第54話 地球はひとつ
文字数 1,323文字
メシヤたちの作成したナゴブロックが本物の建築物へと具象化するのに、さほど時間は掛からなかった。イエスの桑名城は首相官邸になるらしい。
北伊勢市に首相官邸? そう。鷹山の手腕により、畿央エリアへの首都移転法案が可決されたのだ。
マリアのロココ式豪邸は、ナゴブロックのミニチュアが北伊勢市民の目に留まり、パターンをいくらか変えて建築を決める施主が何人も付いた。
裁紅谷姉妹のエルサレム第三神殿は、宗教・紛争の都合上、エルサレムへ建立するのは非常に困難を極める。これらの諸問題を解決しなければ、神殿建立は実現しないだろう。
これはアーロン首相の案件なのだが、同盟国であるアメリカに相談を持ちかけたようである。ボウスハイトとアーロンは手を携 えた。アメリカとイスラエルは遠くて近い間柄である。全世界に1400万人近くいるユダヤ人のうち、500万人超のユダヤ人がアメリカにいるのだ。
ボウスハイトは、第三神殿建設に関して、妙案をアーロン首相に提示するだろう。候補地はアメリカ、そして、日本も含まれるかもしれない。
なぜなら、イスラエルは日本と奇 しき縁 がある。古代イスラエル人が東の楽園を目指し、日本に渡ったという伝承もあるくらいだ。それに、第三神殿の主は、もう裁紅谷姉妹のすぐ近くにいるのだから。
メシヤのワシリイ宇宙センター日本基地は、レオンの協力がないと進まない。主聖堂が宇宙旅行の出発点となるのだが、
「容れ物だけ作ってもらえれば」
と、多くは語らずじまいだった。メシヤのミニチュアを元に建設にかかり、レオンからの細かい内部の納まりは特に指示が無かった。
鷹山の「世界改造計画」の中には、世界の6大陸をハイパーループで結ぶという仰天の計画があった。メシヤに、
「ムー大陸は入らないんですか?」
と聞かれ、鷹山は苦笑いを浮かべていた。
政治的力学を抜きにすれば、ロシアとアメリカにまたがるベーリング海峡をつなげることや、日本と朝鮮半島を結ぶ日韓トンネルを作ることなどは、案外たやすいのだ。
問題はオーストラリア大陸へのアクセスだが、アフリカ大陸からはインド洋が、南アメリカ大陸からは太平洋が横たわり、大きく隔たっている。インドネシアを経由すれば、アジア大陸から到達することは出来るのだが、世界を環状に回りたいという思惑から、どうしてもオーストラリアへの東西ルートを作りたいのだ。
南北アメリカ大陸と、ヨーロッパ・アフリカ大陸のあいだにも大西洋がある。この辺の問題を鷹山は後回しにしていたが、メシヤはすでに考えていた。
「太平洋にはムー大陸、インド洋にはレムリア、大西洋にはアトランティスが浮上すれば、世界を環状に繋げれますね」
鷹山は唖然とした。
「面白いアイデアだが、しかし、どうすれば失われた大陸が浮上するんだい?」
「いま海面上昇が問題になっていますが、温暖化が緩和されれば、水位の上昇も抑えられる
はずです。逆に海面が下がれば、海の底に隠れていたモノも現れるでしょう。海底火山の
運動も活発になれば、大陸の浮上も夢物語ではありません。小笠原諸島の西之島の例もあ
りますし」
「ふふ、君らしいな」
両手を前に組み、左右の親指をくるくる回しながら鷹山は答えた。
北伊勢市に首相官邸? そう。鷹山の手腕により、畿央エリアへの首都移転法案が可決されたのだ。
マリアのロココ式豪邸は、ナゴブロックのミニチュアが北伊勢市民の目に留まり、パターンをいくらか変えて建築を決める施主が何人も付いた。
裁紅谷姉妹のエルサレム第三神殿は、宗教・紛争の都合上、エルサレムへ建立するのは非常に困難を極める。これらの諸問題を解決しなければ、神殿建立は実現しないだろう。
これはアーロン首相の案件なのだが、同盟国であるアメリカに相談を持ちかけたようである。ボウスハイトとアーロンは手を
ボウスハイトは、第三神殿建設に関して、妙案をアーロン首相に提示するだろう。候補地はアメリカ、そして、日本も含まれるかもしれない。
なぜなら、イスラエルは日本と
メシヤのワシリイ宇宙センター日本基地は、レオンの協力がないと進まない。主聖堂が宇宙旅行の出発点となるのだが、
「容れ物だけ作ってもらえれば」
と、多くは語らずじまいだった。メシヤのミニチュアを元に建設にかかり、レオンからの細かい内部の納まりは特に指示が無かった。
鷹山の「世界改造計画」の中には、世界の6大陸をハイパーループで結ぶという仰天の計画があった。メシヤに、
「ムー大陸は入らないんですか?」
と聞かれ、鷹山は苦笑いを浮かべていた。
政治的力学を抜きにすれば、ロシアとアメリカにまたがるベーリング海峡をつなげることや、日本と朝鮮半島を結ぶ日韓トンネルを作ることなどは、案外たやすいのだ。
問題はオーストラリア大陸へのアクセスだが、アフリカ大陸からはインド洋が、南アメリカ大陸からは太平洋が横たわり、大きく隔たっている。インドネシアを経由すれば、アジア大陸から到達することは出来るのだが、世界を環状に回りたいという思惑から、どうしてもオーストラリアへの東西ルートを作りたいのだ。
南北アメリカ大陸と、ヨーロッパ・アフリカ大陸のあいだにも大西洋がある。この辺の問題を鷹山は後回しにしていたが、メシヤはすでに考えていた。
「太平洋にはムー大陸、インド洋にはレムリア、大西洋にはアトランティスが浮上すれば、世界を環状に繋げれますね」
鷹山は唖然とした。
「面白いアイデアだが、しかし、どうすれば失われた大陸が浮上するんだい?」
「いま海面上昇が問題になっていますが、温暖化が緩和されれば、水位の上昇も抑えられる
はずです。逆に海面が下がれば、海の底に隠れていたモノも現れるでしょう。海底火山の
運動も活発になれば、大陸の浮上も夢物語ではありません。小笠原諸島の西之島の例もあ
りますし」
「ふふ、君らしいな」
両手を前に組み、左右の親指をくるくる回しながら鷹山は答えた。