風早 1

文字数 5,330文字


 カルデラ南壁での出来事…──タルデリ宮中伯の身を襲った騒ぎに動揺することとなったのはライムンド・ガセトの率いるルージューの側も同様であった。

 その時、〝タルデリの座乗船〈ハウルセク〉の停泊する船溜〟の隣の溜に本陣を置き、その周辺の台地に手勢を置いていたライムンドは、先ずペナーティの上げさせたワイバーンを遠目に見て怪訝となった。
 当初(はじめ)、聖王朝軍でいうところの1小隊……6騎ほどのワイバーンが上空に上がったのを見るや、すぐさまグリフォン(大鷲獣)に戦支度をさせ、周辺の手勢には合流する様、伝令に指示を与え始めたライムンドだったが、ほどなく〝敵襲〟を報せる警笛の鋭い音を聴くことになったのだ。〝風の精〟を使役する者が吹いたのだろう。その音色は遠く広くカルデラの南の空に届いた。
 それでいま一度西方長官の座乗船の泊まる〝隣の船溜〟の空へと視線を遣ったライムンドは、そこに浮舟の砦から上がったと思われる、少なくとも2桁以上のワイバーン(竜騎)の編隊を認めることになった。

兄者(ライムンド)! これは一体どういうことだ⁉」
 弟テオドロが兜を着けながら近付いて来た。
「──マンドリーニの本軍は〝狩場〟に入る直前で止まったのだろう? 目論見は見合わせではなかったのか⁉」
「わからん。少なくともアティリオからの最後の報ではそうなっていた……だが兎にも角にも()()()西方長官が襲われている……」
「一体誰が〝抜け駆け〟を──」
「父上! 叔父上!」
 そこにライムンドの五男マルコが駆けて来て言った。
「これは聞いておりませぬ! 兄上(ジョスタン)らとの連繋は出来ているのですか⁉」
 その口ぶりではマルコもまた父伯(ライムンド)手下(てか)を動かしたと思っているらしい。
「早まるでない、これは我らではないぞ」
 ライムンドは、先ずは(はや)るマルコを抑えて言った。それから脇に侍している伝令の兵を向いた。
「──伝令! 諸隊には手勢をまとめて〝動くな〟と伝えよ! 我らは取り急ぎ、飛べるグリフォンだけで西方長官の許へと参じる」
 その言を聞き、側に控えていた伝令が各々のワイバーン──ルージューと言えど伝令騎にグリフォンは使ってはいない──に散って行く。
 状況がわからないのはライムンドとて同様であったが、ここで動揺するばかりでは軍の統率はできない。先ずは当面の行動を示し、その上で状況を整理することとした。


 この時、カルデラ南の隘路にはルージューの手勢が其処(そこ)彼処(かしこ)に潜んでいた。
 ルーベン・ミケリーノ率いるマンドリーニ軍がカルデラ南──ルージューの言う〝狩場〟──に入るや、三男アティリオの合図の下、すぐさまマンドリーニの軍と〝浮船の砦〟共々、西方長官の座乗船〈ハウルセク〉を襲う手筈であったのだ。
 それが、最も注意を払って動向を追っていたマンドリーニ軍が〝狩場〟の外で進軍を止めたことで、その目論見が狂うこととなった。
 いま手勢が動いてしまえば、マンドリーニ軍を罠に引きずり込むことが(かな)わなくなる……。
 ライムンドは、ここは初期の目論見の通りに西方長官への臣従を示すべく、自ら手勢を率いて襲撃の現場へと急いだ。

 が、その後、事態が明らかとなってゆくにつれ、ルージューにとって深刻の度が増してゆく。
 襲撃直後の時点で戦支度の成ったグリフォン12騎を率いて〝浮船の砦〟に進出したライムンドは、現場に近付く前に聖王朝の竜騎20騎ばかりに阻まれることになった。
 西方軍は混乱の中にも断固とした戦意を見せ、ルージュー方を決して近付けさせなかった。
 昨日まで翼を並べていた聖王朝の竜騎らが激昂して散々に矢を射かけてきたときに、ライムンドは(ようや)く事態を察した。

 アンダイエ伯ポンペオ・アンセルモ・タルデリが死んだ……いや、殺されたのだろう、と。

 ライムンドは手下のグリフォン・ライダーと共に一旦退き、再び諸隊の将に伝令を飛ばした。
 決断をしたのである。せざるを得ぬ処に追い込まれた、と言ってもよい。


 西方長官がルージューの招きで訪れた〝カルデラの南の地〟において賊に討たれたのだ。

 いまこの時、マンドリーニの船団は前進を止めており、カルデラの南の空に侵入せずに様子を窺っている。そのことがどの様な意図であるのかはわからない。が、これでは目論んだ通りにタルデリ共々一時にルーベン・ミケリーノを仕留めることはできないことは確かである。
 西方長官(タルデリ)がルージューの地で斃れたこの状況で、ルーベン・ミケリーノがルージューの地に〝厳重な臨戦態勢を敷くこと〟なく入ることは、最早あるまい。
 西方長官が死んだことで目論見は破綻した。

 であれば、開戦を遅らせる意味はもうなかった。
 どの道、西方長官の死の責は聖王朝……元老院より厳しく問われることとなる。一族の中から首の1つ2つは差し出すことを求められよう。それを拒めば、それこそ戦は必至となる。

 目論見の通りにマンドリーニ軍を罠に引き込み、一挙にこれを屠ることは叶わなくなってしまったが、()くなる上はせめて此の機に、聖王朝の西方統治の象徴である歴代の西方長官の旗艦〈ハウルセク〉を沈めてしまわねばならない。

 そうライムンドは決断した。
 それに、万に一つ……ことがルーベン・ミケリーノに伝われば、マンドリーニの船団を〝狩場〟へと呼び込むことも叶うかもしれないではないか。


 ライムンドは、ルージューの情報を扱わせている三男アティリオの許へと近習の一人を伝令として送り出した。このような時、書面を起こして伝書のハトで送るより〝信の置ける〟人間(ひと)を遣った方が速い。本軍を預けた次男ジョスタンへは、アティリオが正しく伝えるだろう。後はジョスタンが軍を動かす。
 そうして自らは弟テオドロを伴い、カルデラの南の各地の前線の諸隊を参集させつつ〈ハウルセク〉と〝浮舟の砦〟の在る船溜へ向かった。この場でルージュー辺境伯として出来ることは、迅速な行動で不退転の決意を示すことだけである。
 此度は古式に則り、戦の口上を述べさせる〝軍使〟に、五男〝礼節の人〟マルコを先に遣った。



 カルデラの南側〈サパト〉の隠し見附…──。
 1時間(ホーラ)とせずして、未だ見附に詰めていたアティリオとエドゥアルド・マールロキンは、ライムンドの伝えてきた状況の変化に言葉を失うこととなった。

 伝令の言によれば、〝浮舟の砦〟のある船溜を急襲すべく、既にライムンドは手勢を率いて急行中であるという。……〈ハウルセク〉がカルデラの南の隘路を脱出する前にこれを捉え撃破するというのだ。
 この伝令が届くまでにも時間差がある。既に戦端は開かれたということだった。

 父ライムンドの動きは、マンドリーニ軍がルージュー領内に入って来ない現状(いま)、手筈と違う動きである。その性急さにアティリオとエドゥアルドが顔を見合せると、伝令が状況を補足した。

 手下の者の暴発か、将又(はたまた)何処(いずこ)の手による陰謀か、西方長官タルデリは、既に座乗船〈ハウルセク〉の船上で何者かの手に掛かり斃れているという。

 アティリオが黙って天を仰いだ。
 ならば已むを得ない。
 ことの真相はさて置き、ルージューの地で〝聖王の代理人〟たる西方長官が討たれているのだ……。
 その衝撃にアティリオのみならずエドゥアルドも嘆息をした。

 が、アティリオもエドゥアルドも、茫然自失するような男たちではなかった。
 ルージュー辺境伯たるライムンドが所期の目論見を捨て挙兵に踏み切ったことを理解するや、すぐさま行動を起こしている。

 先ず、カルデラの西側──マールロキン領に程近い場所──に隠し築かれた翼獣母船の秘密の母港に帰投中であったジョスタン・エウラリオの座乗船〈ゲミスリック〉に向け、龕灯(がんどう)による〝光の合図〟を送る。
現場(げんじょう)ニテ待機セヨ〟 と指示をした。
 同時に〝非常ノ事態〟である旨と〝警戒ヲ厳トセヨ〟との信号も併せて送っている。

 そして〈ゲミスリック〉の留まる〝空戦域〟へ、ライムンドからの伝令をそのまま向かわせた。現地の見附には、伝令を船団までエスコート(誘導)するよう伝書のハトを飛ばして指示も与えている。

 次にアティリオはルージュー城に状況を伝える使者を出し、さらに城の近郊に在る工廠には伝書バトを飛ばした。ルージューの誇る戦船〈フラガラッハ〉をカルデラの南へと出撃()させたのである。
 父ライムンドから指示はなかったが、大船〈ハウルセク〉と戦うのである。船溜を脱出された場合、あの船の〝行き脚〟を遮り決戦を誘引しようとすれば〈フラガラッハ〉の存在が必要となるかも知れないと、そう判断した。

 そして自身は快速の4パーチ(≒12メートル)飛空艇を率いて船溜へと急行した。

 実はこの時、〈サパト〉に居たアティリオにはマンドリーニの船団の動向を追い続ける必要はあった。マンドリーニ軍の指揮を執るルーベン・ミケリーノがいつ気紛れを起こすか判らないのだ。
 異母兄(あに)ジョスタンは恐らく〝万が一つの可能性〟にも対応するため、翼獣母船をカルデラの南に留めるだろう。〈サパト〉の隠し見附は彼らを誘導する必要があった。

 その上で、迷いはあったが〈サパト〉の見附はエドゥアルド・マールロキンに任せることにした。目論見から外れたところで始まった戦である。その〝事始め〟は、自分の耳目で直に確認をしておきたかったのだ。


 一方、〈ゲミスリック〉の船上に居たジョスタンの許には、半時間(ホーラ)程で伝令が辿り着いている。
 母船の群を臨戦態勢で待機させていたジョスタンは、弟オスバルド共々〝伝令の伝えるところ〟に言葉を失った。
 ルージューにとっては不本意な開戦であるが、戦端は開かれることとなったという。

 であれば、この上は致し方のないこととして次善の行動に入らねばならないが、この状況下でアティリオとエドゥアルドは母船の群を現場に〝待機〟させよと云ってきている。
 やはりカルデラの南に止まったマンドリーニの船団……ルーベン・ミケリーノの動向を無視できないのだ。
 それはそうだろう。現在(いま)となってはマンドリーニの私兵団こそが西方軍の主隊と言えた。
 だからジョスタンも麾下の80騎のグリフォンに戦支度をさせて待機している。

 だがジョスタン自身はルーベン・ミケリーノが船団をこれ以上進めることはないと考えており、グリフォンの準備は〝限り無く低い掛け率〟に対する保険と思っている。
 彼もまた〝異母弟(おとうと)と同様の理由〟で翼獣母船の群の指揮を実弟のオスバルドに任すと、自らは子飼いのグリフォン・ライダー3騎を率い〝浮船の砦〟の在る船溜へと急いだのだった。



 このように〝攻めた側〟とされたルージューも混乱していたが、〝攻められた側〟である西方軍は更なる混乱の渦中にあった。

 兵の差配に関しては、皮肉にも西方長官のタルデリが居なくなったことで首席武官ペナーティが掌握する処となり寧ろ問題が解消している。将兵と役夫は敵中に孤立していることを意識しており、ペナーティの堅実さの下で良く纏まった。
 全軍が死兵となる構えを現したとき、ルージュー辺境伯ライムンドはこれと正面から相対(あいたい)することをしなかった……〝城を枕に討死〟する覚悟を決めた兵は厄介である。
 代わりにライムンドが定めた標的は、聖王朝の西方支配の象徴〈ハウルセク〉だった。

 〈ハウルセク〉には、最初に〝戦大鷲(武装グリフォン)〟の縦隊に降下攻撃を受けたときにペナーティから船溜を脱出するよう指示が出されていた。
 ペナーティにすれば、そのままカルデラの隘路を抜けてアンダイエに退避、あるいは島嶼諸邦を出立したマンドリーニの船団に合流をすればよかったのである。西方の冬の西風はカルデラからは追い風であり〈ハウルセク〉に利を(もたら)すはずだ。

 だがグリフォンの襲撃でタルデリが死に〈ハウルセク〉を自由に動かすことのが出来るようになった船長はそうは考えなかった。
 彼はペナーティからの信号を受けて船溜を出たものの、逃走はせずにカルデラの南の空に留まった。
 〝浮舟の砦〟の将兵がアンダイエもしくは島嶼諸邦へと逃げ延びるには大船〈ハウルセク〉の積載量と航続力が必要であることが理由であった。彼には〝浮舟の砦〟に西方軍の将兵を残して逃げることをよしとすることは、出来なかったのだ。
 そうして船溜の外に〈ハウルセク〉が停船すると、その周囲をルージューの諸隊が取り囲み始めた。
 〈ハウルセク〉は脱出の機会を失った。


 その少し前には〝浮舟の砦〟のペナーティの許に軍使を示す〝白旗〟を掲げた飛空艇が進み出て、戦の口上を述べている。マルティの五男〝礼節の人〟マルコであった。

 マルコ・マルティの古式に則った〝戦の口上〟をペナーティは聞いた。

〝今日の西方長官タルデリ襲撃の件、ルージューは与り知らぬこと。
 されど西方長官府に思う処有って武威に立つことを画策したこと、これは事実である。
 何者かがルージューを騙り西方長官を討ったことは是非に及ばず。当方はこれを以って戦を覚悟した。
 この上は戦場に(まみ)え戦って死ぬ〟か、砦を明け渡し武装を解いて降伏するか、(いず)れか選ばれよ〟


 砦を預かるボニファーツィオ・ペナーティは、今日これまでのルージューの二心を了としていない。
 戦わずして(くだ)ることを〝よし〟ともしなかった。
 だから〝戦う〟ことを告げたのである。
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登場人物紹介

■エリベルト・マリアニ(12 →19 ⇒22歳/♂)


竜騎見習い →聖王朝宮中竜騎(アレシオ・リーノ近習衆筆頭)




本作の主人公の1人。蒼い瞳、「麻くず」の色の髪トウヘッド。幼少時より〝物静かな〟顔立ちながら、その瞳に怜悧さを宿していたという。成人後は精悍さが強調されるのはお約束。もちろん均整のとれた長身。


生家は聖王朝の武門プレシナ大公家に代々使える宮中竜騎の家柄で、父リスピオは大公麾下の〈プレシナ大隊〉にあって筆頭の竜騎長である。


アレシオ・リーノの竜騎見習いへの志願の折での〝とある行い〟がアレシオの目に留まり、取り立てられることとなる。以後、彼の半身とも言うべき存在となった。




主人公の1人アロイジウス・ロルバッハの竜騎の師であり、そのアロイジウスの姉ユリアを妻に迎えた。


そのユリアを巡り権門マンドリーニ公の勘気を被り、第1部の後半では近習衆を解任され閑職に左遷の憂き目となっているが、アレシオ・リーノからの信頼は些かも損なわれていない模様。




<メイキングこぼれ話>


モデルは『銀河英雄伝説』のキルヒアイスですよ、それは。(笑)


物語の幕開けの視点の主人公なのに、以降、第1部ではほとんど出番がありません。(汗) 失敗ですねぃ。


でも物語全体ではアレシオ・リーノの片腕として活躍することが約束されているので〝問題無しノープロブレム〟なのですよ!

■アレシオ・リーノ・プレシナ(11 →18 ⇒21歳/♂)


竜騎見習い →プレシナ第2大隊第3中隊長 ⇒第2大隊次席指揮官(プレシナ大公家嫡子)




本作の主人公の1人で、聖王朝三公の1つ、武門のプレシナ大公家の嫡子。黒曜石の瞳、射干玉ぬばたまの髪の美丈夫──女性と見紛う美貌ながら溢れる才気、命令することになれた物言い、美しきモノへの憧憬、貴族たる気概と魂……、そして前線に兵と共に在ることを厭わぬ剛健、という真の武人。(盛り過ぎw)




自らの竜騎見習いの志願の折に出会ったエリベルト・マリアニを〝竹馬の友〟として側に置き、緩慢な衰退の中にある聖王朝にあって、火薬を始めとする科学技術を利用した軍制への改革を推し進めている。


かつては元老院派の論客ランプニャーニ宮中伯に学び武威に慎重な姿勢を見せていた。


なお、自身の傲慢を戒めるためか、幼き日に施しをした〝へロット下層民の娘〟から突き返された小金貨をペンダントとして常に身に付けている。




<メイキングこぼれ話>


当然こちらはラインハルトと思いきや、黒髪の美しい貴公子。現在なら『キングダム』の嬴政な感じでしょうか?


本作全般の主人公。やはり真価は第2部以降……ということに。


ちょっとだけネタバレな感じで言うと、〝ジブリ作品『風立ちぬ』の主人公は自分の理想的な美にしか関心のない残酷な男〟というキャラ分析を読んでインスパイアされてみました。そういう複雑なキャラを描いてみたいです。(笑)

■アロイジウス・ロルバッハ(8 →14 ⇒17歳/♂)


戦利奴隷 →竜騎見習い ⇒独立竜騎(西方軍長官府附き武官/ロルバッハ家当主)




本作の主人公の1人で最年少の少年竜騎。鳶色の目と同じ色の巻き毛の髪。頭の回転が速く弁も立つ。


元はアンダイエの工房職人の子だったが、アンダイエが聖王朝に攻め落とされたことにより姉ユリア共々戦利奴隷となった。奴隷市でロルバッハ砦の独立竜騎ファリエロに救われたことで姉と共にロルバッハの養子となり竜騎となる。




竜騎として養父とエリベルト・マリアニの薫陶を受け、優れた若武者であると共に〝知識の間〟ではアニョロ・ヴェルガウソと同窓という文武両道の者である。


その人物像の最大の特徴は〝誠実な為人ひととなり〟で、理よりも情で行動する。


アニョロとはその妹アニタと共に兄妹同然に育つ。そのアニタとは互いに憎からず思う間柄であるが……。




<メイキングこぼれ話>


いたって〝普通の〟主人公です。多くを語る必要はないという……。(笑)


モデルは安彦良和の『アリオン』の主人公アリオン。


……でも、ちょっと不幸な出来事が続いてますね。ごめんよ、アーロイ。

■アニョロ・ウィレンテ・ヴェルガウソ(18 ⇒21歳/♂)


竜騎見習い ⇒アンダイエ商館長代理(ヴェルガウソ子爵家当主)




本作の主人公の1人。17歳で父を流行り病で失い子爵家を相続した。ヴェルガウソ家はタルデリ宮中伯家を補佐する官吏貴族の家で、画に描いたような中級貴族の家柄。貴族社会の体面は立てるが個人にへつらうということをしない性格で、少々扱いにくい人物。


一応、竜騎見習いの資格はある(師は友人でもあるエリベルト・マリアニ……)が自他共に認める文筆の人で、聖王朝の学術機関〝知識の間〟で学ぶ学徒である。知恵者を気取っている。


アロイジウス・ロルバッハの身元引受人を父から引き継ぎ、彼とは兄弟のような仲。アニタという名の妹が1人いる。




主家の主ポンペオ・タルデリの西方長官着任に伴いルージューの地に赴任、アンダイエ商館の館長代理として聖王朝西方の情報収集を取仕切っている。そういった〝裏向き〟の活動の中でルージューの姫君クロエと出会い、見初めることとなる。


左利き。




<メイキングこぼれ話>


立ち位置的には『アルスラーン戦記』のナルサス(当然ダリューンはエリベルト)。……なのだが、キャラの造形は『鋼の錬金術師』のエドワード・エルリックな感じ。気の措けない〝身内〟に見せる気さくさと、貴族社会の中での達観した立居振舞とのギャップが魅力……に描きたいものです。

■ジョスタン・エウラリオ・マルティ・ポーロ(20 ⇒23歳/♂)


ルージュー辺境伯マルティ家 次男




本作の主人公の1人。物語の序盤から西のカルデラの側に居る〝いま一人の〟貴公子。(……なのだが、アレシオ・リーノ同様、第1部では余り目立っていない。)


西のカルデラの地に6つの邦を束ねるルージュー辺境伯を世襲するマルティ家の御曹司で、多くの兄弟親族がいる。


聖王朝に先駆けて火薬主体の軍制を模索するなど天賦の〝戦の才〟を持つも、一族に関わる諸豪族の干渉に嫌気がさしており、すぐ下の異母弟アティリオと図って〝出来た弟〟と〝うつけの兄〟をそれぞれに演じ、周囲の目を欺きつつ韜晦していた。


〝果断の人〟の二つ名を持つ。




その二つ名の通りの〝動くべき時の果断さ〟と〝動くべからざるそうでない時の泰然さ〟を合わせ持ち、〝過去に縛られない柔軟さ〟と〝こうと決めたら梃子でも動かぬ頑固さ〟がある。


欠点は、大邦ルージューの御曹司として育ったためか他人の風下に立つことに慣れておらず、侮られることを嫌うこと。が、傲慢であるかと言えばそういうばかりでもない。


政略で名門ユレ家の姫オリアンヌを妻に迎えたが、夫婦仲はたいへんに睦まじい様子。


プレシナ大公家の嫡男アレシオ・リーノを高く評価し、警戒してもいる。




<メイキングこぼれ話>


アレシオ・リーノの好敵手ライバル。精悍で豪快な兄貴系。イメージは『十二国記』の延王 小松尚隆かな。


〝戦バカ〟を触れ回っていますが実は深慮の人のよう。


でも人間としては判りやすく、裏表のないナイスガイを目指します。

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