第173話 Get a grip

文字数 686文字

「おわっ!」
 メシヤが勢いよくつんのめった。マリネラ国王のクックロビン音頭が聞こえる。

「滑るのはギャグだけにしときなさいよ」
 冬期は道路の凍結に要注意だ。

「おいおい、メシヤ! こいつはいけねえぜ!」
 イエスがメシヤの靴裏を確認すると、見事にツルツルだった。

「あんた、ヘリクツばっかり言ってるからよ」
 マリアにも防滑靴が必要なようだ。

「いつの間にこんなに減ってたんだろう? 買い換えたのまだちょっと前だったと思うけど」
 メシヤは足の踏み込みが強いので、減りが早い。

「工事現場での転倒は死に直結する。こんな靴は論外だ」
 節約だと言って命を落としては、元も子もない。

「そう言えばエリちゃんってオープンフィンガーの手袋してるわね」
 あれも滑り止め、怪我防止のためだが、細かい指先の作業もしたいため、エリはオープンフィンガーにしている。

「ああ、冬場は手袋選びも重要だね。あたたかさだけなら毛糸や毛皮のでいいけど、作業してたらすぐ破れるし」
 メシヤは厚めのワーキンググローブを愛用している。

「手の感覚が鈍るからって素手でやるベテランは多いがな」
 手を見れば、職業が分かるという。

「エリは握力もすごそうだなあ」
 鉄棒で大車輪など朝飯前のエリ。ところが、メシヤ、イエス、そしてマリアは、そろいもそろって握力が人並み外れている。

「ほれ、これでも履いてみろ」
 用意のいいイエス。メシヤ好みのカラーリングの防滑靴を手渡した。

「おおっ、これこれ! 大地をしっかり掴んでる感じがする!」
 何をするにつけても、まずは足場を固めてから。




 レオンが書斎で正二十面体のサイコロを振っている。
《すべらんなあ》






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