微風 2

文字数 4,933文字


 アンダイエの西方長官府──。
 そのホールで、文武官らを前に西方長官たるタルデリは自説を論じ始めた。
「──ルージュー六邦も元々は帝国期の古王朝より爵位を与えられし領邦……形の上では聖王朝の領地じゃ。そこが付け目……」
「…………」
「六邦全域から5千の民の税を免じよう。替わりに西方長官府の要員として同じ数の民をルージューより借り受ける。その者らにはこちらで()扶持(ぶち)も与えよう」
「それでどうするのです?」
 先に長官に声を上げた次席文官が先を促した。
「飛行石を掘らせる」
 それを聞いて一同はあんぐりと口を開けてしまった。
「聖王朝の領地において西方長官府が雇う者どもが飛行石を掘るのだ。ライムンドに文句はつけられまい。徴税請負人を間に置くより遥かに面倒がないわ。どれ程の飛行石を産したか長官府で把握できる」

(それが本当の狙い、か……)
 アロイジウスはそれを聞いて得心した。税額を倍にすると脅して、つまりは飛行石の採掘を自らが行いたいわけだ。些細な賄賂程度では飽き足らなくなった、というわけである。すべてはマルティ家の莫大な富を見せ付けられたせいか……。

 西方長官のその言に、配下の文武官はじめ一同は言葉なく押し黙っている。
 (もと)より、()()が出来ればルージュー一族にこれほどの力が集まるようなことはなかった。
 出来なかったからこそ、今日のカルデラの地と西方長官府の関係がある。

「無理な策と申すか!」
 一同の目が曇ったことでタルデリは怒りを顕にした。
「卿らはいったい何を怖れる? カルデラを含む西方を支配するのは聖王朝であり、その代理人たるこの西方長官ぞ。辺境伯(ライムンド)には税の徴収を任せておるだけに過ぎぬではないか。()()の土地を()()気侭(きまま)にして何が悪い! 任期有るうちはわしがこの西方の主である──」
 思わず漏れた〝本音〟をさすがに聞き捨てにはできず、先の次席文官が面を上げようとした。が、それを脇の首席文官が腕を掴み首を振って止めた。
「──卿らがそのようなことだからライムンドごときが付け上がる。誰かがやらねばカルデラの地はいずれ聖王朝の支配を離れるわ! それでも構わぬと言うか!」
「決して……」
 その恫喝には一同が不動の姿勢となった。正論ではある。が、現状の力の差を考えれば如何ともし難い。何よりもこれまで私腹を肥やしてきたタルデリの口から出た言葉だけに、真っ直ぐ腑に落ちていかないのも事実である。

「明日にでも税額を倍に増やすとルージューに通達いたせ」
 タルデリは文官の首席に言い渡した。
「返答の期限はひと月。もし聞き入れぬとあれば、西方長官府自らが飛行石と金銀の採掘を行うと、そう伝えよ。それも拒めば已むを得ぬ…──」

「──お待ちください」
 このときになって、首席武官であるペナーティが声を上げた。
「それには是非とも1年の猶予を頂きたい」
「1年待てばどうなる?」
「ここで戦となれば我が軍は必ず敗退いたします。ルージューの軍船は中小といえど250隻。翼獣は300騎を越えましょう。対して我が軍(西方軍)は70隻の船と飛竜200騎余り。立ち向かえる相手ではありません。いかに閣下の言に道理が有ろうと、理と戦の趨勢は別物にござります」
「勝たずともよいのだ。3ヶ月でシラクイラより来援が駆け付けてこよう」
「その前に我ら(ことごと)く討ち死にいたします。2ヶ月と持ち堪えられますまい」
「何を弱気な…──我らには聖王陛下の賜れた〈ハウルセク〉があるではないか。臆するのも大概にせい!」
「それでも数が足りませぬ。戦にはすべからく準備というものがございます。小競合いならまだしも、〝税を倍にする〟〝領主の権益を取り上げる〟などと要求いたせば必ず大戦となります。大戦をするにはまだまだ準備が足りませぬ。1年あればシラクイラ(中央)と連携し──…」
「…──それはならぬ!」
 タルデリはペナーティを遮った。

「この事業は中央で主導するのでなく西方長官であるわしが始めねばならぬ。緒戦は我ら西方軍が戦うのじゃ」
 その明け透けな言葉に皆が黙った。なるほど、甘い汁は自分が吸わねば意味がないということか……。ペナーティだけでなく居並ぶ文武官が溜息を飲み込む。
「それで、1年あれば戦えるのか?」
「少なくとも半年程度は存分にやってみせれましょう……なれど──」
 職務に対する責任感からなおも言い募ろうとするペナーティだったが、タルデリは聞いては居なかった。
「それだけあれば十分じゃ。シラクイラから我が門閥が徒党を組んで駆け付けて参ろう」
 タルデリは思案顔となり、
「1年か……。それならばわしの任期も十分残っておる計算じゃ」
 じっと考えを纏めた。周囲の者は気が気でない。

「相わかった」
 タルデリはやがてペナーティに頷いた。
「それが武官の総意であれば従おう。このポンペオ・タルデリ、戦については得手ではないでな」
 この言葉で、話の行方をそれまで固唾を飲んで見守っていた西域諸豪族の長らも、大きく安堵する。
「それで……」
 タルデリは首席文官を向いた。
「敵の様子は引き続き探らねばなるまい。どうすればよい?」
「頻繁にカルデラを訪れるしかありますまい。こっそりと潜れば逆に不信を抱かれます」
「ではヴェルガウソの役目じゃな。彼奴(あやつ)であればルージューにも信用されておる」
 首席文官とペナーティは、〝御意〟とばかりに頭を下げた。
 と、タルデリが何かを思い付いたというふうに表情を変えた。
「そうじゃ……ヴェルガウソの妹はマルティの三男と〝(ねんご)ろ〟だったの……」
 アロイジウスの耳が、タルデリがこう言ったのを拾う。
()れて()る、というのはどうか」
 さすがに耳を疑った首席文官が改めて訊き直した。
「呉れて遣る、とは……」
「婚姻を結ばせる。このわしが言えばライムンドも厭と申すまい。元々好き合うておるのだろう? そうなれば面倒もない。商館とルージュー城との行き来も当たり前のこと。ベッドの妹を通じて敵軍の陣立ても引き出せるやもしれぬ」
 下卑た笑いを浮かべるタルデリに、思わず拳を握ったアロイジウスは、一歩を踏み出すより前にそれを同僚の武官に止められた。
「なんと良策ではないか」
 一同が呆れる中、当のタルデリだけが自分の考えに酔ったふうに続ける。
「ライムンドとて不足はあるまい。ヴェルガウソ子爵家は代々我がタルデリ宮中伯家を輔佐する家柄。西方蛮族との戦いに明け暮れて得た辺境の家などとは違い本物の貴族である。是非にもとライムンドの方から頼んで来よう」
 追従(ついしょう)の笑いが起こるまでには、一拍も二拍も間があった。
「ヴェルガウソに手紙を出さねばな。うむ、それがよい。頃合いを見てルージューに使いを遣わそう。これで敵方にも油断ができる。その間に我らは戦の用意をいたせばよい」

 アロイジウスは、怒りがふつふつと湧いてくるのを感じつつ、ヴェルガウソの妹アニタを思い遣った。仮に万が一、マルティ家の三男アティリオとの婚儀が成ったとして──それを考えたくない自分がいたことは、この際置いておき…──、開戦となれば、彼女はいったいどうなるであろう。

 そんなアロイジウスの憤りを余所に、西方長官府での会合は終わった。
 後に残された文武の官は、皆一様に疲れた表情で退出する主の背を見送った。



「呆れたか?」
 人の()けたホールから自分の執務室に場所を移し、ペナーティはアロイジウスに訊いた。
「それは……」
 未だ怒りの治まらぬアロイジウスがすぐには言葉を纏められないようなので、ペナーティは続けた。
「お前はシラクイラ(中央本島)で育ったからな。 ……中央であればあのような貴族の醜態を見ることはなかったろうが、ひと(たび)地方に下ればあんなものだ」
 アロイジウスは、自分の良く知る女性が本人の与り知らぬところで、まるでモノか何かのように語られる現実に嫌悪感を覚えた。少なくとも彼の知るシラクイラの貴族の大半は、女性をそのように扱いはしない。
 一方ペナーティは、シラクイラから離れた地方で竜騎見習いとなり、そのまま竜騎として、武官として軍団長や地方長官に仕えてきた。そんな彼には見慣れた光景である。

 アロイジウスは頭を振ると、改めて上司を向いて低く訊いた。
「本当にあんな理由で戦が始まるのですか?」
「そういうこともある」 ペナーティは苦み走った声で答えた。「……むろん、それが全てではないが」
「何だか……遣り切れないですね」
 書類に目を通す合い間に視界の端に捉えた若者のその表情は、ペナーティが10年も前に失くしたそれだった。ペナーティは何でもないことのような口調でアロイジウスに言った。
「卿にはカプレントの商館へと飛んでもらおうと思う」
「商館へ……」 アロイジウスは上司に慎重な視線を向けた。「それはアニョロ・ヴェルガウソを訪ねよ、ということでしょうか?」
「そうだ。今日ここで見聞きしたこと全てを、あの〝知恵者〟を気取る学徒殿に伝えてくれ」
 アロイジウスは、この状況で生粋の武官であるペナーティがアニョロを頼るのが不思議に思えた。これまでの様子からも、2人の仲が良好とは思えなかった。
「随分と曖昧な指示じゃないですか」
 アロイジウスにそう訊かれ、ペナーティは執務卓の上に書類を放って言った。
「私が細かく指示が出来るのは戦支度と実戦での采配だけだ。こういう用向きであれば適任の者に任せた方が正解だろう」

 ペナーティは、あの〝知恵の回る子爵〟であれば何か必ず手を打つ、と信じている。それは人としての友誼の有無とは別である。能力と気概を持つと自認すれば〝ことを為す〟のが貴族であり、あの男にはそのどちらもが備わっている。

「……戦を()()()()()()()有用な商館長代理の指示…──」
 先回りをしてアロイジウスは口を開いたが、自分のその言葉にすぐ表現を改め言い直した。
「──…館長代理の〝見立て〟を聞いてくればよいわけですね」
 ペナーティの方がアニョロよりも年長であり、アロイジウスにとっては直属の上司である。
 当のペナーティは、そんなアロイジウスに構わずに応える。
「いや、そうではない。アンダイエの状況を伝えるだけでよい」

 西方長官(タルデリ)の言葉と西方長官府の状況が伝われば、あの男(ヴェルガウソ)は考え始める。
 しかし、商館にある彼と長官府附きの文武官との間で〝互いの考えを()り合わせる〟のは手間であり、賢いやり方とは思えなかった。互いに任地を離れられず円滑な連携を望めない。
 であればいっそ連携はせぬ方がよい。そうペナーティは判断した。
 互いの足並みが制約となることは無駄だし、非戦の為に連携した事実がタルデリの耳に入れば厄介だ。全てが水泡に帰すことになる。

「伝えれば、後はあちらで勝手に動くだろう。卿もその後は此処(ここ)に戻ってくる必要はない。ヴェルガウソの意を受けるなり、自身で考えるなりして……シラクイラへ渡れ」
「シラクイラへ……」
「〝表向き〟は兵船確保のため、ということにしておく。本国の動向を把握し味方となる勢力を探れ。〝裏向き〟の報告は商館にだけでよい」
 言って、ペナーティはサインを(したた)めたばかりの書類を差し出した。
 アロイジウスはそれを受け取ると、〝何故自分に?〟と訊きたくなったのを押し殺して頷いた。
「わかりました」
 自分の経歴と能力を最も客観的に評価してくれているのは、目下のところペナーティだった。


「ああ…──」
 執務室を辞そうと扉を向いたアロイジウスに、ペナーティは言った。
「商館を訪ねる際にはアニタ嬢への贈物と()()()()()()を忘れるな」
 アロイジウスは、むしろ揶揄するふうでもないその冷静な声音に、(たちま)ち情けない表情(かお)になった。
 アティリオとの賭けで約束した通り婚礼の日の夜会でアニタにダンスを申し込んだアロイジウスは、前夜に出会った謎の女性と同じ顔で婚礼の席に表れたクロエ・マルティに意識がいってしまい、結果は散々なものとなった。〝シラクイラ帰りの竜騎〟の面目は地に落ちることになり、その後、仲間内で散々に揶揄われることとなった。
 むろんアニタの機嫌も大いに損ねたのだが、それも大いに気になっている……。

 アロイジウスはゆっくりと振り向くと、ペナーティは次の書類に目を通していた。

「はい……」
 アロイジウスはそれだけ答えると執務室を後にした。
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登場人物紹介

■エリベルト・マリアニ(12 →19 ⇒22歳/♂)


竜騎見習い →聖王朝宮中竜騎(アレシオ・リーノ近習衆筆頭)




本作の主人公の1人。蒼い瞳、「麻くず」の色の髪トウヘッド。幼少時より〝物静かな〟顔立ちながら、その瞳に怜悧さを宿していたという。成人後は精悍さが強調されるのはお約束。もちろん均整のとれた長身。


生家は聖王朝の武門プレシナ大公家に代々使える宮中竜騎の家柄で、父リスピオは大公麾下の〈プレシナ大隊〉にあって筆頭の竜騎長である。


アレシオ・リーノの竜騎見習いへの志願の折での〝とある行い〟がアレシオの目に留まり、取り立てられることとなる。以後、彼の半身とも言うべき存在となった。




主人公の1人アロイジウス・ロルバッハの竜騎の師であり、そのアロイジウスの姉ユリアを妻に迎えた。


そのユリアを巡り権門マンドリーニ公の勘気を被り、第1部の後半では近習衆を解任され閑職に左遷の憂き目となっているが、アレシオ・リーノからの信頼は些かも損なわれていない模様。




<メイキングこぼれ話>


モデルは『銀河英雄伝説』のキルヒアイスですよ、それは。(笑)


物語の幕開けの視点の主人公なのに、以降、第1部ではほとんど出番がありません。(汗) 失敗ですねぃ。


でも物語全体ではアレシオ・リーノの片腕として活躍することが約束されているので〝問題無しノープロブレム〟なのですよ!

■アレシオ・リーノ・プレシナ(11 →18 ⇒21歳/♂)


竜騎見習い →プレシナ第2大隊第3中隊長 ⇒第2大隊次席指揮官(プレシナ大公家嫡子)




本作の主人公の1人で、聖王朝三公の1つ、武門のプレシナ大公家の嫡子。黒曜石の瞳、射干玉ぬばたまの髪の美丈夫──女性と見紛う美貌ながら溢れる才気、命令することになれた物言い、美しきモノへの憧憬、貴族たる気概と魂……、そして前線に兵と共に在ることを厭わぬ剛健、という真の武人。(盛り過ぎw)




自らの竜騎見習いの志願の折に出会ったエリベルト・マリアニを〝竹馬の友〟として側に置き、緩慢な衰退の中にある聖王朝にあって、火薬を始めとする科学技術を利用した軍制への改革を推し進めている。


かつては元老院派の論客ランプニャーニ宮中伯に学び武威に慎重な姿勢を見せていた。


なお、自身の傲慢を戒めるためか、幼き日に施しをした〝へロット下層民の娘〟から突き返された小金貨をペンダントとして常に身に付けている。




<メイキングこぼれ話>


当然こちらはラインハルトと思いきや、黒髪の美しい貴公子。現在なら『キングダム』の嬴政な感じでしょうか?


本作全般の主人公。やはり真価は第2部以降……ということに。


ちょっとだけネタバレな感じで言うと、〝ジブリ作品『風立ちぬ』の主人公は自分の理想的な美にしか関心のない残酷な男〟というキャラ分析を読んでインスパイアされてみました。そういう複雑なキャラを描いてみたいです。(笑)

■アロイジウス・ロルバッハ(8 →14 ⇒17歳/♂)


戦利奴隷 →竜騎見習い ⇒独立竜騎(西方軍長官府附き武官/ロルバッハ家当主)




本作の主人公の1人で最年少の少年竜騎。鳶色の目と同じ色の巻き毛の髪。頭の回転が速く弁も立つ。


元はアンダイエの工房職人の子だったが、アンダイエが聖王朝に攻め落とされたことにより姉ユリア共々戦利奴隷となった。奴隷市でロルバッハ砦の独立竜騎ファリエロに救われたことで姉と共にロルバッハの養子となり竜騎となる。




竜騎として養父とエリベルト・マリアニの薫陶を受け、優れた若武者であると共に〝知識の間〟ではアニョロ・ヴェルガウソと同窓という文武両道の者である。


その人物像の最大の特徴は〝誠実な為人ひととなり〟で、理よりも情で行動する。


アニョロとはその妹アニタと共に兄妹同然に育つ。そのアニタとは互いに憎からず思う間柄であるが……。




<メイキングこぼれ話>


いたって〝普通の〟主人公です。多くを語る必要はないという……。(笑)


モデルは安彦良和の『アリオン』の主人公アリオン。


……でも、ちょっと不幸な出来事が続いてますね。ごめんよ、アーロイ。

■アニョロ・ウィレンテ・ヴェルガウソ(18 ⇒21歳/♂)


竜騎見習い ⇒アンダイエ商館長代理(ヴェルガウソ子爵家当主)




本作の主人公の1人。17歳で父を流行り病で失い子爵家を相続した。ヴェルガウソ家はタルデリ宮中伯家を補佐する官吏貴族の家で、画に描いたような中級貴族の家柄。貴族社会の体面は立てるが個人にへつらうということをしない性格で、少々扱いにくい人物。


一応、竜騎見習いの資格はある(師は友人でもあるエリベルト・マリアニ……)が自他共に認める文筆の人で、聖王朝の学術機関〝知識の間〟で学ぶ学徒である。知恵者を気取っている。


アロイジウス・ロルバッハの身元引受人を父から引き継ぎ、彼とは兄弟のような仲。アニタという名の妹が1人いる。




主家の主ポンペオ・タルデリの西方長官着任に伴いルージューの地に赴任、アンダイエ商館の館長代理として聖王朝西方の情報収集を取仕切っている。そういった〝裏向き〟の活動の中でルージューの姫君クロエと出会い、見初めることとなる。


左利き。




<メイキングこぼれ話>


立ち位置的には『アルスラーン戦記』のナルサス(当然ダリューンはエリベルト)。……なのだが、キャラの造形は『鋼の錬金術師』のエドワード・エルリックな感じ。気の措けない〝身内〟に見せる気さくさと、貴族社会の中での達観した立居振舞とのギャップが魅力……に描きたいものです。

■ジョスタン・エウラリオ・マルティ・ポーロ(20 ⇒23歳/♂)


ルージュー辺境伯マルティ家 次男




本作の主人公の1人。物語の序盤から西のカルデラの側に居る〝いま一人の〟貴公子。(……なのだが、アレシオ・リーノ同様、第1部では余り目立っていない。)


西のカルデラの地に6つの邦を束ねるルージュー辺境伯を世襲するマルティ家の御曹司で、多くの兄弟親族がいる。


聖王朝に先駆けて火薬主体の軍制を模索するなど天賦の〝戦の才〟を持つも、一族に関わる諸豪族の干渉に嫌気がさしており、すぐ下の異母弟アティリオと図って〝出来た弟〟と〝うつけの兄〟をそれぞれに演じ、周囲の目を欺きつつ韜晦していた。


〝果断の人〟の二つ名を持つ。




その二つ名の通りの〝動くべき時の果断さ〟と〝動くべからざるそうでない時の泰然さ〟を合わせ持ち、〝過去に縛られない柔軟さ〟と〝こうと決めたら梃子でも動かぬ頑固さ〟がある。


欠点は、大邦ルージューの御曹司として育ったためか他人の風下に立つことに慣れておらず、侮られることを嫌うこと。が、傲慢であるかと言えばそういうばかりでもない。


政略で名門ユレ家の姫オリアンヌを妻に迎えたが、夫婦仲はたいへんに睦まじい様子。


プレシナ大公家の嫡男アレシオ・リーノを高く評価し、警戒してもいる。




<メイキングこぼれ話>


アレシオ・リーノの好敵手ライバル。精悍で豪快な兄貴系。イメージは『十二国記』の延王 小松尚隆かな。


〝戦バカ〟を触れ回っていますが実は深慮の人のよう。


でも人間としては判りやすく、裏表のないナイスガイを目指します。

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