第9話 時姫の最後

文字数 585文字

 もう、私も長くはありません。もうすぐ五十いそじに手が届くころですが、おそらく届かないことでしょう。この時代に転生してもう三十五年になります。すっかり平安時代の人生を味わいました。

 兼家様は、長く不遇の時を過ごされましたが、兼通殿がお亡くなりになったのち、再び昇進されるようにおなりです。今は、右大臣をお務めです。この後、太政大臣になられるかどうかは、わかりません。

 太郎君は、御年(おんとし)二十八におなりです。今では道隆(みちたか)さまと名乗られ、男ぶりもよく、右近衛権中将に任じられ、備中権守を兼任していらっしゃる。賢い男の孫(伊周(これちか))、かわいらしい女の孫(定子)に恵まれ、先々が楽しみです。

 次郎君は、道兼(みちかね)様。御年(おんとし)二十。侍従に任じられ、昇殿を許されたばかり。

 三郎君は、道長(みちなが)様。御年おんとし十五。従五位下なので、まだ昇殿も許されていない。

 一の姫は、超子様。冷泉院の女御で二の宮をお産みになった。宮は現在五つになっていらっしゃる。

 二の姫は、詮子様。なかなか入内が決まらなかったが、安子様のお産みになった円融天皇の女御となられ、おなかにややがいらっしゃる。

 それぞれに心配なことであるが、どの方もしっかりとお育ちになっていらっしゃる。夫も、お子様方も、「位人臣(くらいじんしん)を極め」たり、「国母(こくぼ)」におなり遊ばしたわけではないが、そろそろお別れが近い。

 わたしは、いつまでも、あなた方を見守っていますよ。
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登場人物紹介

時姫…彰子のおばあちゃん。摂津守藤原中正の娘。

   藤原兼家の妻。藤原道隆・藤原道兼・藤原道長・超子・詮子の母。

藤原兼家…彰子のおじいちゃん。

     藤原師輔の三男。兄は、伊尹と兼通。

詮子…時姫の次女。円融天皇の后。

   子供は一条天皇だけ。道長の姉。

   彰子の父方の伯母。夫の母でもある。

   

円融天皇…兼家の姉の安子の三男。村上天皇の第五皇子で、安子の三男。兄の朱雀天皇から譲位された。

     彰子の父方の大伯父(おじいちゃんのお姉さんの子)に当たる。夫の父でもある。

     子供は一条天皇だけ。后は、たくさんいる。

彰子…当分出てこないけど、三人目のヒロイン。

   藤原道長と源倫子の長女。

   一条天皇の妻。紫式部が女房として仕えた。

一条天皇…円融天皇と詮子の子。

     定子(清少納言が女房として仕えた)や詮子(紫式部が女房として仕えた)の夫。

     他にも、妻がいる。

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