第36話 二五2 にくきもの 酔っ払い 

文字数 986文字

□また、酒を飲んでわめき、口を指で探り、鬚ある者はそれをなで回し、盃を他の人に受け取らせるときの様子は、いみじう憎らしく見える。「まあ一杯飲め」と言うのだろう、身ぶるいをし、頭をふり、口の脇をおさへ引き垂れて、童が「国府殿にまいって」など謡うときのような表情をする。それをも、まことに立派な人がされていたのを見てしまって、嫌な酔っ払いと思うのです。人をうらやましがり、自分の身の上嘆き、人の噂話をし、些細なことも、聞きたがり、話しを言い知らせなければ、怨んで悪口をいう、また僅かに聞き得たることをば、自分がもとから知っているかのように、他人に語り聞かせるなんていうのは、いとにくし。ものを聞こうと思っている所に泣く赤ちゃん。烏が集まって飛び違い、騒がしく鳴いている。忍んで来る人を、顔見知りなのにほえる犬。強引に密かな所へ隠し臥せ寝たる人なのに、大いびきをかくなんて最低。また、忍んで来る所に、長烏帽子を被って、さすがに人に見られまいと慌てて入るときに、ものにひっかかり、バタバタといわせたのは、はがゆい。伊予の簾などを掛けてあるのに、それをくぐって入ろうとし、さらさらと音を鳴らすのも、気配りがたりない。横布を張った帽額の簾は、まして、小さな板が下に付いており、音がして、はっきりわかる。それも、ゆっくりと引き上げて入るならば、決して鳴らないはずなのに。引き戸を、手荒く開け閉めするのも、いと気が知れない。すこし持ち上げるようにして開ければ、音もしないのに。眠くなったと思い臥したるに、蚊が細い声で鳴いて、顔のあたりにブーンと飛びまわる。羽の風まで、その小さい身のほどであるのが、いとにくたらしい。
※まさに男で粗野で下品な奴は、現代でもいますよ。上品な方はそういう仕草はされないが、成金社長などそういうひといますよね。自分だけが不幸という人もいます。なんとか改善すればいいのにと思いますよ。忍んで男が来るなんて、よっぽど男前だったのでしょう。ひと時の快楽を
求めたのでしょうか。戸の開け閉めも気を付けましょう。蚊は蚊取りマットがなかったのでしょう。痒い思い出夜も眠れず。毎日新聞R4.8.3余録に「ねぶたしと思いて伏したるに、蚊の細声にわびしげに名のりて、顔のほどに飛びあるく」。と載っていた。蚊は睡眠の邪魔だが、体力が弱る時期の疫病退散で祭りに結びつけられていた。
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