第39話 追走
文字数 2,399文字
神殿にいた粋間たちもまぶしさから徐々に慣れてきた。
「卑弥呼様、大丈夫ですか?」
粋間が卑弥呼のいた場所に向かって声をかける。
しかし、返事はなかった。
「卑弥呼様?」
美馬も声をかけたが、返事はない。
まぶしさが収まり、粋間と美馬が卑弥呼のいた場所を見ると、そこには卑弥呼がいなかった。
「卑弥呼様!」
粋間らは神殿中を探したが、卑弥呼はどこにもいなかった。
「あいつらがいない!」
美馬が古代史研究会チームのメンバーがいなくなっていることに気づく。
「あいつらか……あいつらが卑弥呼様を連れ去ったな!」
美馬が怒りの表情を浮かべる。
「梨目!」
粋間は梨目を呼んで「お前がいながら何やってる!」と怒鳴りつけた。
「申し訳ございません」
「今すぐ、奴らを追え! 卑弥呼様を取り戻して来い!」
「わかりました。行くぞ!」
梨目は護衛に声をかけて、大急ぎで神殿を出ていった。
「追え、あいつらを追え。卑弥呼様を取り戻すんだ!」
梨目は神殿の外にいた群衆にも大声で指示を出す。その声を聞いた群衆らが古代史研究会のメンバーを追って全力で走り出した。
神殿には、粋間と美馬の二人、それに、文化財保存推進協会チームの四人だけが残っていた。
四人の姿を見た美馬が怒鳴りつける。
「何やってるんだ。お前らも行け!」
「はい!」
四人は逃げるように神殿を後にした。
美馬がくやしさで苦々しい表情を浮かべる。
一方、粋間は神殿の奥にじっと一人で立っていた。
「邪馬台国の復活もここまでか……」
粋間がつぶやく。
文化財保存推進協会チームの四人は、神殿を出たところで立ち止まった。
「何がお前らも行けだ。あいつら偉そうに」
松永が神殿を振り返ってつばを吐く。
「っていうか、私たちなんであんなところにいたの?」
富子が首をかしげる。
「四人で卑弥呼の前に行って、リーダーが褒美をくれって言って……その後はよく覚えてないな」
斎藤も不思議がっている。
「よくわからないが、あれが卑弥呼の呪術なんだろう。あそこに集まった人間の雰囲気が異常だったのもそのせいだろう」
石川が落ち着いた様子で答える。
「それで、あの操られた群衆はどうなっちゃうの?」
「そんなのは知らん。もう俺たちには関係ない」
「お宝もなしってことか……」
斎藤ががっかりしてため息をつく。
「そうだな。邪馬台国のお宝はまだ神殿にあるだろうが、もうあんなところには戻りたくない。黄金の川にあった砂金も、あの激しい水の流れでどこかに流れてしまっただろう」
淡々と話していた石川が、ふと「待てよ」とつぶやく。
「あいつらがいたな」
と言って、石川はニヤリとする。
「あいつらって?」
「古代史研究会の奴らだよ。卑弥呼を連れていったのもきっとあいつらだ。あいつらがまだ何かお宝らしきものを持っているかもしれないな」
古代史研究会の名前を聞いて、松永が怒りの表情を浮かべる。
「またあいつらか!」
「奴らは、洞窟で会っときも、邪馬台国に関する道具はもう持っていないなんて平気で嘘をついていたな。やってくれたぜ」
斎藤が不気味な笑みを浮かべる。
「そういえば、神殿の中で小町を見たような気がするけど……」
富子が首をかしげる。
「よし、あいつらを追うぞ。こうなったら、せめてあいつらが持っているお宝を奪うぞ」
石川の言葉に全員がうなずき、四人は洞窟の入口に向かって走り始めた。
古代史研究会メンバーは、洞窟の入口を目指して必死に走っていた。
しばらくすると、後ろのほうから自分たちを追いかけてくる邪馬台国の護衛らの声が聞こえてくる。その声はだんだん大きくなってくる。
「もう来たのか。このままじゃ追いつかれるぜ」
信二が後ろのほうを見る。
「私に任せて」
と言って、小町が急に立ち止まる。それに驚いて他のメンバーもあわてて立ち止まる。
「小町先輩、追ってくる護衛と戦うんですか。じゃあ俺も……」
信二が小町のほうに寄っていくと、
「馬鹿ねえ。戦うわけないじゃないのよ。ここを使うのよ」
小町は自分の頭を指さす。
「でも、先輩……」
弥生が小町に声をかけようとすると、
「いいから行って。早くしないと追いつかれるわよ。先生!」
小町が声を上げて藤原のほうを見る。
藤原は小町を見て一瞬躊躇したが、黙ってうなずく。
「わかった。みんな、ここは小町君に任せて先に行こう」
と言って、小町を残したまま藤原が走り出すと、他のメンバーも後についていった。
その後すぐに、追いかけてきた護衛が小町を見つけて近づいてきた。
「さあ、どうしようかしら」
小町が笑いながらつぶやく。
「いたぞ!」
小町を見つけた護衛が近づいてくる。小町を数人で囲むと、武器を構える。
「遅いわよ。あんたたち!」
その瞬間、小町が護衛に向かって大声で怒鳴った。
「あいつらを追いかけてきたけど、私ひとりじゃ捕まえられないから、ここで待ってたのよ」
護衛が「えっ?」っていう顔をする。
護衛はチラリと小町を見る。すると、護衛は小町が邪馬台国の衣装を着ていたので、小町の言っていることは間違いないと判断した。
「それであいつらはどっちに行った?」
護衛の一人が訊くと、
「向こうに行ったわ」
小町は、古代史研究会のメンバーが進んだのとは別の道を指さした。
「すぐに追いかけて! 私は次の人たちが来た時のためにここにいるわ」
「行くぞ!」
護衛は、小町に指示された道に向かって走っていった。
次の護衛がやってきたときも、小町は同じ方法を使って、護衛を別の道に誘導した。
「そろそろバレそうだから私も行くか」
同じことを何回か繰り返した後、小町は先に行ったメンバーを追いかけて走り出した。
「卑弥呼様、大丈夫ですか?」
粋間が卑弥呼のいた場所に向かって声をかける。
しかし、返事はなかった。
「卑弥呼様?」
美馬も声をかけたが、返事はない。
まぶしさが収まり、粋間と美馬が卑弥呼のいた場所を見ると、そこには卑弥呼がいなかった。
「卑弥呼様!」
粋間らは神殿中を探したが、卑弥呼はどこにもいなかった。
「あいつらがいない!」
美馬が古代史研究会チームのメンバーがいなくなっていることに気づく。
「あいつらか……あいつらが卑弥呼様を連れ去ったな!」
美馬が怒りの表情を浮かべる。
「梨目!」
粋間は梨目を呼んで「お前がいながら何やってる!」と怒鳴りつけた。
「申し訳ございません」
「今すぐ、奴らを追え! 卑弥呼様を取り戻して来い!」
「わかりました。行くぞ!」
梨目は護衛に声をかけて、大急ぎで神殿を出ていった。
「追え、あいつらを追え。卑弥呼様を取り戻すんだ!」
梨目は神殿の外にいた群衆にも大声で指示を出す。その声を聞いた群衆らが古代史研究会のメンバーを追って全力で走り出した。
神殿には、粋間と美馬の二人、それに、文化財保存推進協会チームの四人だけが残っていた。
四人の姿を見た美馬が怒鳴りつける。
「何やってるんだ。お前らも行け!」
「はい!」
四人は逃げるように神殿を後にした。
美馬がくやしさで苦々しい表情を浮かべる。
一方、粋間は神殿の奥にじっと一人で立っていた。
「邪馬台国の復活もここまでか……」
粋間がつぶやく。
文化財保存推進協会チームの四人は、神殿を出たところで立ち止まった。
「何がお前らも行けだ。あいつら偉そうに」
松永が神殿を振り返ってつばを吐く。
「っていうか、私たちなんであんなところにいたの?」
富子が首をかしげる。
「四人で卑弥呼の前に行って、リーダーが褒美をくれって言って……その後はよく覚えてないな」
斎藤も不思議がっている。
「よくわからないが、あれが卑弥呼の呪術なんだろう。あそこに集まった人間の雰囲気が異常だったのもそのせいだろう」
石川が落ち着いた様子で答える。
「それで、あの操られた群衆はどうなっちゃうの?」
「そんなのは知らん。もう俺たちには関係ない」
「お宝もなしってことか……」
斎藤ががっかりしてため息をつく。
「そうだな。邪馬台国のお宝はまだ神殿にあるだろうが、もうあんなところには戻りたくない。黄金の川にあった砂金も、あの激しい水の流れでどこかに流れてしまっただろう」
淡々と話していた石川が、ふと「待てよ」とつぶやく。
「あいつらがいたな」
と言って、石川はニヤリとする。
「あいつらって?」
「古代史研究会の奴らだよ。卑弥呼を連れていったのもきっとあいつらだ。あいつらがまだ何かお宝らしきものを持っているかもしれないな」
古代史研究会の名前を聞いて、松永が怒りの表情を浮かべる。
「またあいつらか!」
「奴らは、洞窟で会っときも、邪馬台国に関する道具はもう持っていないなんて平気で嘘をついていたな。やってくれたぜ」
斎藤が不気味な笑みを浮かべる。
「そういえば、神殿の中で小町を見たような気がするけど……」
富子が首をかしげる。
「よし、あいつらを追うぞ。こうなったら、せめてあいつらが持っているお宝を奪うぞ」
石川の言葉に全員がうなずき、四人は洞窟の入口に向かって走り始めた。
古代史研究会メンバーは、洞窟の入口を目指して必死に走っていた。
しばらくすると、後ろのほうから自分たちを追いかけてくる邪馬台国の護衛らの声が聞こえてくる。その声はだんだん大きくなってくる。
「もう来たのか。このままじゃ追いつかれるぜ」
信二が後ろのほうを見る。
「私に任せて」
と言って、小町が急に立ち止まる。それに驚いて他のメンバーもあわてて立ち止まる。
「小町先輩、追ってくる護衛と戦うんですか。じゃあ俺も……」
信二が小町のほうに寄っていくと、
「馬鹿ねえ。戦うわけないじゃないのよ。ここを使うのよ」
小町は自分の頭を指さす。
「でも、先輩……」
弥生が小町に声をかけようとすると、
「いいから行って。早くしないと追いつかれるわよ。先生!」
小町が声を上げて藤原のほうを見る。
藤原は小町を見て一瞬躊躇したが、黙ってうなずく。
「わかった。みんな、ここは小町君に任せて先に行こう」
と言って、小町を残したまま藤原が走り出すと、他のメンバーも後についていった。
その後すぐに、追いかけてきた護衛が小町を見つけて近づいてきた。
「さあ、どうしようかしら」
小町が笑いながらつぶやく。
「いたぞ!」
小町を見つけた護衛が近づいてくる。小町を数人で囲むと、武器を構える。
「遅いわよ。あんたたち!」
その瞬間、小町が護衛に向かって大声で怒鳴った。
「あいつらを追いかけてきたけど、私ひとりじゃ捕まえられないから、ここで待ってたのよ」
護衛が「えっ?」っていう顔をする。
護衛はチラリと小町を見る。すると、護衛は小町が邪馬台国の衣装を着ていたので、小町の言っていることは間違いないと判断した。
「それであいつらはどっちに行った?」
護衛の一人が訊くと、
「向こうに行ったわ」
小町は、古代史研究会のメンバーが進んだのとは別の道を指さした。
「すぐに追いかけて! 私は次の人たちが来た時のためにここにいるわ」
「行くぞ!」
護衛は、小町に指示された道に向かって走っていった。
次の護衛がやってきたときも、小町は同じ方法を使って、護衛を別の道に誘導した。
「そろそろバレそうだから私も行くか」
同じことを何回か繰り返した後、小町は先に行ったメンバーを追いかけて走り出した。