嵐気 5

文字数 4,823文字


 言葉の無いアニョロとアティリオ…──2人を前にクロエの顔色が見る見るうちに蒼ざめていく。事の次第を伝えようと一拍を置いていたダオーリオが口を開こうとするのを片手で制し、クロエはアニョロとアティリオにもう1度質した。
アーティ兄さま(アティリオ)もヴェルガウソ子爵も、この(こと)、〝仕組んで〟いないのですね?」
 静かに頷く2人にクロエは重ねて訊く。
「では何故アロイジウスが危険な市中に1人で繰り出すことになるのです⁉」
 鋭い語調だった。その言にダオーリオが訝し気な顔を彼女に向けたが、結局は3人の会話の成り行きを見守って、慎重な表情を崩さなかった。
 アニョロとアティリオは、そんな()()()()()()ぞん()()()()()()()()()()()()()()()()クロエを叱ることも出来ず、ダオーリオを見て先を促さねばならない。ダオーリオは硬い表情のクロエをチラと見遣ってから(ようや)く続けることができた。
 ダオーリオの語ったアロイジウス捕縛の顛末とは次のようなものであった。

 今朝、アンダイエ市中で火事が起こっている。
 火元は市中でもやや(はずれ)と言える場所で、西方長官府が開かれてからは長官府に勤める若い下級官吏が下宿として使っている家の多い地区であったが、正確にはソニア・トザッティが母親と暮らす家──つまりアロイジウスの下宿先であった。
 どうも市中でこのことを知ったらしいアロイジウスは、正午を過ぎた頃には現場を訪れ、待ち受けていた長官府付きの警衛──市中警護の者──に拘束されたらしい。
 家主母娘の消息が未だ判っていない、という風聞を考え併せれば、知己である彼女らを心配し見に行ったのだろうか。が、それで何故、アロイジウスが長官府附きの警衛に拘束されたのかが解らない。

「──…西方軍でなく、マンドリーニの手下(てか)でもなく、〝警衛〟に拘束されたのだな?」
 アニョロは()()の所をいま一度ダオーリオに確認した。『警衛』は聖王朝各地の長官府に置かれた治安維持を担う部署で、軍に隷属しない文官の組織である。アンダイエ(西方長官府)であれば首席文官オリンド・ドメニコーニの指揮系統下にある。
「西方軍の獄舎に人が繋がれたという話は聞いてない」 ダオーリオは肯いた。「それに……そもそも聖王朝の軍が市中の火災に関して〝動く〟ことはない」

 それにはアニョロも肯いた。
 市中の治安の維持は文官の職掌と定められており、余程のことが起こらぬ限り軍を市中に入れることは許されていない。……だが、そうなるとなぜドメニコーニの指揮下にある警衛がアロイジウスを捕えたのか。ドメニコーニは既にルーベン・ミケリーノと結んでいるのか? 疑念がアニョロの脳裏に(よぎ)った。

 そのアニョロとダオーリオに、アティリオが訊いた。
「では、アロイジウスは少なくともマンドリーニの手中に落ちてはいないと……そう考えてよいな?」
 それでアニョロは改めてダオーリオを見た。ダオーリオも慎重に頷いて返した。
「マンドリーニの軍兵(ぐんびょう)は西方軍の営舎に、ルーベン・ミケリーノも主だった幕僚と共に長官府内の左翼館に入った」

 聖王朝各地の長官府内における各部署の在所は、文官は長官宮の正殿から見て右手に当たる右翼館に、武官は左翼館に入るのが慣わしであった。かつてのアンダイエ一族の居館は、聖王朝の政庁の基本的な造りに必ずしも沿ってはいなかったが、その慣例に則り『右翼館』と『左翼館』と呼んでいる。
 ルーベン・ミケリーノが元老院から授けられた官職は『監察官』であり、言うまでもなくその正式な身分は文官である。文官であれば文官を束ねるドメニコーニの在る右翼館に入るのが当然であった。
 が、そういう中でルーベン・ミケリーノは左翼館に入っている。これはつまり、首席文官ドメニコーニはルーベン・ミケリーノを寄せ付けなかった、とも見える……。アニョロは、増々訳の解らぬ思いに捕らわれた。

 そんなアニョロの耳がアティリオの声を拾った。
〝あの男〟(ルーベン・ミケリーノ)の手に落ちたのでなければまだ救うことは出来る」 面を上げたアニョロにアティリオが言う。「……それは私とアベルとでやろう」
 アニョロはアティリオの目を見た。
「しかし……、アロイジウスのことでマルティの家の者が危険に曝されるのは…──」
 アティリオはそれを制して続けた。
「──…西方軍と〝渡りを付ける〟のは我らルージューには出来ぬこと。それは貴殿の役回りだ。一方で我ら(ルージュー)はコレオーニの商館の情報と人手(組織)を使える。議論の余地はないな」
 言って側のクロエを指し、
手下(てか)を1人付けよう。……(もっと)も、〝目付〟という側面もあるがね」
 彼女(クロエ)がアティリオの顔を見返した。その表情に戸惑いの色が浮かんだのは一瞬だった。
 クロエは言葉の無いアニョロの横顔を一瞥すると、一歩を踏み出して言った。
「お任せを」


 テオドージオ・ダオーリオはアティリオ・マルティが部屋を辞すと、後に残ったアニョロを見、その側のクロエに向き直って口を開いた。
「婚前に何とも大変な〝お役目〟を果たすことになりましたな」
 それでクロエとアニョロは、〝アティリオの従者〟という触れ込みの彼女の素性がダオーリオに知れたことを理解した。
「…………」
 クロエが目を伏せた。しかもダオーリオは、この婚約(はなし)が〝破約〟となったことを知らない。何と応えるべきか……。

 ──と、
「…──テオドージオ卿、このこと他言無用に願いたい。婚儀は未だなれど心は早や妻……私の左隣を守る(※)と言ってきかない」
 アニョロはダオーリオにそう応えた。そのアニョロの〝しゃあしゃあ〟とした物言いに、クロエの面が撥ね上がる。そんなクロエに、アニョロは〝如何にもわかっている〟と優しく微笑んで見せ、頷いて返したのだった。

 事実を伝えることを厭う方便にしては、相当に出来の悪い言だった。
 クロエは表立っては微笑んで見せ、はにかむ様に頷いて返した。そのしおらしい表情(かお)の下で──、

 よくもそんな……っ! いいわ、憶えてらっしゃい。〝言葉には責任が伴う〟ということを‼

 ──ふつふつと湧いた怒気を冷静に処しながら彼女は決めた。例えアニョロのその言が方便であるとして、確かに彼は口にしたのだ。なればこの言の責任は取ってもらう、と。
 そう思うことで、クロエはこの方便を受け容れることにした。

(※グウィディルンの世界では〝魔や凶事から《心の臓》のある左隣を守る〟のは妻の役目とされる)



 その頃──。
 捕らえられたアロイジウスは、市中に置かれている警衛の詰所の獄の中に留め置かれていた。腰のグラディウス(小剣)は取り上げられ、両の手は枷こそ嵌められてはいなかったが固く紐で縛られている。
 暗い獄の中で、アロイジウスは悔いていた。
 迂闊だった。ルーベン・ミケリーノの入ったアンダイエは、すでに〝敵地〟も同然であったのだ。にも(かか)わらず、ソニアの消息が気になったが最後、足を向けた処がこの(ざま)である。
 アロイジウスは半ば以上、自らの命運が尽きた様だと覚悟をしていた。

 そんなアロイジウスは、入口の扉の開く気配を感じ、そちらへと目を遣った。
 錠の回る金属(かね)の音を聴いた。扉が開くと、獄吏の男の後に人影が2つある。1人は暗い色のローブを纏いフードを目深に被っていた。然程大柄ではない。その後から入ってきた人影はソニア・トザッティのものだった。
 彼女の目を見た時、アロイジウスは心の中で苦い思いに嘆息した。


「アロイジウス…──」
 ソニアは〝アーロイ〟と呼ばずにそう呼び掛けてきた。
「あなたが聖王朝とタルデリさま(西方長官)を裏切ってルージューを手引きしたと聞いたわ……」
「…………」
 アロイジウスは言葉を呑み込み掛けた。
 ソニアの云うことは身に覚えの無いことであったが、()()が〝事実〟とされている事は承知している。状況から自身の潔白を訴える事に意味があると思えず、胸中に〝諦め〟が満ちていくのを確かに感じた……。
 だがアロイジウスは、寸でのところでその思いを改めた。ここで諦める事は自分を含め誰に対しても投げ遣りで不誠実だと、そう思い至ったからで、だから言えた。
「それは違う」 と──。
 それから改めて面を上げ正面からソニアの目を見て続けた。「タルデリ伯を討った賊を手引きしたのは俺じゃない」

 その態度と物言いが〝居直り〟と感じたのか……或いは〝そう思いたかった〟からか…──。ソニアの方はそんなアロイジウスに激昂した。
「うそっ! この期に及んでまだそんなことをっ……語るに落ちるとはこのことね! 見損なったわっ」
 叫ぶようにそう言ったソニアは肩で息を吐くと、傍らに立つ獄吏へと歩み寄った。そしてその手の警棒を()(さら)う様に掴み取る。獄吏は酷薄そうな表情(かお)をわずかに綻ばせ、警棒を放した。
 ソニアは警棒を大きく振りかぶると、精一杯の力を揮ってアロイジウスに打ち付けた。
 力任せに打ち据えてくる警棒をアロイジウスは避けずに引き受けた。
 薄暗い獄の中に、少しの間、鈍い音が響く。
 女性(おんな)の非力とはいえ一心不乱に打ってくる棒打の全てを、アロイジウスは避けも防ぎもせず受けた。
 男手の重い打撃ではなくとも、それなりに衝撃が奔る。アロイジウスは歯を喰い縛り、ただ黙ってされるがままに耐えた。アロイジウスのトゥニカ(短衣)から覗く鍛えられた身体に、みるみると痣が拡がっていった。
 それ程経たずに、棒越しに伝わってくる〝嫌な〟感触にソニアは耐えられなくなった。警棒が手から離れ、獄の石床の上に乾いた音を立てて転がった。
「……どうして……どうして黙って打たれるのっ? それは後ろめたい思いがあるからでしょ⁉」
 肩で息を整えて、ソニアが(なじ)る様に言った。自分で発したその問いの答えは、半ば〝決めつけて〟しまっている。
 アロイジウスが、切った額から流れた血で汚れた顔で、ゆっくりとソニアを向いて応えた。

「違う……」 その声は流石にくぐもっていた。
「──…エレウテリオ(ウテロ)を……救えなかったことに……後悔は……ある……だけど……、後ろめたい……行いは、誓って、していない」
 ふんと、ソニアは鼻で嗤った。
「強情ね……。でも罪を認めるのでなければ、こうまで無抵抗に打たれるものかしら?」
 精一杯に作った露悪的な表情を向けるソニアに、アロイジウスは応えた。
「君に……同情した」
「……⁉」 ソニアの顔の中に、険しさと怪訝さとが浮かぶ。
 アロイジウスは〝これが最後なのだ〟との思いから、これまで良くしてくれた娘に淡々と言った。
「〝大事な人〟を奪われたことの苦しさは……解る……。こんな状況、だ……。どうせ助からないなら……君の恨みの幾何(いくばく)かを引き受けて……打たれてやってもいいかな、と……そう思った……」

 ルーベン・ミケリーノの手下に捕らえられたと思っているアロイジウスとしては、最早助かる術はないと覚悟している。どうせ助からぬ命なら、ソニアの怒りの矛先にこの身体を()れてやってもよいと…──彼女を襲った理不尽さ、行き場の無い思いを、せめてこの身で引き受けてやろうと……、そう思ったからだった。そしてそれは、自らの身に起きた奇禍(こと)に重なっていた。
 そうして死んだなら、〝彼方の世〟でアニタに逢ったとき、まだ顔向けが出来るのではと考えたのだ。

 が……、それでも〝ロルバッハ〟が騙し討ちを手引きしたというのを認めることは出来なかった。
 アロイジウスは、はっきりと付け加えた。

「…──けど……、打たれてはやれても……〝身に覚えの無い行い〟は……認められない」
 それにソニアは言葉がつまった。いよいよ肩を震わせた彼女は、結局、小さくこう叫ぶので精一杯だった。
「馬鹿にして……っ」
「そうだね……確かに、傲慢だったかも知れない……」
 泣きそうなのを必死に堪えているソニアに、アロイジウスは謝った。
「ごめん……」


 すると、意識がすぅと失われていった。

 ──魔法、か……。

 急速に失われていく意識の欠片が〝そういう〟理解をしたということは、アロイジウスにもわかった。程なく何も感じなくなった。
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登場人物紹介

■エリベルト・マリアニ(12 →19 ⇒22歳/♂)


竜騎見習い →聖王朝宮中竜騎(アレシオ・リーノ近習衆筆頭)




本作の主人公の1人。蒼い瞳、「麻くず」の色の髪トウヘッド。幼少時より〝物静かな〟顔立ちながら、その瞳に怜悧さを宿していたという。成人後は精悍さが強調されるのはお約束。もちろん均整のとれた長身。


生家は聖王朝の武門プレシナ大公家に代々使える宮中竜騎の家柄で、父リスピオは大公麾下の〈プレシナ大隊〉にあって筆頭の竜騎長である。


アレシオ・リーノの竜騎見習いへの志願の折での〝とある行い〟がアレシオの目に留まり、取り立てられることとなる。以後、彼の半身とも言うべき存在となった。




主人公の1人アロイジウス・ロルバッハの竜騎の師であり、そのアロイジウスの姉ユリアを妻に迎えた。


そのユリアを巡り権門マンドリーニ公の勘気を被り、第1部の後半では近習衆を解任され閑職に左遷の憂き目となっているが、アレシオ・リーノからの信頼は些かも損なわれていない模様。




<メイキングこぼれ話>


モデルは『銀河英雄伝説』のキルヒアイスですよ、それは。(笑)


物語の幕開けの視点の主人公なのに、以降、第1部ではほとんど出番がありません。(汗) 失敗ですねぃ。


でも物語全体ではアレシオ・リーノの片腕として活躍することが約束されているので〝問題無しノープロブレム〟なのですよ!

■アレシオ・リーノ・プレシナ(11 →18 ⇒21歳/♂)


竜騎見習い →プレシナ第2大隊第3中隊長 ⇒第2大隊次席指揮官(プレシナ大公家嫡子)




本作の主人公の1人で、聖王朝三公の1つ、武門のプレシナ大公家の嫡子。黒曜石の瞳、射干玉ぬばたまの髪の美丈夫──女性と見紛う美貌ながら溢れる才気、命令することになれた物言い、美しきモノへの憧憬、貴族たる気概と魂……、そして前線に兵と共に在ることを厭わぬ剛健、という真の武人。(盛り過ぎw)




自らの竜騎見習いの志願の折に出会ったエリベルト・マリアニを〝竹馬の友〟として側に置き、緩慢な衰退の中にある聖王朝にあって、火薬を始めとする科学技術を利用した軍制への改革を推し進めている。


かつては元老院派の論客ランプニャーニ宮中伯に学び武威に慎重な姿勢を見せていた。


なお、自身の傲慢を戒めるためか、幼き日に施しをした〝へロット下層民の娘〟から突き返された小金貨をペンダントとして常に身に付けている。




<メイキングこぼれ話>


当然こちらはラインハルトと思いきや、黒髪の美しい貴公子。現在なら『キングダム』の嬴政な感じでしょうか?


本作全般の主人公。やはり真価は第2部以降……ということに。


ちょっとだけネタバレな感じで言うと、〝ジブリ作品『風立ちぬ』の主人公は自分の理想的な美にしか関心のない残酷な男〟というキャラ分析を読んでインスパイアされてみました。そういう複雑なキャラを描いてみたいです。(笑)

■アロイジウス・ロルバッハ(8 →14 ⇒17歳/♂)


戦利奴隷 →竜騎見習い ⇒独立竜騎(西方軍長官府附き武官/ロルバッハ家当主)




本作の主人公の1人で最年少の少年竜騎。鳶色の目と同じ色の巻き毛の髪。頭の回転が速く弁も立つ。


元はアンダイエの工房職人の子だったが、アンダイエが聖王朝に攻め落とされたことにより姉ユリア共々戦利奴隷となった。奴隷市でロルバッハ砦の独立竜騎ファリエロに救われたことで姉と共にロルバッハの養子となり竜騎となる。




竜騎として養父とエリベルト・マリアニの薫陶を受け、優れた若武者であると共に〝知識の間〟ではアニョロ・ヴェルガウソと同窓という文武両道の者である。


その人物像の最大の特徴は〝誠実な為人ひととなり〟で、理よりも情で行動する。


アニョロとはその妹アニタと共に兄妹同然に育つ。そのアニタとは互いに憎からず思う間柄であるが……。




<メイキングこぼれ話>


いたって〝普通の〟主人公です。多くを語る必要はないという……。(笑)


モデルは安彦良和の『アリオン』の主人公アリオン。


……でも、ちょっと不幸な出来事が続いてますね。ごめんよ、アーロイ。

■アニョロ・ウィレンテ・ヴェルガウソ(18 ⇒21歳/♂)


竜騎見習い ⇒アンダイエ商館長代理(ヴェルガウソ子爵家当主)




本作の主人公の1人。17歳で父を流行り病で失い子爵家を相続した。ヴェルガウソ家はタルデリ宮中伯家を補佐する官吏貴族の家で、画に描いたような中級貴族の家柄。貴族社会の体面は立てるが個人にへつらうということをしない性格で、少々扱いにくい人物。


一応、竜騎見習いの資格はある(師は友人でもあるエリベルト・マリアニ……)が自他共に認める文筆の人で、聖王朝の学術機関〝知識の間〟で学ぶ学徒である。知恵者を気取っている。


アロイジウス・ロルバッハの身元引受人を父から引き継ぎ、彼とは兄弟のような仲。アニタという名の妹が1人いる。




主家の主ポンペオ・タルデリの西方長官着任に伴いルージューの地に赴任、アンダイエ商館の館長代理として聖王朝西方の情報収集を取仕切っている。そういった〝裏向き〟の活動の中でルージューの姫君クロエと出会い、見初めることとなる。


左利き。




<メイキングこぼれ話>


立ち位置的には『アルスラーン戦記』のナルサス(当然ダリューンはエリベルト)。……なのだが、キャラの造形は『鋼の錬金術師』のエドワード・エルリックな感じ。気の措けない〝身内〟に見せる気さくさと、貴族社会の中での達観した立居振舞とのギャップが魅力……に描きたいものです。

■ジョスタン・エウラリオ・マルティ・ポーロ(20 ⇒23歳/♂)


ルージュー辺境伯マルティ家 次男




本作の主人公の1人。物語の序盤から西のカルデラの側に居る〝いま一人の〟貴公子。(……なのだが、アレシオ・リーノ同様、第1部では余り目立っていない。)


西のカルデラの地に6つの邦を束ねるルージュー辺境伯を世襲するマルティ家の御曹司で、多くの兄弟親族がいる。


聖王朝に先駆けて火薬主体の軍制を模索するなど天賦の〝戦の才〟を持つも、一族に関わる諸豪族の干渉に嫌気がさしており、すぐ下の異母弟アティリオと図って〝出来た弟〟と〝うつけの兄〟をそれぞれに演じ、周囲の目を欺きつつ韜晦していた。


〝果断の人〟の二つ名を持つ。




その二つ名の通りの〝動くべき時の果断さ〟と〝動くべからざるそうでない時の泰然さ〟を合わせ持ち、〝過去に縛られない柔軟さ〟と〝こうと決めたら梃子でも動かぬ頑固さ〟がある。


欠点は、大邦ルージューの御曹司として育ったためか他人の風下に立つことに慣れておらず、侮られることを嫌うこと。が、傲慢であるかと言えばそういうばかりでもない。


政略で名門ユレ家の姫オリアンヌを妻に迎えたが、夫婦仲はたいへんに睦まじい様子。


プレシナ大公家の嫡男アレシオ・リーノを高く評価し、警戒してもいる。




<メイキングこぼれ話>


アレシオ・リーノの好敵手ライバル。精悍で豪快な兄貴系。イメージは『十二国記』の延王 小松尚隆かな。


〝戦バカ〟を触れ回っていますが実は深慮の人のよう。


でも人間としては判りやすく、裏表のないナイスガイを目指します。

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