第124話 われら、何をなすべきか

文字数 782文字

「はいよ、ダブルデッカーお待ち!」
 メシヤは特製の二重サンドをこしらえた。

「これはでっカー!」
 ティータイムに食べるにはボリュームがありすぎた。

 観劇から帰った裁紅谷姉妹は、おめかししていたドーリー・バードンハットを脇に置いている。

 メシヤの分もあるにはあるが、食べる前にそそくさと調理器具の片付けを始めた。

「料理はするけれど後片付けはしないという人も多い中、メシヤさまはその辺もおろそかにしていませんわ」
 レマが手に取ったサンドを一度置いてから、二度うなずいた。

「あんまり深く考えていないけど、なんか気になってさ」
 メシヤはある程度まで考えを進めると、後は直感に任せるタイプだ。

「お前、このあいだ言ってたじゃないか」
 イエスが大口で飲み込んだあと、話を振った。

「なんだっけ?」
「店の後片付けを始めるのが、ちょうど野球中継の終盤で盛り上がっている頃だよな。ピンチの時にそのまま見続ける事も出来るが、片付けて一段落してからのほうが、落ち着いて見られるってな」
 野球の話だけに、イエスはよく憶えている。

「ああ。言ってたね、そんな話」
 自分の気がかりなことをそのままにして、良いことが起こる確率は低い。気休めかもしれないが、たとえ負けだったとしても、やるべきことをやってからのほうが良い結果が生まれる、好転するのではないかとの確信がメシヤにはある。自分の精神状態と野球中継の結果など関係するはずは無いのだが、宇宙は人間の数だけ存在すると仮定するメシヤには、そのあたりのつながりがよく見えていた。

「こいつに教わるのはなんか悔しいけど、それは見習いたいわね」
 二重サンドの出来映えも、マリアの舌をうならせた。

「未解決のことはほおっておいても決して良くならないですからね。新しいことをどんどん始める前に、やめないといけないこと、改善しないといけない点を、見つめ直したいですわ」






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