第51話 三二3 中納言、使いを車に

文字数 614文字

□まだ講師も高座にのぼらないうちに、懸盤を持ってきて、なにかなさっているいるようだ。義懐の中納言の御様子が、常よりも優りてお見えになる。限りないほどである。色合いの花々も匂うようにあざやかである、いづれともいえない中で、かたびらを、ほうんとにすべてただ直衣一つを着たようになさり、常に車どもの方を見ながら、なにか言いかけたまふ、素晴らしいと見ない人はいないだろう。後から来た車が、止める所もないほどなので、池に引き寄せて車を止め立たのを見られて、実方の君に、(義懐)「伝言をうまく言える使いの者を、一人」と召せば、いかなる人にか分からないが、選ばれて率いてこられた。「いかが言いやろうか」と、近う居おられる人に、のたまいあわせて、指示された言葉は聞こえなかった。たいそう用意しながら、車のもとへ歩み寄って行くのを、それが面白いと笑いたまう。使いは後の方に寄って伝言を言ったようだ。長い間、立っているので、(人々)「歌など詠むのであろうか。兵衛の佐、返事を思い考えよ」などと笑いて、いつしか返事を聞こうと、その場に居る限りの者、年配の上達部まで皆、そちらの方の様子を見やりたまえり。聴衆の人まで見ているのも面白い。
※立派な服装と態度をした中納言が、満車のなか池の近くに止めた車に主に、使いをやった。短歌でもやって、その返歌を使いがまっている光景。誰もが、なんだろうと注目している。光景が目に浮かび、結果どうなるのか、楽しみですね。
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