第42話 水上決戦
文字数 2,407文字
「先生! あいつらが来たわ」
弥生が石川の運転するボートが追ってくるのに気付いた。
「先生、追いつかれる!」
と弥生が言った瞬間、ボートに激しい衝撃が走った。
「きゃあっ!」
「うわー!」
石川のボートが思いっきりぶつかって来た。
「もう一回ぶつけてボートを壊してやる」
石川は再び自分たちのボートをぶつけようとした、そのとき、
「うわーっ!」
今度は石川のボートに衝撃が走った。後ろから追いついてきた信二と小町の乗ったボートが、石川のボートにぶつかってきたのだった。
「あいつら、追いついてきやがったか。どうしてやるか……」
石川が考えていると、
「私に任せて」
と言って、富子がボートの上で立ち上がった。
富子は脇を走っている信二と小町の乗ったボートをじっと見ていた。
そして、掛け声とともにジャンプすると、そのまま脇のボートに乗り移ってきた。
ボートの上で富子が小町を睨みつける。
それに答えるように小町も立ち上がって、じっと富子を見る。
「信二君、ボートの運転はお願いね」
小町はそう言って、富子と相対した。
「小町、こんな場所で、こんな形で、出会うことになるなんてね」
と言って、富子が空手の構えをとる。
「本当ね。まあ、私たちらしくていいかもね」
小町も同様に空手の構えをとる。
「小町先輩、空手をやってたんですか? だから、さっきはあんなすごいキックを出せたんですね」
信二が小町の構えを見て納得したようにうなずく。
「小町、本当にいまいましい奴。中学生まで常に成績も男子の人気も一番だった私のプライドをめちゃくちゃに打ち砕いた、本当に嫌な女。許さないわよ」
富子が吐き捨てるように言う。
「お前じゃ格闘技でも先輩に敵うわけないよ。ね、先輩!」
信二が余裕の表情で声をかけると、
「実は、空手だけはこの子に勝てなかったのよね」
小町がぼそっと言う。
「えっ?」
次の瞬間、いきなり富子が小町に向かってきて、空手の突きを繰り出してきたので、小町はあわててよけた。
そこからは、お互いに攻撃を繰り出し一進一退の攻防が続く。しかし、徐々に富子のほうが優勢になってきた。
小町にはあきらかに疲れの色が見え始めていた。ここに来るまで、洞窟内で護衛をかく乱したり、環濠集落で信二を助けたりと、休むことなく動いてきた疲れが出てきたようだった。
小町はボートの端に追い込まれた。
「どうやらここまでね」
富子がニヤリとすると、そのまま小町に向かって強烈な蹴りを放った。蹴りは正確に小町のみぞおちに当たり、小町はボートから池の中へ落ちてしまった。
「小町先輩!」
「勝負ありね」
富子が勝ち誇った表情を見せる。
そして、池から上がったらとどめをさしてやるといった様子で、ボートの上で小町が姿を現すのを待っていた。
しかし、しばらく経っても小町は姿を見せなかった。
「まさか沈んでしまったんじゃ……」
信二は心配そうに池を見ている。
富子も不安になって、ボートから身を乗り出して池の中をのぞき込んだ。その瞬間……
富子がのぞき込んだのとは反対方向から、小町がボートの上に上がってきた。
「しまった!」
富子が振り返った瞬間、小町はジャンプして富子に強烈な蹴りを入れた。蹴りがまともに富子に命中して、今度は富子はそのまま池に落ちてしまった。
しかし、小町も勢い余って再び池に落ちてしまった。
「今だ!」
その様子を見ていた石川が、前にいる藤原らの乗ったボートに突っ込もうとした。
しかし、そのとき、
「させるか」
信二がとっさに自分のボートから石川のボートにジャンプして、石川に飛びかかった。二人はもみ合いになる。
「どけ、このやろう!」
「そっちには行かせないぞ」
二人が争っていると、ボートが激しく揺れた。そのため、二人はボートから落ちそうになる。
「馬鹿やめろ。おれは泳げ……」
ボートから落ちそうになって動揺した石川がそう言った瞬間、ボートがひっくり返って二人は池に落ちてしまった。
「おれは泳げないんだ、ゲホゲホ」
石川が慌てた様子で水上でわめく。
足を怪我している信二も、泳ぐことができずに溺れそうになっている。
小町の蹴りを食らった富子はのびていて、小町に抱きかかえられていた。
その小町も疲れ切ってもう動くことができず、富子を支えながら必死にボートの端につかまっていた。
「このままでは危ない。彼らを助けなくては」
ボートの上で今の争いを見ていた藤原が、乗っているボートを池に落ちた四人に近づけようとした。
そのとき、
「いたぞ。つかまえろ!」
「卑弥呼様を取り返せ!」
邪馬台国の護衛が追いかけてきた。護衛のボートは、藤原らの乗るボートのすぐ近くまで迫っていた。
藤原は、ボートにいる弥生と金次郎と伊代、池に中にいる四人、そして追ってくる護衛を交互に見た。
そして、
「池の中にいる四人は至急助けないと危ない」
と弥生と金次郎の目を見て話す。
「僕は四人を助けにいく。弥生君、金次郎君。伊代君のことは頼んだよ」
と二人の肩をつかんで言った。二人は黙ってうなずいた。
そのまま藤原は池の中に飛び込んでいった。
「金次郎君、行くわよ」
「はい」
弥生と金次郎は護衛から逃げるため、ボートを走らせてその場を離れる。
藤原は、池の中にいた四人を一人ずつ助けてボートに乗せた。全員ぐったりしてボートの上に横になっていた。石川と富子はもう抵抗することもなかった。
護衛の乗ったボートは、藤原らには見向きもしないで前を行くボートを追いかけていった。
「我々も追いかけよう。と言っても、みんなはそのまま休んでいてくれていいよ」
藤原はボートの上でぐったりしている四人を見て、ボートを発進させた。
弥生が石川の運転するボートが追ってくるのに気付いた。
「先生、追いつかれる!」
と弥生が言った瞬間、ボートに激しい衝撃が走った。
「きゃあっ!」
「うわー!」
石川のボートが思いっきりぶつかって来た。
「もう一回ぶつけてボートを壊してやる」
石川は再び自分たちのボートをぶつけようとした、そのとき、
「うわーっ!」
今度は石川のボートに衝撃が走った。後ろから追いついてきた信二と小町の乗ったボートが、石川のボートにぶつかってきたのだった。
「あいつら、追いついてきやがったか。どうしてやるか……」
石川が考えていると、
「私に任せて」
と言って、富子がボートの上で立ち上がった。
富子は脇を走っている信二と小町の乗ったボートをじっと見ていた。
そして、掛け声とともにジャンプすると、そのまま脇のボートに乗り移ってきた。
ボートの上で富子が小町を睨みつける。
それに答えるように小町も立ち上がって、じっと富子を見る。
「信二君、ボートの運転はお願いね」
小町はそう言って、富子と相対した。
「小町、こんな場所で、こんな形で、出会うことになるなんてね」
と言って、富子が空手の構えをとる。
「本当ね。まあ、私たちらしくていいかもね」
小町も同様に空手の構えをとる。
「小町先輩、空手をやってたんですか? だから、さっきはあんなすごいキックを出せたんですね」
信二が小町の構えを見て納得したようにうなずく。
「小町、本当にいまいましい奴。中学生まで常に成績も男子の人気も一番だった私のプライドをめちゃくちゃに打ち砕いた、本当に嫌な女。許さないわよ」
富子が吐き捨てるように言う。
「お前じゃ格闘技でも先輩に敵うわけないよ。ね、先輩!」
信二が余裕の表情で声をかけると、
「実は、空手だけはこの子に勝てなかったのよね」
小町がぼそっと言う。
「えっ?」
次の瞬間、いきなり富子が小町に向かってきて、空手の突きを繰り出してきたので、小町はあわててよけた。
そこからは、お互いに攻撃を繰り出し一進一退の攻防が続く。しかし、徐々に富子のほうが優勢になってきた。
小町にはあきらかに疲れの色が見え始めていた。ここに来るまで、洞窟内で護衛をかく乱したり、環濠集落で信二を助けたりと、休むことなく動いてきた疲れが出てきたようだった。
小町はボートの端に追い込まれた。
「どうやらここまでね」
富子がニヤリとすると、そのまま小町に向かって強烈な蹴りを放った。蹴りは正確に小町のみぞおちに当たり、小町はボートから池の中へ落ちてしまった。
「小町先輩!」
「勝負ありね」
富子が勝ち誇った表情を見せる。
そして、池から上がったらとどめをさしてやるといった様子で、ボートの上で小町が姿を現すのを待っていた。
しかし、しばらく経っても小町は姿を見せなかった。
「まさか沈んでしまったんじゃ……」
信二は心配そうに池を見ている。
富子も不安になって、ボートから身を乗り出して池の中をのぞき込んだ。その瞬間……
富子がのぞき込んだのとは反対方向から、小町がボートの上に上がってきた。
「しまった!」
富子が振り返った瞬間、小町はジャンプして富子に強烈な蹴りを入れた。蹴りがまともに富子に命中して、今度は富子はそのまま池に落ちてしまった。
しかし、小町も勢い余って再び池に落ちてしまった。
「今だ!」
その様子を見ていた石川が、前にいる藤原らの乗ったボートに突っ込もうとした。
しかし、そのとき、
「させるか」
信二がとっさに自分のボートから石川のボートにジャンプして、石川に飛びかかった。二人はもみ合いになる。
「どけ、このやろう!」
「そっちには行かせないぞ」
二人が争っていると、ボートが激しく揺れた。そのため、二人はボートから落ちそうになる。
「馬鹿やめろ。おれは泳げ……」
ボートから落ちそうになって動揺した石川がそう言った瞬間、ボートがひっくり返って二人は池に落ちてしまった。
「おれは泳げないんだ、ゲホゲホ」
石川が慌てた様子で水上でわめく。
足を怪我している信二も、泳ぐことができずに溺れそうになっている。
小町の蹴りを食らった富子はのびていて、小町に抱きかかえられていた。
その小町も疲れ切ってもう動くことができず、富子を支えながら必死にボートの端につかまっていた。
「このままでは危ない。彼らを助けなくては」
ボートの上で今の争いを見ていた藤原が、乗っているボートを池に落ちた四人に近づけようとした。
そのとき、
「いたぞ。つかまえろ!」
「卑弥呼様を取り返せ!」
邪馬台国の護衛が追いかけてきた。護衛のボートは、藤原らの乗るボートのすぐ近くまで迫っていた。
藤原は、ボートにいる弥生と金次郎と伊代、池に中にいる四人、そして追ってくる護衛を交互に見た。
そして、
「池の中にいる四人は至急助けないと危ない」
と弥生と金次郎の目を見て話す。
「僕は四人を助けにいく。弥生君、金次郎君。伊代君のことは頼んだよ」
と二人の肩をつかんで言った。二人は黙ってうなずいた。
そのまま藤原は池の中に飛び込んでいった。
「金次郎君、行くわよ」
「はい」
弥生と金次郎は護衛から逃げるため、ボートを走らせてその場を離れる。
藤原は、池の中にいた四人を一人ずつ助けてボートに乗せた。全員ぐったりしてボートの上に横になっていた。石川と富子はもう抵抗することもなかった。
護衛の乗ったボートは、藤原らには見向きもしないで前を行くボートを追いかけていった。
「我々も追いかけよう。と言っても、みんなはそのまま休んでいてくれていいよ」
藤原はボートの上でぐったりしている四人を見て、ボートを発進させた。