第16話 皇子様の誕生

文字数 539文字

 かなり心配だったが、天元3年6月5日、病院でなくても、ちゃんと皇子様がお生まれになった。男の子だ。内裏では出産できないので(血を流してはいけないんだとか)父兼家の東三条殿にて。
 そして、10月、お食い初めが行われた。美しい黒の漆器に菊の模様を施した御膳に鯛の尾頭つき、お赤飯・焚き物・香の物・紅白の餅、吸い物、歯固め石が供される。御子様は、帝に似て、雅でそれは美しい赤子でいらっしゃる。この御子様の生涯が良きものでありますように。帝から、またたくさんの殿上人から、絹や漆器など、たくさんの祝いの品が届けられた。父は、満面の笑みで抱かれた御子様を見ている。母に見ていただけないのが、残念だ。
 これと前後して、尊子内親王が承香殿の女御となられた。殿方は、妻の懐妊に際して新しい女を求められると読んだが、(父も、そうであったと母から聞いたが)、それは帝も同じなのであろうか。しかし、わたくしは、なんと言っても一の男皇子をお産み申し上げた身。何の心配もいらぬはず。心がざわざわするのを、何とか抑えて平静を保つ。
 父の家で、弟の道長とすごろく遊びをしたり、琴をつま弾いたりしながら、日に日に育っていく我が子との暮らしは、なんと穏やかで楽しいものであることか。
 うん、転生して、よかった!
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登場人物紹介

時姫…彰子のおばあちゃん。摂津守藤原中正の娘。

   藤原兼家の妻。藤原道隆・藤原道兼・藤原道長・超子・詮子の母。

藤原兼家…彰子のおじいちゃん。

     藤原師輔の三男。兄は、伊尹と兼通。

詮子…時姫の次女。円融天皇の后。

   子供は一条天皇だけ。道長の姉。

   彰子の父方の伯母。夫の母でもある。

   

円融天皇…兼家の姉の安子の三男。村上天皇の第五皇子で、安子の三男。兄の朱雀天皇から譲位された。

     彰子の父方の大伯父(おじいちゃんのお姉さんの子)に当たる。夫の父でもある。

     子供は一条天皇だけ。后は、たくさんいる。

彰子…当分出てこないけど、三人目のヒロイン。

   藤原道長と源倫子の長女。

   一条天皇の妻。紫式部が女房として仕えた。

一条天皇…円融天皇と詮子の子。

     定子(清少納言が女房として仕えた)や詮子(紫式部が女房として仕えた)の夫。

     他にも、妻がいる。

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