2021/9『湊横濱荒狗挽歌~新装、三人吉三。』

文字数 795文字

 このタイトルは「みなとよこはまあらぶるいぬのさけび」と読みます。横浜の古いホテルを舞台に、やくざと刑事、親世代と子供世代がぶつかり合う。それを、ホテルの支配人と支配人が作ったふしぎな人形(ひとがた)が、見つめます。




 ハードボイルド現代劇ということで、大筋は昔のアクション映画風なのに、登場人物がみんな繊細で、傷ついたり傷つけたりします。職業選択を間違えたような人ばかり。その中で、村岡希美さん演じるやくざの妻由香子は、みごとに二人のやくざの親分と、悪徳刑事を手玉に取るファムファタルな女でした。クールに品よく渡り歩く姿がかっこよかったです。ハードボイルド小説なら、必須のキャラですね。

 なあなあで上手くやって来たやくざの親分二人と刑事が、昔を懐かしんでホテルで語り合い、やくざの子分と刑事の部下は影で手を組み、屈折して育ったやくざの子供たちと刑事の子供はいつしか交じり合い、全員が顔を揃えたラストに古い秩序の崩壊が訪れます。
 そして、親の影響下で、苦しみ傷つきながら自分の道を探し、道を踏み外した子供世代は、外界に飛び出していきました。

 親世代のベテランの方たちがさすがで、笑わせてくれるし、哀愁もあり、すごみもあり、物語に奥行きを作っています。そこに若手が若さでぶつかり、熱量のある舞台でした。支配人と人形(ひとがた)が不思議な存在感で、登場人物の内面をえぐっていました。

 横浜は物語の舞台として魅力のある要素がたくさんあると思うので、横浜の劇場で横浜を舞台とした演劇をもっと見たいなと思いました。

 CS放送局「衛星劇場」にて放映されるそうです。
 日時:22/1/23(日)午後6:30~OA


作    :野木萌葱
演出   :シライケイタ 

出演: 玉城裕規 岡本玲 森優作 / 渡辺哲 山本亨 ラサール石井
    村岡希美 大久保鷹 筑波竜一 伊藤公一 那須凜 若杉宏二

劇場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

 
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