第139話 俺はまだまだチキンスープでいいや

文字数 841文字

 メシヤがお玉でスープをすすっている。
「こんなもんかな」
 中華料理には付きもののチキンスープ、玉子スープ、フカヒレスープが並んでいる。

「きょうはスープ特集ね」
 普段メシヤの言葉遣いにツッコミを入れるマリアの日本語も、いささかおかしい。

「蟹の卵入りフカヒレスープなんてよく用意できたな。高級食材だぞ」
 メシヤにはマナの聖杯がある。代償は支払わなければならないが・・・。

「残念ながらフカヒレは食べられませんが、この玉子スープもメインの料理をさしおいてしまうほどのお味ですわ!」
 レマもレポート慣れしてきた。

「ワタシはまだまだチキンスープがいいカナ。チャーハンとよく合うヨ」
 誰が始めたのか、チャーハンには必ずチキンスープが付いてくる。

「中華の次はこっちを飲んでみて」
 わかめと豆腐の味噌汁、しじみ汁、はまぐりの吸い物、豚汁がテーブル狭しと並んだ。

「あ~、これよこれこれ。日本人ならお味噌よね~」
 外見に反して、おばあちゃん好みの舌である。

「俺は豚汁だな。ここいらの人間には悪いが、白味噌派なんだよ」
 マリアが意外そうに、「えー!」と反意を示した。

 マナははまぐりのエキスをすすって、ホッとした表情を浮かべている。メシヤはオルニチンの蘊蓄を語りながら、しじみの身を剥がして食べ始めた。
「ちょっと、ちょっと! アンタ、しじみの身まで食べるわけ?」
 メシヤがきょとんとしている。
「そうだけど?」
「みっともないじゃない! そんな手で剥がして汚らしいわよ!」

「そうは言うけど、しじみの具は女性に必須の鉄分も豊富なんだ。疲れを吹き飛ばすタウリンも含まれてるし、美容効果もある。食べなきゃ損だよ」
 それを聞いて怯むマリア。メシヤの言うように、しじみはスーパーフードと呼ばれているくらいだ。

「わたくし達のいただけるのは、わかめとお豆腐のお味噌汁だけですが、頭がスッキリ調う感じがしますわ!」
「うんうン! メシヤ、ワタシのために毎日お味噌汁を作ってくれないかナ?」
 マリアがグラスの水を盛大に噴き出した。






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