2020/10『獣道一直線』

文字数 1,336文字

 2月の『往転』からは、劇場が閉められ、手元のチケットが払い戻しになっていきました。その後、演劇の上演が再開しても、観に行けるかどうか定かではないような気がして、なかなかチケットを購入する気持ちになれません。そして、いつのまにか秋、気が付けば秋、GO TOな秋…
 GO TOしました、劇場へ。
 この『獣道一直線』は「ねずみの三銃士」第4回企画公演で、生瀬勝久さん、池田成志さん、古田新太さんという強力で魅力的なキャスト。でも、チケット発売時は、買う気になれない時期でした。気が付けば売り切れで諦めていたら、直前に追加チケット販売のお知らせが飛び込んできました。
 GO TO トラベルだの、GO TO イートだのが叫ばれ出し、劇場の収容パーセンテージがアップしたおかげです。数か月ぶりのポチッでした。ちょっと緊張、ふぅ~。




 劇場は新生パルコ劇場です。見やすい座席、おしゃれなバー(この状況では宝の持ち腐れでしたが)。コロナ対策ルールにまごまごしながら入場し、マスクのまましのび笑いでの観劇だったので、帰宅してパンフレットを読みながら思い切り、思い出し大爆笑しました。別に爆笑喜劇ではないのですが。ブラックな題材、ひねりの利いた倒錯的な設定、時間と空間を飛び交う展開で描かれるのは、結婚詐欺の女と騙された男たちの再現ドラマ作り。シニカルなラストまで一直線の、手練れのキャストによる息のあったお芝居は、生の舞台だからこそ感じられる勢いに満ちていて、幸せな時間でした。
 
 三銃士以外のキャストは、池谷のぶえさん、山本美月さん、宮藤官九郎さんです。池谷さんと、宮藤さんは、それぞれ別の舞台のチケットを取っていたのですが公演中止となって払い戻しの憂き目にあっていました。それで、この舞台で初めて生お芝居を観ることになりました。
 池谷さんは、登場シーンから魅了してくれました。池谷さん演じる苗田松子はサイコな犯罪者なのに、生々しい欲望をむき出しなはずなのに、どこかファンタジーなキャラクターに見えてきます。容姿が素晴らしすぎてファンタジーな山本美月さんを超えた、ファンタジーキャラです。かぐや姫?
 宮藤さんの役は再現ドラマを作るドキュメンタリー作家。こちらは、現実的、現世的で、その台詞にだんだんとイラっとさせられていきます。
 山本美月さんは、ドキュメンタリー作家の妊娠中の若く可愛い妻と、男たちの目に映る幻想の苗田松子。こちらは、その台詞にだんだん共感させられていきます。
 再現ドラマで騙された男たち演じる売れない役者たちを、三銃士の面々が演じました。生瀬さん、池田さん、古田さんが、次々と変わる再現シーンを何役もこなしながら演じてくれる贅沢さ、しかも生舞台、を堪能しました。それに対してがっぷり四つのお芝居をした池谷のぶえさんも素晴らしかったです。

 ポチっとして、本当に良かった。

 2020年の観劇は、もうチケットを取っていなかったのでこれでおしまいでした。年末からまた状況が悪くなり、またしばらくいろいろ我慢の日が、日本列島に続きましたね…


 作    宮藤官九郎
 演出   河原雅彦
 キャスト ⽣瀬勝久、池⽥成志、古⽥新太、⼭本美⽉、池⾕のぶえ、宮藤官九郎

 劇場:PARCO劇場




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