第1話 一 春・夏・秋・冬 枕草子一

文字数 717文字

□春は、曙。ようやく白くなりゆき、山際少し明かるくなりて、紫だちたる雲も細くたなびいている。夏は、夜。月の頃は更なり、闇もなお、蛍が多く飛び交っている。また、ただ一つ二つなど、仄かに光って行くのも、興趣がある。雨が降るのも趣ある。秋は、夕暮れ。夕日がさして、山の端がとても近くなるので、烏が、寝床へ行くのだろう、三つ四つ二つなど、飛び急ぐ様は、しみじみとした趣がある。まして、雁などが連なって飛ぶのが、とても小さく見えるのは、非常に趣がある。日が入り果て、風の音、虫の音など、はた、言うべき言葉もない。冬は早朝。雪の降っているのは、えも、言われぬものであり、霜がとても白いのも、またそうでなくとも、とても寒く、火などを急ぎおこして、炭を持って通って行くのも、冬らしいものだ。昼になり、温かくゆるんでいく頃は、炭火鉢、火桶の火も白い灰がちになり、よろしくない。
※徒然草と違って、女性作家の書く文章は、ほのぼのとして心が包まれる気がする。兼好法師はズバット世相を斬るという趣だが、清少納言は違った感じがする。どんな内容なのか、読み進めるうちにワクワクする。さすが日本三大随筆といわれるものに、接することが出来るのは嬉しい。完読し、多くの当時の状況にタイムスリップの旅を感じたい。
温かくなって来た春の夜明け、太陽が昇り始め、山際が紫色の細い雲がたなびいている。感動的な眺めである。夏の夜の、闇に飛ぶ蛍もこちらにあちらに光が躍るようだ。雨もいいね。秋に日暮れは早い空を飛ぶ鳥たちが巣へもどる。のどかな中、生けるものの姿が厳かに見える。冬は朝寒いが、白い景色は気が引き締まる。火鉢の赤みが恋しくなる。情緒的な春夏秋冬を詩のように書いている。
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