第10話 文化財保存推進協会 金の匂い
文字数 1,443文字
文化財保存推進協会のメンバー四人がいつものバーに集まっている。
「いよいよ明日が邪馬台国ツアーだ。胸が高まるな」
リーダーの石川が口を開く。
「遠足の前の日の子どもみたいね」
富子はあきれている。
「あの古代史最大のミステリー、邪馬台国のお宝が手に入るんだぞ。テンションが上がって当然だろ」
「で、本当に邪馬台国のお宝なんてあるんですか?」
斎藤がニヤニヤしながら尋ねる。
「俺も正直そこが一番知りたいんすけど」
松永も冷めた表情をしたまま尋ねる。
「実はヒストリートラベルについて少し調べてみたんだ。そしたら、あの会社をクビになったって奴に会うことができたんだ」
石川がニヤリとする。
「そいつはヒストリートラベルの社長や部長と遠い親戚にあたるんだと。まあ、実はあの会社の社員はほとんどがそうらしい」
石川が一口ウイスキーをすする。
「で、その男が言うには、その一族に先祖代々伝わる口外無用の伝説があるらしいんだ。ところが、そいつは酒の席で酔っぱらった勢いでその伝説を話してしまったそうだ。そしたら、その次の日にクビになったって話だ」
「そんなことでクビになるなんて。それで、その伝説ってどんな話なの?」
「さすがにそれは、教えてくれなかったな。その時は酒の席だったため、聞いていた相手も内容を覚えてなかったらしく、クビになるだけで済んだらしい。もし、その伝説が広まっていたら……」
石川は脅すような目で三人を見た。
三人はごくりと唾を飲み込む。
「じゃあ、結局どんな伝説かは全くわからないの?」
富子ががっかりしてため息をつく。
「伝説の内容は教えられないと言っていたが、ひとつだけ聞きだすことができた」
「そのひとつって?」
「その伝説は邪馬台国に関することだって話だ」
「邪馬台国!」
三人が顔を見合わせる。
「ああ。今回のツアーも邪馬台国ツアーとなっている。これは俺の推理だが、ひょっとすると、ヒストリートラベルの奴らも、今回のツアーで行く場所に邪馬台国のお宝か何かがあるのを知ってるんじゃないのか?」
「知ってるなら、自分たちで探せばいいんじゃないの?」
「ヒストリートラベルでもそこにお宝があるらしいということは知っているが、具体的にどこにあるかはわからないということなんじゃないか?」
「それで、ツアーの宝探しということにして参加者に探させるってこと?」
「と俺は思う」
富子の言葉に石川はうなずく。
「つまり、本当のことを話して専門家に頼むと、マスコミなんかもかぎつけて大騒ぎになるかもしれない。だから、学生や趣味のサークルの団体を使うということか」
「と俺は思う」
斎藤の言葉に石川はうなずく。
「で、とりあえず名前だけ見て歴史に関係する団体だと思って、俺たちのような胡散臭い団体にも案内状を送ってしまったということか」
「と俺は思う」
松永の言葉に石川はうなずく。
「どうやら天は俺たちに味方したな。本当のお宝があるなんて思っているのは俺たちしかいない。宝探しゲームを楽しむ気でいる学生相手に後れを取るわけがないぜ」
石川が不気味な笑いを浮かべる。
「邪馬台国のお宝かあ。それが手に入れば、たいして価値のない遺跡を盗掘したり、それをお宝と偽って転売したりする仕事からは、おさらばできるってわけね」
富子はもうお宝を手に入れた気分になっている。
「ああ。明日は俺たちにとって最高の日になりそうだぜ。邪馬台国に乾杯!」
「乾杯!」
「いよいよ明日が邪馬台国ツアーだ。胸が高まるな」
リーダーの石川が口を開く。
「遠足の前の日の子どもみたいね」
富子はあきれている。
「あの古代史最大のミステリー、邪馬台国のお宝が手に入るんだぞ。テンションが上がって当然だろ」
「で、本当に邪馬台国のお宝なんてあるんですか?」
斎藤がニヤニヤしながら尋ねる。
「俺も正直そこが一番知りたいんすけど」
松永も冷めた表情をしたまま尋ねる。
「実はヒストリートラベルについて少し調べてみたんだ。そしたら、あの会社をクビになったって奴に会うことができたんだ」
石川がニヤリとする。
「そいつはヒストリートラベルの社長や部長と遠い親戚にあたるんだと。まあ、実はあの会社の社員はほとんどがそうらしい」
石川が一口ウイスキーをすする。
「で、その男が言うには、その一族に先祖代々伝わる口外無用の伝説があるらしいんだ。ところが、そいつは酒の席で酔っぱらった勢いでその伝説を話してしまったそうだ。そしたら、その次の日にクビになったって話だ」
「そんなことでクビになるなんて。それで、その伝説ってどんな話なの?」
「さすがにそれは、教えてくれなかったな。その時は酒の席だったため、聞いていた相手も内容を覚えてなかったらしく、クビになるだけで済んだらしい。もし、その伝説が広まっていたら……」
石川は脅すような目で三人を見た。
三人はごくりと唾を飲み込む。
「じゃあ、結局どんな伝説かは全くわからないの?」
富子ががっかりしてため息をつく。
「伝説の内容は教えられないと言っていたが、ひとつだけ聞きだすことができた」
「そのひとつって?」
「その伝説は邪馬台国に関することだって話だ」
「邪馬台国!」
三人が顔を見合わせる。
「ああ。今回のツアーも邪馬台国ツアーとなっている。これは俺の推理だが、ひょっとすると、ヒストリートラベルの奴らも、今回のツアーで行く場所に邪馬台国のお宝か何かがあるのを知ってるんじゃないのか?」
「知ってるなら、自分たちで探せばいいんじゃないの?」
「ヒストリートラベルでもそこにお宝があるらしいということは知っているが、具体的にどこにあるかはわからないということなんじゃないか?」
「それで、ツアーの宝探しということにして参加者に探させるってこと?」
「と俺は思う」
富子の言葉に石川はうなずく。
「つまり、本当のことを話して専門家に頼むと、マスコミなんかもかぎつけて大騒ぎになるかもしれない。だから、学生や趣味のサークルの団体を使うということか」
「と俺は思う」
斎藤の言葉に石川はうなずく。
「で、とりあえず名前だけ見て歴史に関係する団体だと思って、俺たちのような胡散臭い団体にも案内状を送ってしまったということか」
「と俺は思う」
松永の言葉に石川はうなずく。
「どうやら天は俺たちに味方したな。本当のお宝があるなんて思っているのは俺たちしかいない。宝探しゲームを楽しむ気でいる学生相手に後れを取るわけがないぜ」
石川が不気味な笑いを浮かべる。
「邪馬台国のお宝かあ。それが手に入れば、たいして価値のない遺跡を盗掘したり、それをお宝と偽って転売したりする仕事からは、おさらばできるってわけね」
富子はもうお宝を手に入れた気分になっている。
「ああ。明日は俺たちにとって最高の日になりそうだぜ。邪馬台国に乾杯!」
「乾杯!」