第61話 地球考古学

文字数 645文字

――この少年。その身に背負うには、あまりにも過酷で残酷な運命――
――倒れても、倒れても、立ち上がる――

(狂おしいほど愛おしい)

「・・・オンくん!  レオンくん!」
 メシヤの呼びかけに我に返るレオン。
「どうしたの、レオンくん?」
「失礼しました。少々昔のことを思い出していました」
「そうなの? すごく難しそうな顔をしてたよ」
「お話が途中でしたね」
「うん」

「メシヤくんの働きかけにより、この世界はかつて人類が謳歌した黄金時代を取り戻そうとしています。まずは、日本を足がかりに。そして、東アジア、中近東、欧州、南北アメリカ、アフリカ、東南アジア、オセアニア、極地点とその版図を広げていくでしょう」
「人類がそんなにもひとつになった時代なんてあるの?」
「確かに、いまだかつて全世界を統一した人物は存在しません。ですが、その有効範囲は、世界最古の文明とされる、紀元前3500年のメソポタミア文明から、現代までのあいだにおいてです」
「それよりもずっとずっと前には、世界が統一されていた時代があったんだね」
「おっしゃる通りです。それが以前にお話しした、古代アトランティス文明の時代なので 
す」
 レオンの話から、推定1万2000年前のアトランティス時代を想像するメシヤ。

「ですが」
 ひと呼吸の間を置き、続けるレオン。

「あなたは、これくらいでは満足しないのでしょう?」
 わずかに顔がにやけるメシヤ。マリアが言うところの、何か企んでいる時の表情だ。
 それにつられてレオンがふっと一笑すると、すぐに表情を引き締めた。



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