第40話 藤の式部のこと(その2)

文字数 772文字

 式部は和歌の名手であるだけでなく、漢学や漢詩の対する知識も並みの学者では太刀打ちできぬほどであった。それもそのはず、一条帝の前の天皇の花山院の春宮時代に読書役を務められた藤原為時の娘だそうだ。為時が式部の弟に教授するのを横で聞いて漢文を覚えてしまったという。5年前に夫と死別し、源氏物語を書き記していたところ、父の目にとまり出仕することになったそうだ。娘が一人いるという。(百人一首にも歌を残す、後の大弐三位だいにのさんみ)

式部から歴史、漢学や漢詩、和歌を学ぶ。学問をしなくては、とても中宮としての地位が保てない。せっかく転生王妃となったのに、飾り物になっては、前世で読んだ〇〇妃や△△女王のような活躍ができない。定子様にも並べない。うん、がんばるぞ!!



 実は、式部はほかの女房に漢学に詳しいことを知られるのを嫌がるので、ひそひそ声で話す。



 これは、唐の詩人、白居易はくきょいの漢詩です。

  ひたかくねむりたりて なおおくるにものうし 

  しょうかくにしとねをかさねて かんをおそれず

  いあいじのかねは まくらをそばだててきき

  こうろほうのゆきは すだれをかかげてみる

  ~太陽は高くのぼり十分にねむったというのに、起きるのはいやです。

   小さな家の中で布団を敷き、あたたかくしているので、寒さなど心配いりません。

   遺愛寺の鐘は寝たままに枕を高くし耳をすませば聞こえてきます。

   香炉の峰に降る雪は、寝たまますだれを跳ね上げてみることができるのです。~

 このように、詩人は左遷されてもそこで悠々自適に暮らしを楽しみ、美しい漢詩を作られたのです。この漢詩を知っていた清少納言は、雪の日に「香炉峰の雪いかならむ」とおっしゃった定子様のお言葉を理解して、お部屋のすだれを上げて見せたそうですよ。



 ふーん。やっぱり、定子お姉さまはすごい。
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登場人物紹介

時姫…彰子のおばあちゃん。摂津守藤原中正の娘。

   藤原兼家の妻。藤原道隆・藤原道兼・藤原道長・超子・詮子の母。

藤原兼家…彰子のおじいちゃん。

     藤原師輔の三男。兄は、伊尹と兼通。

詮子…時姫の次女。円融天皇の后。

   子供は一条天皇だけ。道長の姉。

   彰子の父方の伯母。夫の母でもある。

   

円融天皇…兼家の姉の安子の三男。村上天皇の第五皇子で、安子の三男。兄の朱雀天皇から譲位された。

     彰子の父方の大伯父(おじいちゃんのお姉さんの子)に当たる。夫の父でもある。

     子供は一条天皇だけ。后は、たくさんいる。

彰子…当分出てこないけど、三人目のヒロイン。

   藤原道長と源倫子の長女。

   一条天皇の妻。紫式部が女房として仕えた。

一条天皇…円融天皇と詮子の子。

     定子(清少納言が女房として仕えた)や詮子(紫式部が女房として仕えた)の夫。

     他にも、妻がいる。

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