2021/8『砂の女』

文字数 866文字

 さて、オリンピックが終わり、コロナの感染状況は益々悪化し、パラリンピックが始まり、という時期の観劇は、6月に経験済みのシアタートラムで良かったです。経路も込み合う路線ではないことも確認済みなので。余計なことに神経を使う日々ですが、致し方ありません。

 さて、そんな状況下で見た「砂の女」は、更に極限状況に置かれた男女の物語でした。安部公房を現代国語の教科書でした読んだことがないので、ググって少しばかり予習をしましたが、余計わからなくなったまま臨んだ観劇でした。
 予習は何の意味もありませんでした。音楽、舞台美術、演技の三つ巴で、あっという間に物語世界に引きずり込まれ、ザラザラとした砂を感じ、ヒリヒリとした乾きを感じる前半でした。休憩時間には劇場の外に出られるので、広場でたっぷり水分補給。喉の渇きは、舞台から受けた乾きのイメージに加えて、換気推進のためか、劇場内の空調がかなり強いせいかもしれません。
 後半はエロチックでサスペンスフル。村人たちの存在感が増すとともに、状況はより複雑になり、より強く抜け出せない感覚にとらわれます。
 時折り差しはさまれる、男の元の世界の様子もやはり不条理に包まれています。
 そして、女の、砂を掻き続ける生活は、今のコロナ対策をし続ける私たちの生活を彷彿させ、現実の不条理さをあらためて認識させられました。
 膨大な台詞とほぼ出ずっぱりの主役の二人に加え、村人役の方たちも何役もこなす緊張感のある舞台は、シアタートラムの空間がぴったりでした。でも、シリアスな内容ながら、緒川たまきさんと仲村トオルさんの個性もあって、随所に可笑しみが盛り込まれているので、緊張感が重苦しくはなりません。完成度のとても高い舞台を観た幸福感に包まれて、いつも通り、直帰しました。

 9月30日から10月6日まで、配信されるそうです。


原作:安部公房
上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
音楽:演奏:上野洋子
振付:小野寺修二
出演:緒川たまき、仲村トオル / オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲

劇場:シアタートラム
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