2020/2『往転』

文字数 771文字

 昨年の2月は、日本が未知のウイルスによる感染症に晒され始めた頃でした。今思えば、感染者数もまだまだわずかなものでしたが。

 ステイホームの号令が出る前に見た最後の舞台が、KAKUTA presents「Monkey Biz #1」『往転』(本多劇場)でした。まだ寒い日、開場までの時間を劇場の外で待っている時に、マスクって暖かいなと思った記憶があります。




 KAKUTAの舞台は初めてだったので、誰もお誘いせず一人で観て、さっさと帰宅。舞台の余韻を家まで持ち帰りました。長い、長い余韻のあるお芝居でした。
 事故を起こした長距離夜行バスに乗り合わせた登場人物の、それぞれのエピソードが、舞台上で時間軸や空間を移動しながら展開します。はじめは話を掌握しにくいのですが、それがおもしろさで、だんだん繋がりがわかって来ると、それぞれのエピソードに引き込まれていきます。構成の巧みさが、深い感動をさらに呼び起こしてくれました。作・演出は桑原裕子さん。すごい才能です。
 出演者は皆さん好演されていましたが、特に私の好きな峯村リエさんと相手役の入江雅人さんの話は今思い出してもウルウルきます。やさし過ぎて、哀しい二人でした。コメディセンスも抜群のお二人のやりとりは、さりげない日常的なおかしさを伴い、それが短い間にキャラクターの存在に厚みを感じさせる、そんな大人の演技が素晴らしかったです。一人観劇でしたが、後日、友人も観に行っていたことがわかり、二人で感動を共有できたのが、とても嬉しかったです。

 3月以降は手元のチケットを払い戻す日々。劇場が遠のきました。


 作・演出 桑原裕子
 キャスト 峯村リエ 入江雅人 / 小島聖 米村亮太朗
      異儀田夏葉 多田香織 置田浩紳 森崎健康 吉田紗也美
      長村航希 / 成清正紀 岡まゆみ

 劇場:本多劇場
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