2022/4『シネマ歌舞伎 桜姫東文章 上の巻』

文字数 552文字

 昨年、歌舞伎座で見て、シネ歌舞伎になると良いなと願っていた演目が、一年後にシネ歌舞伎として上演されました。行って来ました。
 忘れている…。スクリーンを見ながら、浮かんだ思いは、忘れている…、でした。昨年、歌舞伎座で見た時は『桜姫東文章』という演目が初見だったので、それぞれの場の印象的なシーンだけが記憶に残り、それ以外は記憶から飛んでいました。でも、二回見ると、すごいです、鶴屋南北。わかっていましたが。何故そこに?というツッコミはいらないぐらい、そこに居合わせるべきキャラの羅列。物語の展開に欠くべからざる働きをしていました。悪太郎に、思わず送りたいグッジョブのサイン。もう、初見以上の集中力で見ていたかもしれません。

 ストーリーのご都合主義は、江戸歌舞伎の演目では当たり前のことです。でも、そこに緻密な流れがあり、登場人物の心理に納得がいくところが、南北の醍醐味でしょうか。結局は、普遍性のある人間心理をどれだけ劇中に投影できるか、ジャンルに関わらずの課題かもしれないと思いました。

 そして、主演のお二人の艶姿をあらためて、うっとりと鑑賞。そこに、権助の理由なき無頼ぶり、桜姫の無垢さが併せ持つ欲望、清玄の後悔と執心が伝わる演技力が加わっている奇跡は、今の仁左衛門さんと玉三郎さんだからこそですね。


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