第5話 文化財保存推進協会
文字数 1,419文字
都会の外れにある場末の酒場、といった表現がぴったりのバーに文化財 保存 推進 協会 の四人のメンバーが集まっていた。
四人は店の端のテーブルに座っている。
ちびちびとウイスキーを飲んでいたリーダーの石川 が口を開く。
「旅行会社のヒストリートラベルからツアーの案内状が届いた」
「旅行会社から案内状? 何かの抽選にでも当たったの?」
メンバーの中で紅一点の富子 がからかうように石川を見る。
「邪馬台国ツアーというツアーをやるんだそうだ。何でも、大学の歴史サークルやアマチュアの考古学の愛好会、あとはうちのような歴史に関する仕事をしている団体を対象にしたものらしい」
石川は案内状をテーブルの上に置く。
「歴史に関する仕事ねえ。うちらのような、人をだまして文化財などのお宝を手に入れて、それを転売して金儲けをしているような団体にも案内状が届いているの?」
富子が皮肉をたっぷり込めて答える。
「表向きは、歴史的に価値のある文化財の保存を推進する団体だからな」
石川がニヤリとした。
「こいつのように悪知恵で平気で人を騙(だま)すようなメンバーもいる団体だけどな」
メンバーの中で一番背が高くがっちりした体格をした松永 が、もう一人のメンバーの斎藤 を見て笑っている。
「お前のようにでかい図体で暴力的なメンバーもいる団体だがな」
メンバーの中で一番背の小さな斎藤が、馬鹿にするよう表情で松永を見ながら言い返した。
「おいおい、俺たちは文化財を大事にする団体なんだぜ。物騒なことを言うなよ」
石川がメンバーを見て笑う。
「で、どうするの? まさかこんな学生向けのイベントに参加するわけ?」
「そのつもりだ」
「本当に? まさか優勝賞品の世界一周古代遺跡ツアーが目的ってわけじゃないわよね」
富子がテーブルの上にある案内状を見る。
「そんなわけないだろ」
石川が鼻で笑った。
「実はな、ヒストリートラベルはただの旅行会社じゃないって噂がある」
「どういうこと?」
「おれの情報によると、この会社の社長はじめ幹部は、古代日本の権力者の末裔だって話だ」
「古代日本の権力者の末裔?」
三人が怪訝(けげん)な顔をする。
「まあそんな顔をするな。あの会社の社長や部長の話は俺も聞いたことがある。ただの小さな旅行会社の人間じゃないことは確かだ。あいつらは何かを隠している。この会社はこれまでもいろいろなツアーを行っているが、邪馬台国をテーマにしたツアーは、実は今回が初めてだ」
「そんなことまで調べたの?」
「まあな。俺はお宝の匂いには敏感だからな」
石川が不敵な笑みを浮かべた。
「しかも、今回のツアーは参加者を限定している上に、参加料は無料だ」
「確かに無料ってのは変ねえ。ボランティア団体じゃあるまいし」
「それだけじゃない。このツアーには、何か引っかかるものが多くある。これはきっと何かあるぞ」
「さすが、リーダー。金への嗅覚は相変わらずですね」
斎藤がニヤリとする。
「お宝を争う相手が学生や一般人の趣味のサークルなら、プロのトレジャーハンターなんかを相手にするより楽勝だな」
松永も不気味な笑いを浮かべる。
富子がテーブルの上にあったグラスに酒を注ぎ、それを全員に渡す。
「今回のお宝は私たちがいただきね、乾杯」
「乾杯!」
四人は店の端のテーブルに座っている。
ちびちびとウイスキーを飲んでいたリーダーの
「旅行会社のヒストリートラベルからツアーの案内状が届いた」
「旅行会社から案内状? 何かの抽選にでも当たったの?」
メンバーの中で紅一点の
「邪馬台国ツアーというツアーをやるんだそうだ。何でも、大学の歴史サークルやアマチュアの考古学の愛好会、あとはうちのような歴史に関する仕事をしている団体を対象にしたものらしい」
石川は案内状をテーブルの上に置く。
「歴史に関する仕事ねえ。うちらのような、人をだまして文化財などのお宝を手に入れて、それを転売して金儲けをしているような団体にも案内状が届いているの?」
富子が皮肉をたっぷり込めて答える。
「表向きは、歴史的に価値のある文化財の保存を推進する団体だからな」
石川がニヤリとした。
「こいつのように悪知恵で平気で人を騙(だま)すようなメンバーもいる団体だけどな」
メンバーの中で一番背が高くがっちりした体格をした
「お前のようにでかい図体で暴力的なメンバーもいる団体だがな」
メンバーの中で一番背の小さな斎藤が、馬鹿にするよう表情で松永を見ながら言い返した。
「おいおい、俺たちは文化財を大事にする団体なんだぜ。物騒なことを言うなよ」
石川がメンバーを見て笑う。
「で、どうするの? まさかこんな学生向けのイベントに参加するわけ?」
「そのつもりだ」
「本当に? まさか優勝賞品の世界一周古代遺跡ツアーが目的ってわけじゃないわよね」
富子がテーブルの上にある案内状を見る。
「そんなわけないだろ」
石川が鼻で笑った。
「実はな、ヒストリートラベルはただの旅行会社じゃないって噂がある」
「どういうこと?」
「おれの情報によると、この会社の社長はじめ幹部は、古代日本の権力者の末裔だって話だ」
「古代日本の権力者の末裔?」
三人が怪訝(けげん)な顔をする。
「まあそんな顔をするな。あの会社の社長や部長の話は俺も聞いたことがある。ただの小さな旅行会社の人間じゃないことは確かだ。あいつらは何かを隠している。この会社はこれまでもいろいろなツアーを行っているが、邪馬台国をテーマにしたツアーは、実は今回が初めてだ」
「そんなことまで調べたの?」
「まあな。俺はお宝の匂いには敏感だからな」
石川が不敵な笑みを浮かべた。
「しかも、今回のツアーは参加者を限定している上に、参加料は無料だ」
「確かに無料ってのは変ねえ。ボランティア団体じゃあるまいし」
「それだけじゃない。このツアーには、何か引っかかるものが多くある。これはきっと何かあるぞ」
「さすが、リーダー。金への嗅覚は相変わらずですね」
斎藤がニヤリとする。
「お宝を争う相手が学生や一般人の趣味のサークルなら、プロのトレジャーハンターなんかを相手にするより楽勝だな」
松永も不気味な笑いを浮かべる。
富子がテーブルの上にあったグラスに酒を注ぎ、それを全員に渡す。
「今回のお宝は私たちがいただきね、乾杯」
「乾杯!」