第25話 一条帝元服

文字数 620文字

  永祚2年(988年)正月五日、一条帝の御元服の儀が行われる。幼かった帝も、りりしくご成人あそばし、晴れ晴れしさに涙が浮かび、何とも言い難いほどうれしさがこみあげて来た。

 長兄道隆の娘、定子様が入内され、女御となられる。この方の母君は、円融院の世に内侍として仕え和歌のみならず漢詩もたしなまれ才女として誉れ高き女性である。

 兄道隆との恋をうたったという『わすれじの行く末まではかたければ今日を限りの命ともがな』(「決してあなたをわすれたりしない」とおっしゃった道隆さまのお言葉も、永遠に変わらないとは思えません。道隆さまのお心が変わってしまうのを見るくらいなら、今日、この時に私の命が果ててしまえばよろしいのに)という和歌は、あまりにも有名だ。

 定子様も、その才を受け継いでいらっしゃると聞く。帝を共に支えてくださるであろう。

 そう思っていたのだが、そうはならなかった。5月に父兼家が病のため、関白を兄道隆に譲り、7月に父が亡くなってしまう。すると、悲しみに暮れるどころか、兄は10月に定子様を中宮にした。よほど娘が中宮になったことが自慢だったのか、一条帝に向かってわたくしが中宮になれなかったことを揶揄したという。なんということだ。この兄は、信用ならない。
 定子様は、明るく賢く、女房達も才あるものをそろえている。この中の、清少納言の書いたものが、評判になっているようだ。中学校の時に学んだかの有名な、「枕草子」と呼ばれる随筆であろう。
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登場人物紹介

時姫…彰子のおばあちゃん。摂津守藤原中正の娘。

   藤原兼家の妻。藤原道隆・藤原道兼・藤原道長・超子・詮子の母。

藤原兼家…彰子のおじいちゃん。

     藤原師輔の三男。兄は、伊尹と兼通。

詮子…時姫の次女。円融天皇の后。

   子供は一条天皇だけ。道長の姉。

   彰子の父方の伯母。夫の母でもある。

   

円融天皇…兼家の姉の安子の三男。村上天皇の第五皇子で、安子の三男。兄の朱雀天皇から譲位された。

     彰子の父方の大伯父(おじいちゃんのお姉さんの子)に当たる。夫の父でもある。

     子供は一条天皇だけ。后は、たくさんいる。

彰子…当分出てこないけど、三人目のヒロイン。

   藤原道長と源倫子の長女。

   一条天皇の妻。紫式部が女房として仕えた。

一条天皇…円融天皇と詮子の子。

     定子(清少納言が女房として仕えた)や詮子(紫式部が女房として仕えた)の夫。

     他にも、妻がいる。

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