第13話 五3 童女のちいせい御膳 

文字数 1,192文字

□姫宮の御側仕えの童女の着物を新調するよう命令されたときに、(生昌)「この女の子の下着である衵(アコメ)の上に着る物は、何色に、すべきでしょうか」と申しあげるので、また大笑いするのも無理もない。(生昌)「姫宮の御膳は、いつものような物では、見た目が不格好でございましょう。小せいお盆である折敷に、小せい食器をのせる高坏などこそが、よろしうございましょう」と申すので(清少)「さてこそは、上っ張りを着た童女も、お仕えしやすいでしょう」というを、(中宮)「なほ、普通の人のように、あれこれ言って笑いものにしてはいけません。いと生真面目な謹厚な人なのだから」と、いと可哀想に思われるのも、面白い。
※生昌は生真面目な男だったのでしょうか、清少納言に口先であれこれ上げ足を取られて、これは参ったと退散。中宮は生昌をあまり、いじめてはいけませんよと清少納言にいう。中宮に相当気にいられたのでしょう。頭の回転も速いので、普通のひとでは、付いて行けなかったのかもしれません。

□中途半端な時間に、女房が来て「大進(ダイジン)の生昌が、なんとしても、申し上げたいことがあります、と言って来られています」と言うのを聞かれて、(宮)「また、どんなことを言って笑いものにされたいと思っているのだろうか」とおほせらるるも、またをかし。(宮)「行って聞いてみなさい」と、のたまわれたので、わざわざ出てみると、(生昌)「昨夜の門のことを、兄の中納言に語りをしましたところ、とても感動されまして、『なんとしても、機会があるならば、心のどかな時でも、御対面して話を承りたいものだ』と、申されておりました」とて、また特に異った事もなかった。あの夜の夜這いもどきのことを言いはしないだろうかと、心がときめいたのだけれど、(生昌)「さて、そのうちに改めて」と、話しだけだった。申し出たことは、そんなことでしたと、中宮に啓上すると、(女房)「わざと来意を告げ、呼び出す程のこともないでしょうに。何かの折に、仕事が暇な時とか、自室の局などに居る時に言えばいいものを」といって笑えば、(宮)「自分が賢い人だと思っている兄者が褒めていたのを、嬉しがるに違いないと思って、告げ聞かしせに来たのでしょう」と、のたまはする御けしきも、いとめでたし。
※わざわざ清少納言様を訪ねてきて、内容は車を門内に入れることが出来ない程狭いことを、故事にたとえ、説教したのに。兄がそれを聞いて又の機会にお話ししたいと言っていたと報告に来た。話の流れ、ダイジンがきたと女房が報告、中宮がまた笑いものになりに来たかといい、出て見ろという生昌は兄者の褒め言葉を復唱する。女房が些細なこと今日でもなく暇な時でもいいのにという。中宮は兄者が賞賛を清少納言に伝え喜ばせたかったという。その内容をさりげなく文章に盛り込んでいく。わたしも「いとをかし」と言いたい。
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