第45話 邪馬台国ツアー終了
文字数 1,531文字
古代史研究会のメンバーのところに、ヒストリートラベルの粋間と美馬がやって来た。
「伊代さん、やはりあなたは不思議な力を持っている人でした。私がバスの中で感じたことに間違いはありませんでした」
そう言って、美馬が伊代を見る。
「あなた方はいつから目覚めていたんですか?」
藤原が思い出したように訊くと、
「さすがは藤原先生、知っていましたか」
粋間がニヤリとしながら答える。
「卑弥呼様が気を失ってあなた方に連れ去られた後、すぐに目が覚めました」
「そうでしたか」
「なぜかはわかりませんが、たぶん我々は卑弥呼様のすぐそばにいたから卑弥呼様が封じ込められたのを感じることができて、比較的早く目が覚めたんだと思います。他の者はあの興奮状態でしたから、もう一度卑弥呼様、いや伊代さんの言葉を聞くまで目が覚めなかったんでしょう」
「目が覚めていたんなら、彼らが俺たちを追いかけるのを止めてくれればよかったのに」
信二が恨めしそうに言う。
「卑弥呼様がまた復活するのでないか、そんな期待もまだ少しありましたので…みなさんには大変な思いをさせてしまい申し訳ありません」
粋間が頭を下げる。
「それに、あの熱狂と興奮は、正直我々では、もはやどうすることもできなかったのです」
美馬が頭をかきながら言う。
「他の参加者の人たちはどこに行ったんですか?」
弥生が辺りを見ながら尋ねる。
「全員バスの中にいます。怪我などをした方はいません」
美馬がバスのほうを見て答える。
「藤原先生」
粋間が真剣な表情で藤原のほうを見る。
「今回は我々の勝手な都合により、みなさんには本当に大変な思いをさせてしまいました。ここで起こったことを警察に話すなりマスコミに話すなり、自由にしてください」
藤原は少し間をおいて考えた後で答える。
「我々も他の参加者の方も無事でしたし。まあ、怪我をした者もいますが……」
藤原が信二のほうをちらっと見る。
粋間と美馬も信二を見たので、信二は怪我をした足を動かして「全然平気です」と答える。
「ここはみなさんにとって特別な場所です。幸い大きな事故などもありませんでしたし、ここで起こったことを警察やマスコミに話すつもりはありません」
「先生。ありがとうございます」
粋間と美馬は深々と頭を下げた。
「それに信二君を怪我させたのは、邪馬台国の人たちじゃないしね」
小町がちらっと向こう側を見る。その方向から文化財保存推進協会チームのメンバーがやってきた。
リーダーの石川が粋間と藤原の前で立ち止まる。
「我々も今回のことは決して口外いたしません。まあ、逆にこっちが警察に訴えられるかもしれませんが……」
とだけ口少なく言って、バスに向かって歩いていった。
富子が小町をちらっと見る。小町は富子に笑顔を返したが、富子はつんとした表情をして歩いていった。
「そろそろ、みなさんをお送りいたします。帰りもミステリーツアーのバスでよろしいですか?」
美馬が声をかける。
「ええ。もちろんです」
藤原が答えると、全員がバスに向かって歩き出した。
バスに乗る前に、弥生が後ろを振り返って、イベント会場とその向こうにある山を見た。
「邪馬台国か……」
弥生はつぶやいて、そのままじっと山のほうを見ている。
信二、金次郎、伊代も同じように、じっと邪馬台国のあった場所を見ている。
藤原と小町は、バスの中で四人を温かく見守っていた。
「みんな、そろそろ出発するよ」
藤原が四人に声をかける。
「はい!」
四人が返事をしてバスに乗り込んだ。四人とも充実感でいっぱいの表情をしていた。
バスがゆっくりと走り出す。
「伊代さん、やはりあなたは不思議な力を持っている人でした。私がバスの中で感じたことに間違いはありませんでした」
そう言って、美馬が伊代を見る。
「あなた方はいつから目覚めていたんですか?」
藤原が思い出したように訊くと、
「さすがは藤原先生、知っていましたか」
粋間がニヤリとしながら答える。
「卑弥呼様が気を失ってあなた方に連れ去られた後、すぐに目が覚めました」
「そうでしたか」
「なぜかはわかりませんが、たぶん我々は卑弥呼様のすぐそばにいたから卑弥呼様が封じ込められたのを感じることができて、比較的早く目が覚めたんだと思います。他の者はあの興奮状態でしたから、もう一度卑弥呼様、いや伊代さんの言葉を聞くまで目が覚めなかったんでしょう」
「目が覚めていたんなら、彼らが俺たちを追いかけるのを止めてくれればよかったのに」
信二が恨めしそうに言う。
「卑弥呼様がまた復活するのでないか、そんな期待もまだ少しありましたので…みなさんには大変な思いをさせてしまい申し訳ありません」
粋間が頭を下げる。
「それに、あの熱狂と興奮は、正直我々では、もはやどうすることもできなかったのです」
美馬が頭をかきながら言う。
「他の参加者の人たちはどこに行ったんですか?」
弥生が辺りを見ながら尋ねる。
「全員バスの中にいます。怪我などをした方はいません」
美馬がバスのほうを見て答える。
「藤原先生」
粋間が真剣な表情で藤原のほうを見る。
「今回は我々の勝手な都合により、みなさんには本当に大変な思いをさせてしまいました。ここで起こったことを警察に話すなりマスコミに話すなり、自由にしてください」
藤原は少し間をおいて考えた後で答える。
「我々も他の参加者の方も無事でしたし。まあ、怪我をした者もいますが……」
藤原が信二のほうをちらっと見る。
粋間と美馬も信二を見たので、信二は怪我をした足を動かして「全然平気です」と答える。
「ここはみなさんにとって特別な場所です。幸い大きな事故などもありませんでしたし、ここで起こったことを警察やマスコミに話すつもりはありません」
「先生。ありがとうございます」
粋間と美馬は深々と頭を下げた。
「それに信二君を怪我させたのは、邪馬台国の人たちじゃないしね」
小町がちらっと向こう側を見る。その方向から文化財保存推進協会チームのメンバーがやってきた。
リーダーの石川が粋間と藤原の前で立ち止まる。
「我々も今回のことは決して口外いたしません。まあ、逆にこっちが警察に訴えられるかもしれませんが……」
とだけ口少なく言って、バスに向かって歩いていった。
富子が小町をちらっと見る。小町は富子に笑顔を返したが、富子はつんとした表情をして歩いていった。
「そろそろ、みなさんをお送りいたします。帰りもミステリーツアーのバスでよろしいですか?」
美馬が声をかける。
「ええ。もちろんです」
藤原が答えると、全員がバスに向かって歩き出した。
バスに乗る前に、弥生が後ろを振り返って、イベント会場とその向こうにある山を見た。
「邪馬台国か……」
弥生はつぶやいて、そのままじっと山のほうを見ている。
信二、金次郎、伊代も同じように、じっと邪馬台国のあった場所を見ている。
藤原と小町は、バスの中で四人を温かく見守っていた。
「みんな、そろそろ出発するよ」
藤原が四人に声をかける。
「はい!」
四人が返事をしてバスに乗り込んだ。四人とも充実感でいっぱいの表情をしていた。
バスがゆっくりと走り出す。