2021/6『六月大歌舞伎 第三部 桜姫東文章 下の巻』

文字数 965文字

 劇場に向かう電車で思わぬアクシデントに見舞われた為に、ハラハラドキドキのあげく数分遅刻する惨事になりました。廻りのお席の方にはご迷惑をおかけし、申し訳なかったです。冒頭の上の巻の解説中に滑り込めたので、本編前だったのが、不幸中の幸いでした。劇場スタッフの方たちの滑らかな連携プレーにも助けられました。歌舞伎座、さすがです。ありがとうございました。
 どんなアクシデントでもあきらめない、タクシーのメーターなんかかまうものか、何があろうが見たい、という気持ちに突き動かされた演目です。何しろ、仁左衛門さんと玉三郎さんの「桜姫東文章」の続きですから。

 上の巻は、零落(れいらく)した桜姫と清玄が暗闇で行き違う場面で終わりました。下の巻は、その清玄がかつての部下に殺されてしまうところから始まります。そこへ、現れる権助は、南北らしく墓掘り人夫になっています。桜姫も登場し、役者がそろいます。この場では、仁左衛門さんの清玄から権助への早変わりが何度もあり、舞台に走り出て来る仁左衛門さんに拍手が起こります。
歌舞伎らしい見どころです。そして、クライマックスの桜姫の仇討ちシーンも、追いつ追われつ、じたばたと、女殺油地獄の逆パターンですね。復讐を終えた桜姫に、異変を察した近隣の者が迫って来ます。この時の玉三郎さんの凄惨な佇まいがなんとも見事で、これで幕切れだろうと持ったのですが、南北お約束のめでたしめでたしシーンがありました。玉三郎様が、お姫様らしい姿の桜姫になって登場し、仁左衛門様の別役の偉い武士役として、美しい衣装に着替えてきます。さしずめ、カーテンコールですね。
 複雑怪奇な物語ですが、妖艶さと残酷さが回転扉のようにパタパタと入れ替わる面白さがたまりませんでした。しかも、この名コンビで見れたありがたさ。アクシデントのバタバタも全て飛んで、満足感だけを抱えて帰りました。

四世鶴屋南北 作
郡司正勝 補綴
桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)下の巻
   清玄/釣鐘権助 片岡仁左衛門
   粟津七郎    中村錦之助
   葛飾のお十   片岡孝太郎
   奴軍助     中村福之助
   吉田松若    片岡千之助
   判人勘六    橘三郎
   局長浦     上村吉弥
   役僧残月    中村歌六
   桜姫      坂東玉三郎

劇場:歌舞伎座
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