2021/11『吉例顔見世大歌舞伎 第二部 一、寿曽我対面 二、連獅子』

文字数 1,430文字

 歌舞伎座の感染対策に合わせる動きに、かなり慣れました。入場も筋書購入もスムーズにできたので、良しっと、心でガッツポーズ。ロビーでも、お席でも友人との会話は謹まなければなりません。実は、これが一番辛い。筋書読めば、疑問を口にしたくなり、お芝居見れば感想を言いたくなります。これは誰もかれも同じようで、会話のさざ波は、歌舞伎座の従業員の方が、「飲食、会話は御控えください(というようなことが書かれてます)」の印籠ならぬプラカードを持って歩くそばで消えては現れしています。さざ波なのは、従来よりずっと小声で行われるからです。

 筋書を手にして、最初の疑問は、十一月の歌舞伎興行が吉例顔見世と題されるのは、何故?でした。筋書の最初の頁に書いてありました。江戸時代は、翌年の座組を披露する年中行事として十一月の興行を顔見世興行と称したのだそうです。その名称を復活させて、豪華な出演者でおくるのが、現代の吉例顔見世大歌舞伎、なるほど。

 さて、私の観た第二部は、最初が『寿曽我対面』。曽我狂言と言われる曽我兄弟の仇討ちを題材にした狂言の一つだそうです。赤穂浪士物ほどではないと思いますが、こちらも手を変え品を変え使われている題材のようです。今回のものは、華やかな衣装でずらりと並ぶ花形役者を目で楽しむ演目でした。The 歌舞伎、という華やかな舞台は、今年は鶴屋南北のドロドロ物しか見ていなかったので、ちょっと眩しかったです。

 そして、二つ目がお目当ての『連獅子』でした。仁左衛門さんと孫の千之助さんの『連獅子』を見るのは二回目で、前回は、千之助さんはまだ小学生だったような記憶があります。むむっ、こういう風に、役者を小さい頃から見てる、というと歌舞伎ファンぽいかも。こうして、襲名で名前が変わっても昔の名前で呼んだり、先代の話をしたりするようになるのでしょうか…。そこまでは、まだまだ遠いし、たぶん無理。

 つまらない話はやめて、舞台の感想を。前回は、千之助さんが可愛くて、小さい子が頑張ってるなぁ、というぐらいで、毛振りのシーンの記憶しか残っていません。でも、今回は、その前の獅子の親子の情愛を見せる連舞の部分が、心に残りました。親獅子の気持ちが、そのまま仁左衛門さんが孫を思う気持ちに思われて、ぐっと心にせまります。実は、舞踊演目は苦手なのですが、これは物語性がはっきりしていているので気持ちが伝わり面白かったです。
 仁左衛門さんが最高齢での連獅子をされるということで、毛振りが始まると、声を出せない歌舞伎座の中に拍手が響き、最後まで続くという、劇場を埋める一体感も素敵でした。






十世 坂東三津五郎七回忌追善狂言
一、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)

  工藤左衛門祐経  尾上菊五郎
  曽我五郎時致   坂東巳之助
  曽我十郎祐成   中村時蔵
  小林朝比奈    尾上松緑
  八幡三郎     坂東彦三郎
  梶原平次景高   坂東亀蔵
  化粧坂少将    中村梅枝
  秦野四郎     中村萬太郎
  近江小藤太    河原崎権十郎
  梶原平三景時   市川團蔵
  大磯の虎     中村雀右衛門
  鬼王新左衛門   市川左團次

  後見       坂東秀調

河竹黙阿弥 作
二、連獅子(れんじし)
  狂言師右近後に親獅子の精  片岡仁左衛門
  狂言師左近後に仔獅子の精  片岡千之助
  浄土僧専念         片岡門之助
  法華僧日門         片岡又五郎

歌舞伎座


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