2023/6 映画『探偵マーロウ』

文字数 1,213文字

 舞台作品ではなく、映画です。最近はTVで観ることが多い映画なのですが、この作品は、配信や放映がされるかどうか予測ができなくて…。近くで上映中だったのを幸いに行きました、映画館。アメリカの1930年代を舞台にした犯罪物の映画は古今たくさんありますが、私は、『L.A.コンフィデンシャル』が大好きです。キム・ベイシンガーが美しかった…。あの時代のカリフォルニアを舞台にした映画では、『チャイナタウン』もすごく良くて、ラストは本当にドキドキしました。犯罪物は、最後まで登場人物の本性が読めないので、演技に目を離せません。この時代のセットや衣装も素敵です。

 さて、そこで、本作『探偵マーロウ』です。大満足でした。平均年齢高めの配役でしたが、時代や役柄の雰囲気をたっぷり匂わせていました。主役のリーアム・ニーソンは、いつもの超人的アクションではなく、控えめどころかやられっぱなし的なのですが、やられても立ち上がるハードボイルド的タフガイぶり。快復の速さと何よりぶれない精神が、これが本当のタフガイ、と思わせてくれます。役者の個性か、なんだか実直なフィリップ・マーロウ。気障で皮肉で知性ひけらかし?な台詞も、リーアム・ニーソンの口からでると、実直に聞こえるのは、もはや人徳でしょうか。

 この時代を舞台にした映画にかかせない金髪美人には、ダイアン・クルーガーが扮しています。硬質さを感じさせる美女。その母親の往年の美人女優にジェシカ・ラング。アメリカの女優さんにはめずらしくナチュラルに老けています。それでもしっかり美人の面影と色気が出ていて、さすがです。あの美しかったキム・ベイシンガーが、リフトアップで生え際が後退し、ボトックスとフィリングで表情をなくし、なんだか変なおばさん役でB級コメディに出ていて悲しかったのを思い出しました。ナチュラルに年を重ねて、こんな役をやってくれてたら…、とか余計なことも思ってしまいます。そういえば、『サードパーソン』でリーアム・ニーソンの妻を演じていましたね。あの頃は、上手にきれいに老けてきているな、と思ったのですが…。話がそれました。

 とにかく、これは雰囲気を味わう映画です。インテリアも衣装も髪型もすてきだし、台詞回しも(英語は不得意ですが)、現代を舞台にした映画やドラマとは違う感じ。残念ながら、字幕はそこまで考慮されてなかったようで、ジェシカ・ラングの台詞に「イケオジ」なんて今時言葉をあてはめてました。そりゃないぜ、とスクリーンに突っ込みを入れたくなります。

 丁寧に作られた娯楽作品という趣の映画ですが、なかなか味わい深い人間関係を描いてもいます。それを解き明かすマーロウは、やはりタフガイというより知的な探偵。そして、実直で友情にも厚い。リーアム・ニーソン演じるフィリップ・マーロウは、歳を重ねて人間味が出て、やさしさがわかりやすくなっている感じです。心やさしいハードボイルド物でした。
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