第101話 クッタ=ジュコーフスキーの定理
文字数 809文字
「ふむふむ」
「何読んでるノ?」
メシヤがエリに背表紙を見せる。
「あ、料理の本だネ!」
「そのクッタじゃないよ!」
ずっこけるメシヤ。
「建設現場でマグヌス効果を使った安全具が作れないかなあと思ってさ。ロケットベルトだと大掛かりすぎるし」
「高層ビルや高架鉄塔なんかも見ててハラハラするよネ」
エリはメシヤの意図を飲み込めたようだ。
「ほお、マグヌス効果か」
イエスが教室に入ってきた。
「イエスんとこでも欲しくなるんじゃ無いかな、"マグヌスベルト"がね」
メシヤは含みを持たせた。
「それももちろん関心事に違いないが、俺は変化球の理論でマグヌス効果をよく目にするな」
イエスは早朝練習を終えたところだった。
「変化球の使い手といえばメシヤだネ!」
メシヤがイエスの練習相手になっているのは、エリもよく知っている。
「変化球の指の握りはいくつもあって混乱してしまうが、マグヌスの理論を踏まえていれば、なんとなく感覚はつかめるはずだ」
「回転しているボールが、運動方向に対して垂直の揚力を受けるってことだよね。横回転だろうと縦回転だろうと」
メシヤもこの辺の理論には詳しい。
「右回転なら左側の流速が小さくなって圧力が大きくなル。反対に右側の流速は大きくなって圧力は小さくなるかラ、大きい圧から小さい圧の方へと押す力が生まれル」
天然のようでいて、エリの物理の成績はしっかりAである。
「左打者対右投手のシュートボールは分かりやすいな。サイドスピンだと特に」
エリの解説にイエスが付け足しする。
「そうそう。あとさ、カーブは斜めの回転軸だけど、順回転で上方向に押し上げられたボールが反作用で落ちてくるイメージだね」
シーズンまっさかり。野球談義に花が咲く。
「これが頭に入っていれば、投手のクセを見つける手がかりになるかもしれないね」
「分かったようなことを。そんなに甘くは無いぞ」
口ぶりとは反対に、イエスはどこか嬉しげだった。
「何読んでるノ?」
メシヤがエリに背表紙を見せる。
「あ、料理の本だネ!」
「そのクッタじゃないよ!」
ずっこけるメシヤ。
「建設現場でマグヌス効果を使った安全具が作れないかなあと思ってさ。ロケットベルトだと大掛かりすぎるし」
「高層ビルや高架鉄塔なんかも見ててハラハラするよネ」
エリはメシヤの意図を飲み込めたようだ。
「ほお、マグヌス効果か」
イエスが教室に入ってきた。
「イエスんとこでも欲しくなるんじゃ無いかな、"マグヌスベルト"がね」
メシヤは含みを持たせた。
「それももちろん関心事に違いないが、俺は変化球の理論でマグヌス効果をよく目にするな」
イエスは早朝練習を終えたところだった。
「変化球の使い手といえばメシヤだネ!」
メシヤがイエスの練習相手になっているのは、エリもよく知っている。
「変化球の指の握りはいくつもあって混乱してしまうが、マグヌスの理論を踏まえていれば、なんとなく感覚はつかめるはずだ」
「回転しているボールが、運動方向に対して垂直の揚力を受けるってことだよね。横回転だろうと縦回転だろうと」
メシヤもこの辺の理論には詳しい。
「右回転なら左側の流速が小さくなって圧力が大きくなル。反対に右側の流速は大きくなって圧力は小さくなるかラ、大きい圧から小さい圧の方へと押す力が生まれル」
天然のようでいて、エリの物理の成績はしっかりAである。
「左打者対右投手のシュートボールは分かりやすいな。サイドスピンだと特に」
エリの解説にイエスが付け足しする。
「そうそう。あとさ、カーブは斜めの回転軸だけど、順回転で上方向に押し上げられたボールが反作用で落ちてくるイメージだね」
シーズンまっさかり。野球談義に花が咲く。
「これが頭に入っていれば、投手のクセを見つける手がかりになるかもしれないね」
「分かったようなことを。そんなに甘くは無いぞ」
口ぶりとは反対に、イエスはどこか嬉しげだった。