鍵2

文字数 415文字

アタシに開けられないドアなんかありゃしない
鍵をなくしたドアだって
時を経て固く閉ざされてきたドアだって
アタシにかかればあっという間
開かずの間なんてそんなもの
無力な鍵が創り出した幻なのさ

アタシは鍵、魔法の鍵
昔の偉大な魔法使いが、ちょちょいと作った
何でもかんでも開けちまう鍵

ある日、ある時、ある国の、王様困って魔法使いを呼んだ
「こっそり、こっそり秘密に開けよ。さすれば褒美は山ほどに」
「お安い御用」と魔法使い
アタシを使って王様の、大事な宝の小部屋を開けたのさ
そしたらどうさ、部屋からあふれ出たのは王様の欲
それはあっという間に国中に広がり、とうとう全てが欲の塊
その時ぽつりと思ったよ
世の中、世界にゃ開けちゃならないものの一つや二つ
無けりゃ上手くは回らないもんだって

アタシは鍵、魔法の鍵
何でもかんでも開けちまうけど
何でもかんでも開けやしないのさ
開けちゃならないものはそのまま
鍵をかけて秘密のままで
創り出された幻は、幻のまま夢のままで

 END

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