第17話 遵子立后

文字数 671文字

 天元五年(982年)一月一日、父は右大臣として参内し、帝にご挨拶をしたのち、わたくしの梅壺にもいらっしゃった。一宮様のおかわいらしさに、目を細めてじじバカぶりを見せていらした。
 一月二十八日、冷泉上皇の女御であった姉の超子がお亡くなりになった。たくさんの皇子様、姫皇子様を産まれたのだが、先の姫皇子様を産まれた後、御体を壊してしまわれたのであった。悲しくてやりきれない。
 そうこうしているうちに、信じることのできない噂を耳にした。関白頼忠殿の娘遵子様に中宮の宣旨が下るというのだ。帝は、父を警戒なさって、秘密で事を進めていらっしゃったらしい。
 先の中宮兼通殿の娘媓子様がお亡くなりになって、中宮が空位になっていた。当然、一の宮様をお産み申し上げたわたくしが近いうちに中宮になるものと思っていたのに。わたくしは、父に連れられ、東三条殿へと退出した。いわゆる「実家に帰らせていただきます!」というストライキである。
 十月五日、立后の日。わたくしは、父の東三条殿で唇をかみしめていた。帝からは、一の宮を連れて参内するようにと矢の催促だ。誰が参内などするものか。父も、参内を促されているが、全く動かない。女御に対するこの仕打ち、決して許すまじ。なんと、媓子様の弟の公任が「こちらの女御(詮子)はいつ立后なさるのかな」と言い放ったという。この恨み、晴らさずにおくものか。
 父兼家不在では、政治がうまく回らない。一度行った立后は、もう変えることはできない。膠着状態のまま月日が過ぎていく。兼家・詮子の時代のことはよく知らない。この後、どうなるのだろう。
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登場人物紹介

時姫…彰子のおばあちゃん。摂津守藤原中正の娘。

   藤原兼家の妻。藤原道隆・藤原道兼・藤原道長・超子・詮子の母。

藤原兼家…彰子のおじいちゃん。

     藤原師輔の三男。兄は、伊尹と兼通。

詮子…時姫の次女。円融天皇の后。

   子供は一条天皇だけ。道長の姉。

   彰子の父方の伯母。夫の母でもある。

   

円融天皇…兼家の姉の安子の三男。村上天皇の第五皇子で、安子の三男。兄の朱雀天皇から譲位された。

     彰子の父方の大伯父(おじいちゃんのお姉さんの子)に当たる。夫の父でもある。

     子供は一条天皇だけ。后は、たくさんいる。

彰子…当分出てこないけど、三人目のヒロイン。

   藤原道長と源倫子の長女。

   一条天皇の妻。紫式部が女房として仕えた。

一条天皇…円融天皇と詮子の子。

     定子(清少納言が女房として仕えた)や詮子(紫式部が女房として仕えた)の夫。

     他にも、妻がいる。

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