第117話 Clothes your eyes

文字数 949文字

「メシヤ、あんたいい靴履いてるじゃない」
 マリアが足下を見た。

「ほんとですわ。このようなデザインはなかなか売っていないと思います」
 おしゃれ上級者のレマも興味津々だ。

「これ? ナイキのカスタムシューズだよ。ホントは僕の足に一番合うプーマで作りたいんだけど、プーマはいまやってないんだよね」
 プーマは、アディダスの創業者アドルフ・ダスラーの兄によって設立された。メシヤは、サッカーのスパイクもプーマである。

「俺もミズノでやってみるかな」
 イエスも道具にはうるさい。

「ワタシも作りたいナ~」
 裁紅谷姉妹は、イスラエルの靴メーカーNAOTを愛用している。

「ゲームのアバター作成なんかでもさ、『作れるキャラは100億通り!』とか宣伝してるけど、こういうのをファッションでもやるといいよね。いまは靴が先んじてやりだしたから良いことだと思う」

「在庫を抱えるコトを思えば、受注生産にして個性的な商品を買えるようにするのが合理的よね」
 マリアは人とファッションがかぶることを嫌う。

「売れ残った商品がその後どうなっていくのかを考えるト、可哀想な気もするネ」
 モノも慈しむエリ。

「車が人と同じなのを嫌う方はすごく多いと思いますが、メーカーがカスタムパーツを各種取りそろえるのはそんなに難しくないのではないでしょうか」
 駐車場で停めたいスペースの横に自分と同じ車種が停まっていると、躊躇したくなるハズだ。

「面目ない。本来なら住宅が真っ先にそれをやらなくてはいけないんだが、設計士も営業も勉強不足で面倒なことはやりたがらないんだ。ある程度組み合わせは選べるが、それでもバリエーションはまだまだ少ない」
 イエスはこう言うが、十九川工務店は施主の要望をことこまかに叶えてくれる、いまどき珍しい工務店だ。

「なに言ってんのさイエス。鷹山さんの主催でナゴブロックのミニチュアをみんなで作ったけど、それを全部実際に建築したのも十九川工務店じゃん」
 北伊勢首相官邸、ワシリイ宇宙センターを建造したのも、イエスのところの熟練工たちである。

 街にアートのような建築物があると、人々の動線が変わる。それらを求めて多くの人が集まる。身につけている服にも、乗る車にも、関心が行くようになる。

 首都移転以後、十九川工務店は、さらに名声を高らしめた。





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