第29話
文字数 826文字
その日、大阪政道会二代目会長の溝口斉加と若頭補佐の高木海斗は浪速区の早田組本部で開かれた緊急の幹部会に招集されていた。しかし、そこは不穏で陰湿な空気が立ち込めていた。若頭の原田が惨殺され、更にこの日至誠会から一枚のブルーレイディスクが本部に届けられた。そこに、映っていたのは、大阪政道会幹部『島内孝』が殺害されるまでのライブ映像だった。島内の手足は縛られ口と目には粘着テープが貼られて顔面は殴られ原型をとどめないほどに腫れ上がっており、拷問された様子がありありと浮かんでいた。拷問をしている人間にはボカシがかけらていたが、その男の背中の彫り物はボカシを通してもボンヤリと確認できた。「おい!これ、この男や!栄二ちゃうんんかい?山桜の栄二!や、」誰からともなく声が上がり、場が凍り付いた。「大阪政道会および早田組の皆さん、こんばんわ、儂!、今日、このあんちゃんに殺されるところじゃったんよ。ええ度胸しとるで、たった一人で至誠会にカチコミ掛けるとはのう」映像の向こう側から笑いを含んだ楽しそうな声が聞こえて来る。言いながら男は島内の目に貼られた粘着テープを勢いよく剥がすと眩しそうに目を覆った島内の横顔に拳を勢いよく叩きつけると倒れ込んだ島内の顔面を靴で踏みにじり更に蹴りを入れた。「おら!、あんちゃん、死ねや、もっと!、叫べや、ええ声聞かせてくれや」恍惚の表情で島内を嬲り続けた。映像はその後も約一時間余り島内に対する暴行シーンが繰り返し映し出され、床に転がされた島内は、最早、生きているのか死んでいるのかも確認が出来ないほどに動きを止めていた。「ほんなら、お時間も押してきましたので、この辺でお開きにしたいと思います」声が聞こえ画面に猟銃がうつしだされると、大口径のスラグ弾を取り出し銃に込めるまでが映った所で映像が途切れて画面が暗くなった。暫くその状態が続いた後、空気を切り裂くように銃声が轟きオレンジ色の閃光が走った。そして同時に映像は終わった。