第26話 イベント会場にて
文字数 1,842文字
藤原と小町はイベント会場に入った。
イベント会場には、宝探しをあきらめて引き返してきたチームも多くいたため、ツアー開始のときと同様に多くの人で賑わっていた。
二人は古代史研究会の四人を探したが、この会場にはいないようだった。
「そうよね。あの四人が簡単にあきらめて戻ってきたりはしないわよね」
「僕たちもボートで池を渡ろう」
二人はイベント会場からボートのあるところに行こうとした。
ところが、途中であちこちの店のスタッフから声をかけられて、二人はなかなか前に進めない。
「あら、お似合いの二人だねえ。この邪馬台国シャツでもおそろいで買っていかないかい?」
「邪馬台国カレーはどう?」
「ありがとうございます。帰りに寄ってみますので」
小町は笑顔で軽く答えながらなんとか前に進もうとしたが、次から次へと店のスタッフに声をかけられた。
「これじゃきりがないわね」
小町は立ち止まって考えた。すると、ふと一軒の店に目が止まった。
「そうだ! これよ」
小町は藤原を連れてその店に入る。
そこは邪馬台国の衣装を売っている店だった。ツアーがスタートした時に古代史研究会の四人も立ち寄って、伊代が衣装を買った店だ。
「すみません。この衣装をください」
小町はそこで二着の衣装を買うと、
「できればここで着替えたいんですけど」
と言って更衣室を借りると、藤原に一着の衣装を藤原に渡した。
「先生もこれに着替えて!」
「僕も?」
「いいから早く!」
衣装を渡された藤原は、小町の言われた通りに更衣室で衣装に着替えた。
着替えを終えた二人が更衣室から出てくる。
「先生、けっこう似合ってるじゃない。いつものよれよれの服より全然いいわよ」
邪馬台国の衣装に着替えた藤原は恥ずかしそうにしている。
「あら、お嬢さん、卑弥呼様にそっくりねえ」
「本当ねえ。美人でスタイルもよくて」
店の人が口々に小町を褒める。
「ありがとうございます。あれ、これはサングラス?」
小町は、店先でサングラスを売っているのを見つけた。
「邪馬台国の衣装に似合うかなと思って売っているのよ」
店の人が笑いながら言う。
小町は、この衣装にサングラスねえと思って首をひねった。
「それが全然売れないのよ」
まあそうだわね、と小町は心の中で思った。
「そうだ! あなたたちにサービスであげるわよ」
と言って、店の人はそこにあったサングラス五個をすべて小町に渡した。
「サングラスを五個も? あ、ありがとうございます」
いらないと言ってまた長話になるのも面倒だと思って、小町はサングラスを受け取ってお礼を言った。
二人は店を後にして、小走りで会場の中をを進んでいった。
邪馬台国の衣装を着てから、店の人は二人をスタッフだと思って誰も声をかけなくなった。
「そうか。この衣装はそういうことか」
藤原が納得したようにうなずくと、小町が藤原にウインクした。
二人はスムーズに会場を抜けて、ボート乗り場に行った。
ボート乗り場には、帰ってきたチームの分の手漕ぎボートが何台か停めてあった。
藤原が手漕ぎボートに乗ろうとしたとき、
「待って、先生」
小町が藤原がボートに乗るのを止める。
「あそこにモーターボートがあるわ」
小町が少し離れたところにあるモーターボートを指さす。
「あれなら手漕ぎボートより速く行けるわよ」
「でも、あれはスタッフ用のじゃないのかい?」
「先生、さっき美馬さんにもらったバッジよ」
「バッジ? ああ、これかい?」
小町は藤原からバッジを取り上げると、それを持ってモーターボートの近くにいたスタッフのところに行った。
「すいません。部長の美馬さんの命令で、緊急に池の向こう側に行くことになったので、このボートを使ってもいいですか?」
と言って、小町はスタッフにバッジを見せた。
「わかりました。どうぞお使いください」
バッジを見たスタッフはすぐに返事をした。
「ありがとうございます。先生、行くわよ」
二人はモーターボートに素早く乗り込み、エンジンをかけてボート乗り場から出発した。
「小町君、君は本当に頭の回転も行動も速いねえ」
藤原は小町の素早い機転と行動力に感心していた。
「こういうのは私に任せて。でも、邪馬台国が近くなったら先生に活躍してもらうわよ」
小町はボートを華麗に操作して、草木の生い茂る池をあっという間に抜けていった。
イベント会場には、宝探しをあきらめて引き返してきたチームも多くいたため、ツアー開始のときと同様に多くの人で賑わっていた。
二人は古代史研究会の四人を探したが、この会場にはいないようだった。
「そうよね。あの四人が簡単にあきらめて戻ってきたりはしないわよね」
「僕たちもボートで池を渡ろう」
二人はイベント会場からボートのあるところに行こうとした。
ところが、途中であちこちの店のスタッフから声をかけられて、二人はなかなか前に進めない。
「あら、お似合いの二人だねえ。この邪馬台国シャツでもおそろいで買っていかないかい?」
「邪馬台国カレーはどう?」
「ありがとうございます。帰りに寄ってみますので」
小町は笑顔で軽く答えながらなんとか前に進もうとしたが、次から次へと店のスタッフに声をかけられた。
「これじゃきりがないわね」
小町は立ち止まって考えた。すると、ふと一軒の店に目が止まった。
「そうだ! これよ」
小町は藤原を連れてその店に入る。
そこは邪馬台国の衣装を売っている店だった。ツアーがスタートした時に古代史研究会の四人も立ち寄って、伊代が衣装を買った店だ。
「すみません。この衣装をください」
小町はそこで二着の衣装を買うと、
「できればここで着替えたいんですけど」
と言って更衣室を借りると、藤原に一着の衣装を藤原に渡した。
「先生もこれに着替えて!」
「僕も?」
「いいから早く!」
衣装を渡された藤原は、小町の言われた通りに更衣室で衣装に着替えた。
着替えを終えた二人が更衣室から出てくる。
「先生、けっこう似合ってるじゃない。いつものよれよれの服より全然いいわよ」
邪馬台国の衣装に着替えた藤原は恥ずかしそうにしている。
「あら、お嬢さん、卑弥呼様にそっくりねえ」
「本当ねえ。美人でスタイルもよくて」
店の人が口々に小町を褒める。
「ありがとうございます。あれ、これはサングラス?」
小町は、店先でサングラスを売っているのを見つけた。
「邪馬台国の衣装に似合うかなと思って売っているのよ」
店の人が笑いながら言う。
小町は、この衣装にサングラスねえと思って首をひねった。
「それが全然売れないのよ」
まあそうだわね、と小町は心の中で思った。
「そうだ! あなたたちにサービスであげるわよ」
と言って、店の人はそこにあったサングラス五個をすべて小町に渡した。
「サングラスを五個も? あ、ありがとうございます」
いらないと言ってまた長話になるのも面倒だと思って、小町はサングラスを受け取ってお礼を言った。
二人は店を後にして、小走りで会場の中をを進んでいった。
邪馬台国の衣装を着てから、店の人は二人をスタッフだと思って誰も声をかけなくなった。
「そうか。この衣装はそういうことか」
藤原が納得したようにうなずくと、小町が藤原にウインクした。
二人はスムーズに会場を抜けて、ボート乗り場に行った。
ボート乗り場には、帰ってきたチームの分の手漕ぎボートが何台か停めてあった。
藤原が手漕ぎボートに乗ろうとしたとき、
「待って、先生」
小町が藤原がボートに乗るのを止める。
「あそこにモーターボートがあるわ」
小町が少し離れたところにあるモーターボートを指さす。
「あれなら手漕ぎボートより速く行けるわよ」
「でも、あれはスタッフ用のじゃないのかい?」
「先生、さっき美馬さんにもらったバッジよ」
「バッジ? ああ、これかい?」
小町は藤原からバッジを取り上げると、それを持ってモーターボートの近くにいたスタッフのところに行った。
「すいません。部長の美馬さんの命令で、緊急に池の向こう側に行くことになったので、このボートを使ってもいいですか?」
と言って、小町はスタッフにバッジを見せた。
「わかりました。どうぞお使いください」
バッジを見たスタッフはすぐに返事をした。
「ありがとうございます。先生、行くわよ」
二人はモーターボートに素早く乗り込み、エンジンをかけてボート乗り場から出発した。
「小町君、君は本当に頭の回転も行動も速いねえ」
藤原は小町の素早い機転と行動力に感心していた。
「こういうのは私に任せて。でも、邪馬台国が近くなったら先生に活躍してもらうわよ」
小町はボートを華麗に操作して、草木の生い茂る池をあっという間に抜けていった。