣の如きに変貌した聖治にその身を任せるしか術を知らなかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み