第14話 パニック・ピクニック

文字数 610文字

「メシヤーー!!」
 マリアの金切り声が聞こえてきた。

「大変よ! バンガローが火事で燃えてる! 中に子供が何人か取り残されてるみたい!」
「分かった! いま行く!」
 メシヤはシャツを着る動作のまま、駆け出した。


 IHクッキングヒーターが普及したこともあって、いまの子どもたちは火を見ることが珍しくなっている。キャンプ学習に来て、ライター・マッチという刺激的な道具を与えられ、それが発火点になったと思われる。

 大人たちが慌てふためき、子供たちが泣き叫ぶ中、無情にも火の手はどんどん勢いを増していく。
「駄目だ! これ以上はとても近寄れん!」
 イエスが無念の表情を浮かべ、絶叫する。

「僕に考えがある!」
 タレ目・吊り眉のメシヤの眉毛が、さらに吊り上がった。

「うまくいってくれよ」
 メシヤは左手で金の柄を抜くと、バンガローの燃え盛る炎に向けて気を集中させた。すると、あれだけ猛烈な勢いで広まっていた火の手が、メシヤの金の柄に鳳凰のように姿を変えてとどまった。

「こいつの名前は鳳雛剣(ほうすうけん)だ!」
 水龍(すいりゅう)(つるぎ)臥龍剣(がりゅうけん)火鳥(ひのとり)(つるぎ)鳳雛剣(ほうすうけん)。メシヤも諸葛亮(しょかつりょう)龐統(ほうとう)よろしく、まだ世間に知られていない有望な傑物といったところか。

 子どもたちは何事が起きたのかと周囲を見渡している。

 メシヤは五メートルにもなろうかという火鳥の剣を、右手に持ち替えた。たちまち炎は柄の内部に吸い込まれ、消失した。柄には「טצץ」の文字が浮かび上がった。

「999ヒッツィだな」

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み