第159話 幻想な舷窓

文字数 702文字

「時計をしない人が増えたわね」
 時間を知るだけならスマホで事足りる、ということらしい。ただそうは言っても、時計を付けている人間は、時間を尋ねられることが多くなる。

「ファッション的に、まだまだ需要があると思うのですが」
 レマの時計は仕事柄ハイテクである。

「アップルウォッチもあるが、俺が欲しいのはああいうのじゃないんだよな」
 イエスは父親から譲ってもらったスイス時計を身につけている。

「デジタルとアナログならどっちなのかナ?」
 メシヤの方を向いて尋ねるエリ。

「いろんな人が言ってるけど、数字だけで時間を知るよりも、針の位置関係で見た方が時間のペース配分をしやすいんだよね」
 メシヤは針の位置関係から、何分後に自分が目的地に着いているかの位置関係もイメージしやすいようだ。それと、メシヤはデジタル時計で表示される数字にゲンを担ぐほうで、並びが良ければいいが、不吉な数字を見たときに凹むことがある。メシヤは時計を頻繁に見るので、こうしたことを避けたい気持ちがある。

「なにか欲しい時計はあるの?」
 メカニカルなものが好きなのは、メシヤもマリアも共通している。

「とても買えないんだけど、HUBLOT《ウブロ》のビッグバンワンクリックスチールホワイトダイヤモンドがキラキラしてて惹かれるね」
 メシヤが高校生には不相応な高級時計を挙げた。

「あんたバカじゃないの! こんなの買えるわけないじゃない!」
 マリアが検索して表示されたウブロを見て、悲鳴をあげた。

 裁紅谷姉妹が固まっている。

(お姉様、見ました?)
(うン、白馬が身に付けてる時計だネ)

 白馬の時計も、無論カスタマイズされている。密偵には欠かせないアイテムである。






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