2021/4『四月大歌舞伎 第三部 桜姫東文章 上の巻』

文字数 1,056文字

 「きたー!」
 歌舞伎座の四月大歌舞伎のラインナップを見た時に、心の中で叫びました。予想していたわけでは全く無いのですが、観ることがあると期待していたわけではないのですが、ついに、松竹が伝家の宝刀を抜いたなぁ、と思ってしまったのです。
 「桜姫東文章」は四世鶴屋南北の人気作品で、片岡仁左衛門さん、坂東玉三郎さんコンビでの上演は、なんと36年ぶりなのだそうです。そして復刻されたポスターは39年前の物。う、美しい…。



 新型コロナのせいで上演形式を三部制の短時間に変更しているために、長い通し狂言が上演できず、なんだかずっとガラコンサートをやっているような状態だった歌舞伎座。この作品に関しては、上下に分けることで黄金コンビの復活が可能になったと聞くと、これからも、工夫して通し狂言をやって下さいと松竹にお願いしたいです。通し狂言好きなので。

 さて、肝心の「桜姫東文章」がどんなお話なのか、というと、これがいろいろてんこ盛り過ぎて、私ごときに説明できる代物ではありません。何しろ、始まりがBL心中、強盗ついでの強姦、お寺で濡れ場、ストーカー、殺人に幽霊、売春に復讐殺人と、深窓のお姫様と希代の色悪に心中の生き残りの高僧が絡み合う奇想天外で、退廃美に彩られた物語です。筋立ては辻褄が合うとか合わないとかとは別次元なのですが、登場人物の心理の変化には納得がいくところが、傑作たるゆえんでしょうか。
 もっとも、実際の舞台を観ているときは、そんなことはどうでもよくて、今まで見たことがないほどの濃厚に作り上げられた官能的な場面に目が釘付けでした。それぞれ二役をこなす主役コンビは出ずっぱりなので、上下に分けていてもたいへんそうに思えますが、そんなことはまったく感じられません。ただただ没入して観てしまう、物語も役者のお芝居も、濃厚な舞台でした。後半の下の巻も、観なくては。

 この舞台は、残念なことに最後の4日間が緊急事態宣言が出たことで中止になってしまいました。観ることができた幸運に感謝。そして、シネ歌舞伎としていつか上演されることを願います。


四世鶴屋南北 作
郡司正勝 補綴
桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)上の巻
   清玄/釣鐘権助 片岡仁左衛門
   入間悪五郎   中村鴈治郎
   粟津七郎    中村錦之助
   奴軍助     中村福之助
   吉田松若    片岡千之助
   松井源吾    片岡松之助
   局長浦     上村吉弥
   役僧残月    中村歌六
   白菊丸/桜姫  坂東玉三郎

劇場:歌舞伎座



 
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