第115話 七〇 忍び合い 

文字数 299文字

忍び合いたる所にあっては、夏こそをかしけれ。とても短い夜明けとなり、少しも寝ずにいてしまった。やがて全ての所を開けはなしてあったので、
庭が涼しく見え渡された。なほ今すこし言うべきことがあるので、かわるがわりに受け答えなどするうちに、ただ座って居る上の方を、烏が高く鳴きて
飛んで行くのは、なにか顕証されているような心がして、をかしけれ。
また、冬の夜ひどく寒いときに、布団に埋もれ臥して聞いていると、鐘の音が、ただ物の底から鳴って居いるように聞こえる、いとをかし。鶏の声も、はじめは羽
のうちに鳴くが、口を籠めながら鳴けば、とても遠い所からのように聞こえるが、明かるくなると、近くに聞こえるのも、をかし。
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