第133話 ハ二 中宮のお呼び出し
文字数 505文字
さて、その左衛門の陣などへ行った後、宮中を退出し暫くのあいだ里のいたのですが、(宮)「早く、私のところへお出でなさい」などの宮の仰せがあり、女房のその端書に(宮)「左衛門の陣へ行った時の貴方の後ろ姿を、いつも思い出される。どんなんだったのでしょうか、平気で古びた格好をしていたようであったと思う。たいそう素晴らしい格好だと思っていたようだけれど」などの書かれていたのでそのお返しとして、宮中参内のお呼びをお礼さしあげ、女房に対して私は(清少)「どうして、素晴らしいと思わないことがありましょうか。中宮におかれましても『なかなかをとめ』とご覧になっていたのではないかと、私は思っています」と書いたところが、直ちに返事が来て、(宮)「たいそう貴方が思い入れをしている仲忠の面目丸つぶれのようなことを、どうして啓上したのでしょうか。疾く今宵のうちに、すべてをなげうちて参上してください。さもないと、宮があなたを御憎しみなるでしょう」と、御つきの女房から仰せがあったので、(清少)「よろしくない御憎しみでも、大事であります。まして『いみじう憎しみ給う』とあるお言葉は命も身もすておきてでも」と返事して、宮中へ参上した。