第21話
文字数 1,295文字
聖治たち、大阪政道会のヒットマンが立ち去った後、至誠会会長付の運転手の、卯月がビルの玄関口に車を回した頃には、辺りはすでに女達の声で阿鼻叫喚の有様になっていた。その模様を認知しても、卯月には状況が飲み込めなかった。「エッ!」時間と共に目の前で起きている惨状が少しづつ卯月の視力から脳へ伝達されて行った。「なんやねん!これ、どないなっとんねん」周囲に憚ることも無く、大声で叫んだ。「ウグッ!」苦しそうな唸り声が聞こえた。「ハッ!」と我に返った卯月が声の方へ近づき耳を澄ませると、徳重が腹部を押さえて蹲っていた。「会長ッ!大丈夫ですか?会長ッ!」卯月が徳重を抱き起こした。徳重は口は動くものの言葉は聞き取ることが出来なかった。「救急や救急車!」卯月がビルの入り口で怯えるホステス達に声を掛けた。「すっ!直ぐに呼びます」卯月の呼びかけにエリが答え、自らのスマホで百十九番に連絡した。「頭や!頭に連絡せな」言うと卯月はスマホを取り出し至誠会若頭、桑木の番号を押した。「・・・・・、若頭!卯月です」何度かのコール音の後携帯が繋がった。「なんやッ!慌てて、落ち着かんかい」スマホの向こうで落ち着きの無い卯月を叱るように桑木が言った。「かしら、会長が撃たれましたッー」狼狽した卯月がスマホ越しに叫んだ。「なんやとー 」桑木の怒鳴り声がスマホから周囲に聞き取れる程の音量で聞こえた。同時に救急車のサイレンの音が遠くから聞こ徐々に此方に向かい大きくなってきた。「俺は後でええから、はっ!早く、あの人を」徳重が苦しそうな唸り声を上げながら、卯月に訴えた。徳重が指を指した、その先にはサラリーマン風のスーツ姿の男性が倒れていた。聖治の撃った弾は徳重会長の脇腹を掠め偶然その場に居合わせた、その、男性に命中していた。「どないしたんや!救急車はまだかい」卯月のスマホの向こうで桑木が叫んだ。「頭、会長が流れ弾を受けた堅気さんの方が、救急車は先やと言われてます」卯月が訴えた。「アホンダラッ!、お前は、何年会長に仕えとんねん。解らんかッ!そう言う、お人や、せやから、俺は、惚れたんや!、会長の言う通りに、アンジョウせんかい!」桑木が卯月を怒鳴りつけた。「ワッ!解りました。そうします」卯月が返事を返した。
至誠会本部の執務室で卯月からの電話を 終えた桑木は、放心したように立ち尽くした。「会長が撃たれたっ!」その事実だけが桑木の頭の中を駆けめぐり支配し、他のことは何も考えられなかった。「頭ッ、かしらー」桑木を呼ぶ声が聞こえた。声に驚いたように桑木が振り向いた。「どないしたんです!ボーッとして」声の主は、桑木組若頭の毛利だった。「直ぐに、幹部会を招集せえ!」それには答えずに、桑木は毛利に命じた。「ちょっと、今すぐ!ですか」状況が理解出来ない毛利が不服そうに答えた。「何、しとんねん、早よせえ!会長が撃たれたんや」桑木が毛利に言った。「いっ!、今すぐに」桑気の言葉に狼狽し、毛利が部屋を出て行った「儂の会長を撃つとはのう、やってくれたわ、どないしたろうかいのう」その言葉を口にした瞬間に桑木は人であることを捨てた。
至誠会本部の執務室で卯月からの電話を 終えた桑木は、放心したように立ち尽くした。「会長が撃たれたっ!」その事実だけが桑木の頭の中を駆けめぐり支配し、他のことは何も考えられなかった。「頭ッ、かしらー」桑木を呼ぶ声が聞こえた。声に驚いたように桑木が振り向いた。「どないしたんです!ボーッとして」声の主は、桑木組若頭の毛利だった。「直ぐに、幹部会を招集せえ!」それには答えずに、桑木は毛利に命じた。「ちょっと、今すぐ!ですか」状況が理解出来ない毛利が不服そうに答えた。「何、しとんねん、早よせえ!会長が撃たれたんや」桑木が毛利に言った。「いっ!、今すぐに」桑気の言葉に狼狽し、毛利が部屋を出て行った「儂の会長を撃つとはのう、やってくれたわ、どないしたろうかいのう」その言葉を口にした瞬間に桑木は人であることを捨てた。