第15話 円融天皇の独り言

文字数 606文字

 余(円融天皇)が天皇となったのは、安和2年(969年)数え年十一歳の時である。母は、藤原師輔の娘、中宮安子の三宮。同母帝兄の朱雀天皇からの譲位による。次兄の二宮は、藤原氏ではなく源高明の娘を妃としていたため、東宮になり損ねた。余の妃は、師輔の次郎、兼道の娘嬉子であったから東宮となり、天皇となった。しかし、嬉子は子をなさず、昨年はかなくなってしまった。即位以来十年以上、皇子は生まれなかった。もともと、兄にまだ皇子がいなかったから、余が東宮となり、天皇となった。中継ぎ扱いだ。
 今の世の中、だれが東宮となり、天皇となるかは、天皇家の意志ではなく、藤原氏との関係で決まっていく。おかしな世の中だが、実際にそうであるのだから、うまく事を運ばないと、天皇の考え通りの政治にならない。
 そして、今朝、梅壺の女御詮子懐妊の知らせが届いた。まことにめでたい。大いに喜んだが、冷静になってみるとこれは大変だ。詮子の父は、あの藤原兼家ではないか。どうせなら、もう一人の女御、関白頼忠殿の娘遵子のところならよかったのだが。兼家は、余の思いなど無視して、政治を思うままにするに違いない。何か手を打たねば。
 藤原氏を超える身分といえば、皇女だ。兄冷泉天皇の女二宮に尊子内親王がいらっしゃる。光り輝くようなたいそうかわいらしい姫君である。この方を妃に迎え入れよう。
 六月、詮子が男皇子を産み、十月、尊子内親王が承香殿の女御となられた。
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登場人物紹介

時姫…彰子のおばあちゃん。摂津守藤原中正の娘。

   藤原兼家の妻。藤原道隆・藤原道兼・藤原道長・超子・詮子の母。

藤原兼家…彰子のおじいちゃん。

     藤原師輔の三男。兄は、伊尹と兼通。

詮子…時姫の次女。円融天皇の后。

   子供は一条天皇だけ。道長の姉。

   彰子の父方の伯母。夫の母でもある。

   

円融天皇…兼家の姉の安子の三男。村上天皇の第五皇子で、安子の三男。兄の朱雀天皇から譲位された。

     彰子の父方の大伯父(おじいちゃんのお姉さんの子)に当たる。夫の父でもある。

     子供は一条天皇だけ。后は、たくさんいる。

彰子…当分出てこないけど、三人目のヒロイン。

   藤原道長と源倫子の長女。

   一条天皇の妻。紫式部が女房として仕えた。

一条天皇…円融天皇と詮子の子。

     定子(清少納言が女房として仕えた)や詮子(紫式部が女房として仕えた)の夫。

     他にも、妻がいる。

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