第27話 クッキング・マナ

文字数 967文字

「もしや、これは・・・?」
 兄妹で目を合わせ、うなずく二人。良質な牛ヒレ肉は冷蔵庫へとりあえず仕舞いに行った。

「北京ダック!」「ラムチョップのロースト! 」

「「・・・」」

「何も起こらないね」
「いや、まだだ」

「海鮮天丼!」「黒トリュフのリゾット!」
「盛岡冷麺!」「アワビのグリーンパスタ!」
「あん肝の照り焼き!」「フォアグラのアスピック!」

「駄目だな・・・」
「駄目ね・・・」

「さっきと何が違うんだろうな」
「う~ん、分かんないね」

「しゃあないな。マナ、仕込みを始めよう。ジャガイモはまだあったよな」
「残り少ないかも」
「なんだなんだ、ジャガイモも品切れ・・・うおっ!」

 聖杯にあふれんばかりのジャガイモがあらわれた。
「わー、助かるー!」

「分かったぞ!」
 メシヤが声を上げた。

「お前の名前に反応するんだよ!」
「私の?」

「ああ、マナの壺の伝説は本当だったんだ。さしずめこいつは、マナの聖杯だな」
「すごーい! お店も大助かりだね!」

 このあと、藤原兄妹は調子に乗って食材を次々に《オーダー》した。食べ物に困らないというのはありがたい。世界中の難民も救えるだろう。そして30分後――。


「もうこれくらいでいいかな」
「うん、冷蔵庫もパントリーも食べものでいっぱいだよ!」
「良かった良かった」
 聖杯の使い方も分かり、満足気なメシヤ。だが、(まな)(いもうと)の異変に気づいた。

「おい、マナ」
「ん? なに」

「お前、背が縮んでないか?」
 マナの身長は160cm以上あったはずだが、いまはとてもそんなにあるようには見えない。140cmぐらいだろうか。
「えー!」

「もしかして、もしかする?」
「そんなあ」

「お前の身長が代償ってわけか」
「でも、待てよ。体重と引き換えだったら、ダイエットには困らないな」
「それは女の子全員の夢ね!」

「成長の早い小学生モデルみたいな体型だったお前も、年相応になったな」
「これじゃ4年生に見えるよ! 女子高生に間違われることもあったのに」

「まあ、多分戻る方法はあると思うぜ。身長だけじゃなくて顔も若返ってるし、悪いことばかりじゃないぞ」
「若返るのはいいけど、小学生で身長止まるなんて悲しすぎる」

「タダ飯はありえないってことだな」
「それはそうだね! 食い逃げ許すまじ!」

 三種の神器のうち、2つを手に入れたメシヤ。残すは石板。
 はてさて、どこにあるのやら。



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