第13話 詮子、梅壺の女御となる

文字数 524文字

 三日夜の餅が、運ばれてきた。美しい銀の盆にのせられている。優雅に口にする。所顕(ところあらわし)を終え、梅壺に下がる。円融帝は、雅やかで美しい帝であるが、どこか冷たい感じを受けた。まあ、今までの経緯を考えれば、無理もない。
 父は、次兄の兼通殿と、語り草になるほど仲が悪かった。その兼通殿がご病気と聞き、父はなんと兼通殿の邸宅の前を素通りして内裏にはせ参じたのだ。怒り心頭の兼通殿は、病を押して内裏に上がられ、頼忠殿を関白に、父の右近衛大将を奪われ参内のかなわない地位に下げられた。まったく、父は何をしているのだか。
 私は、三人目の女御だ。お一人目は、兼通殿の娘媓子様。中宮におなりだが、帝より12歳も年上で、御子様はお生まれでない。たいそう仲の良いお二人であると聞くが、今は病に臥せっていらっしゃる。お二人目は、数か月前に入内された遵子様で、関白頼忠殿の娘。頼忠殿は、兼通殿と仲が良く、父とは疎遠だった。もしかして、中学生の時、四字熟語で学んだ『四面楚歌』なのかしら。
 そんなことは、言っていられない。帝は、冷たいと感じたとはいえ、礼節を重んじ、誠実にふるまわれる。ここにきて、少し父を恨むが、これくらいで弱気になる私ではない。内裏での闘いは、はじまったばかりだ。
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登場人物紹介

時姫…彰子のおばあちゃん。摂津守藤原中正の娘。

   藤原兼家の妻。藤原道隆・藤原道兼・藤原道長・超子・詮子の母。

藤原兼家…彰子のおじいちゃん。

     藤原師輔の三男。兄は、伊尹と兼通。

詮子…時姫の次女。円融天皇の后。

   子供は一条天皇だけ。道長の姉。

   彰子の父方の伯母。夫の母でもある。

   

円融天皇…兼家の姉の安子の三男。村上天皇の第五皇子で、安子の三男。兄の朱雀天皇から譲位された。

     彰子の父方の大伯父(おじいちゃんのお姉さんの子)に当たる。夫の父でもある。

     子供は一条天皇だけ。后は、たくさんいる。

彰子…当分出てこないけど、三人目のヒロイン。

   藤原道長と源倫子の長女。

   一条天皇の妻。紫式部が女房として仕えた。

一条天皇…円融天皇と詮子の子。

     定子(清少納言が女房として仕えた)や詮子(紫式部が女房として仕えた)の夫。

     他にも、妻がいる。

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