第24話 円融上皇の独り言

文字数 423文字

 余は、今生帝一条帝の父である。一条帝は、いまだ幼く、余が様々な助言を与えるのは、当然だ。それなのに、兼家は、それは摂政の役目だという。臣下に過ぎない兼家より、上皇である余の発言のほうが強いのが当然だ。
 先日も、蔵人頭である藤原実資に命じて、政り事を行ったのに、兼家もすぐに別の事案を実資に命じている。実資は、学識が高く、有職故実に優れ、実直で、曲がったことは行わない。そろそろこのものの官位を上げてやりたいが、兼家の都合が悪くなるので反対してくる。まったく嫌な状態だ。
 永祚元年(989年)、実資に命じて、式部の丞と院分国についての命令文を、兼家のもとに送るようにした。彼らは、立派な働きをするはずだ。一条帝のため、余はよい人事を行う考えである。
 三月になり、兼家が、孫の一条帝と娘の皇后詮子を連れて春日大社に参詣した。一条帝の健康が思わしくなく、余があれだけ反対したにも関わらず。天皇や皇后より、兼家のほうが上であるようなふるまいではないか。
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登場人物紹介

時姫…彰子のおばあちゃん。摂津守藤原中正の娘。

   藤原兼家の妻。藤原道隆・藤原道兼・藤原道長・超子・詮子の母。

藤原兼家…彰子のおじいちゃん。

     藤原師輔の三男。兄は、伊尹と兼通。

詮子…時姫の次女。円融天皇の后。

   子供は一条天皇だけ。道長の姉。

   彰子の父方の伯母。夫の母でもある。

   

円融天皇…兼家の姉の安子の三男。村上天皇の第五皇子で、安子の三男。兄の朱雀天皇から譲位された。

     彰子の父方の大伯父(おじいちゃんのお姉さんの子)に当たる。夫の父でもある。

     子供は一条天皇だけ。后は、たくさんいる。

彰子…当分出てこないけど、三人目のヒロイン。

   藤原道長と源倫子の長女。

   一条天皇の妻。紫式部が女房として仕えた。

一条天皇…円融天皇と詮子の子。

     定子(清少納言が女房として仕えた)や詮子(紫式部が女房として仕えた)の夫。

     他にも、妻がいる。

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