第131話 秋タコは、エリに喰わすな

文字数 1,049文字

「メシヤ、タコパでもどう?」
 見かけはパーリーピーポーなマリアが提案する。

「うん、いいねえ」
 メシヤはたこ焼きが好物である。

「タコは駄目なんだヨ!」
 ユダヤ人である裁紅谷姉妹は、カシュルートにより厳しい食事制限がある。

「屋台に売っているたこ焼きはとても美味しそうなので食べてはみたいのですが・・・」
 レマも残念そうだ。

「それなら具材をいくつも用意すればいいだろう」
 イエスもメシヤとよくたこ焼きをつつく。

「イエス、ありがとウ!」
 エリには誠意大将軍に見えた。

「タコ・イカ・エビ・牛・鶏・ホタテ・鮭・チーズあたりかな」
 メシヤがつらつらと述べた。

「その半分も食べれないけド、OKじゃないかナ! 鮭はロックスでネ!」
 エリも満足げだ。

「タレもこだわりたいわね。普通のソースも良いけど、醤油とか塩とかさ」
 たこ焼き店でも選べるタレの種類が増えている。

「もちろん! めんたいこにたまごがけ、おろしポン酢にネギも揃えておくよ!」
 これだけ揃えても低価格でできるので、コスパが良い。



 めし屋フジワラには、業務用のたこ焼き器がある。家庭用の赤くて丸い焼き器では、彼らの胃袋を満たせないだろう。

「こんなのあったんダ~」
 普段は店内に置いていない器具を、メシヤがセッティングしている。

「夏祭りの時とかにちょっと出したりするんだけど、今年は自粛ムードだったからね」
 メシヤの仕込みはテキパキだ。

「大阪に行くと必ずたこ焼きを食べるけど、まだまだこっちのたこ焼きは負けてるわよね」
 マリアの言うことは間違いない。見た目からして違う。

「でも今回はメシヤさまのお料理ですから」
 レマも不慣れだがメシヤに影響され料理を覚え始めている。

「おいおい、お前もやるんだぞ」
 イエスに釘を刺されるレマ。そうでしたと舌を出す。

「メシヤ、生地はできたヨ!」
 エリは手が早い。
「サンキュウ、エリ。よおしそれじゃレマ行ってみよう!」

 レマが生地を流し込む。マリアが具を入れる。イエスがたこ焼きをひっくり返す。仕上げのタレとトッピングはメシヤがほどこした。

「「完成~!!」」

 外はふわふわ、中はとろとろ、通称ふわとろである。

「美味しイ!」
 肉・鶏・鮭入りを堪能する裁紅谷姉妹。

「これは大阪を超えたかも!」
 大絶賛のマリア。

「通常メニューにして欲しいくらいだな」
 イエスは次々と楊枝を口に運ぶ。

「五人で力を合わせたのが大きいんじゃないかな。みんなでワイワイ言いながら食べたら、格別だよ」
 エリがたこ焼きで頬を膨らませながら、ハフハフと笑声をもらした。






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