第156話 Surprise Supplies

文字数 801文字

「あんた、けっこう早めに補充するほうよね」
 ガソリンが半分も減らないうちに給油しようとするメシヤに、マリアが指摘した。

「だって、不安にならない?」
 もし給油せずに長距離を走ることになった場合、メシヤは気が気じゃ無い。

「補給と言えば、他にもたくさんありますよね。無くなってから買えばいいという方もいますが、わたしも早めに買うほうです」
 トイレットペーパーや洗剤、お米に掃除用品にと、残弾を常に気にしていないと、生活リズムが狂ってしまう。

「補給自体は面倒だが、残り少なくなっていた物資が届いて倉庫が賑やかになると、なんとも言えぬ充足感があるな」
 建設業界では何らかの原因で、資材の納期が大幅に遅れるということがよく起こる。

「それ分かル~ッ! 食べるものが無くなっていた冷蔵庫が満杯になった時の幸福感ハ、何ものにも代えがたいネ!」
 飽食の時代と言われるが、飢えほど辛いモノは無い。

「『心も満タンに』って上手いこと言ったよね」
 喪黒福造はココロのスキマを全然埋めていない気がする。

「うんうん。スーパーの棚が商品でいっぱいの光景って満たされるわよね」
 災害時に棚がスキスキになっているニュース映像は、その真逆だ。

「これ伝わるかナ。プリンターのトナーを補給するのが好きなんダ。溜まった使用済みトナー達を家電量販店にまとめてBOXに捨てる瞬間もプチハッピーだヨ!」
 トナーの減り方は各色一様では無いので、単色買いする必要が出て来る。メシヤも印刷量が多いので、エリと気が合った。

「メシヤは店を切り盛りしてるから、食材の調達は頭を悩ませるんじゃないか?」
「生鮮食品だからね。仕入れ過ぎちゃってパーになったら、僕も包丁を置く日が来るかも知れない」
 昭和の大スターのような覚悟である。

「メシヤさまは、なぜ補給を重視するんですか?」
「そうだなあ。プロミネンス禍という破壊の中でただひとつ、物を作っていく事ができるから、かもね」




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