第27話 二十3 今日中に決着 

文字数 739文字

「だいぶ経ってから、むっくりと帝は起きさせ給えるに、なおのこと、勝ち負けなくして途中で止めてしまうのは、まことに不都合である、
とて、下の十巻を、明日になったならば、異ったものを女御は見たまいてくるのではないかもしれない、とて、『今日の内に、決着を定めよう』と、大殿油という燈火をおもちになり、夜がふけるまで、読ませたまひける。されど、女御がついに負けたということは聞いておりません。
『帝が、部屋に渡らせたまいて、かかることがあるのです』など、父上殿に申したてまつれたりければ、大臣の父はいみじう心配されお騒ぎになり、御誦経など、あまたのことを手配されました。宮中に向いて、上手くいきますようにと念じ暮らしたまいける。風流な遊びにも、色々心を尽くす姿に、心うたれことであります」など、中宮が語られ賜うと、帝も、これをお聞きになり
(帝)「我は、三巻四巻をだに、よう見続けることが出来ず果ててしまうだろう」と、おおせられました。「昔は、身分の賤しい者なども皆をか趣のあるたしなみを持っていたのでしょうに。この頃は、そういうような話は聞こえません」など、御前に居た人々、帝の女房で同席を許された人も参加して、皆口々言い誉めそやすなどしている様子は、まことに、心が解き放されているようで、素晴らしいひと時であったと思います。
※村上天皇が皇后の若い頃覚えたという二十巻もの歌のことを、間違いなく覚えているか、確認する遊びをされた。女御の父が娘の教養として方向づけさせた話など。中宮定子がそのエピソードを女房たちに話して聞かせるということだが、よくも膨大な量を歌を記憶されていた皇后の賢さに驚くばかり。現代の百人一首のカルタ取り大会におけるに、似たようなものだろうか。
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