嵐気 2

文字数 5,095文字


 アティリオはそれ以上は何も言わず、真っ直ぐにドメニコーニを見遣り返答を促している。
 探る様な互いの視線の中、時間が静かに流れてゆく。
 やがてドメニコーニは口を開いた。
「〝聖王朝の代理人〟たる西方長官を騙し討った挙句に、義勇の軍を率いるマンドリーニ家の男子(おとこ)の首を差し出せ、と……?」
 慎重な声音が質す。それにアティリオの方は頷いて返した。
 黙ったままのルージューの全権に、ドメニコーニはわずかに不快気な表情を()()()云う。
見縊(みくび)ってもらっては困る。確かに西方長官を討たれ〈ハウルセク〉を喪い、カルデラ南壁の砦を失いはしたが、それでも西方軍の主隊は未だ健在……マンドリーニの義勇軍を加えればルージュー軍になお伍する。さらにはシラクイラ(中央)にプレシナ始め精鋭軍も控えている……」
 ドメニコーニは笑いもせず、怒気も見せず、ただ淡々と云った。この辺り、聖王朝を支える官僚人(テクノクラート)の面目躍如といえる。ドメニコーニは官僚人を輩出する第二階層の出身だった。
「いまの私は文官の立場だが、そのくらいの状況の理解はできる」
 ドメニコーニはアティリオに小首を傾げるようにして言葉を結んだ。

「それで……」 アティリオの方は、むしろ尊大にも採れる表情(かお)声音(こえ)で返す。「──…この先何年戦うおつもりか?」
 ドメニコーニの片方の眉が撥ね上がるように動いた。
 アティリオは続ける。
「云われるまでもなく西方軍は健在でシラクイラにはなお兵が有る。この先戦おうと思えば戦える……。が、我がルージューも()()は同じ。此度の戦で我らの力はお判りになった。互いににこの先、十年二十年は戦うことも出来ましょうが…──」
 アティリオはドメニコーニを覗き込むように訊いた。
「さて……このまま戦禍が拡がればどうなります?」
「…………」
 再びドメニコーニの方が黙った。
 アティリオが外連を利かせた声を表情で続ける。
「アンダイエは工房都市……主に手掛けるのは飛行石の精錬・加工。戦となれば当然、カルデラの飛行石は入らなくなる。折角の技術も設備も〝持ち腐れ〟……。アンダイエが廃れれば西方は荒れましょうが、その責は一体誰が負わされることになりましょうな?」
 武人は戦の結果を問われるが、その戦が〝不首尾〟となればそれで生じる不都合の責を文官が負わされるというのが聖王朝の(なら)わしである。アティリオはそれを云ったのだった。〝第二階層出身の首席文官〟であるドメニコーニには戦の是非について発言できることはほとんどない。それでいて戦があろうとなかろうと、任地である西方の徴税や交易の不出来は彼の責任となる。
 ドメニコーニはしばし黙った後、静かに訊いた。

「ルーベン・ミケリーノの首一つで、そのような未来を回避できると?」
 ドメニコーニのその台詞を聞いてアティリオの口許が小さく(ほころ)んだ、とアニョロは思った。
 そのアティリオは、
「そもそもルージュー(我ら)が戦を望んだのではない。西方を侮ったタルデリをルーベン・ミケリーノが戦に(けしか)けた結果がこれ。タルデリは自らの命でそのツケを(あがな)った訳だが……」
 と、そこまで云うと声の調子を変えた。
「──後はルーベン・ミケリーノが除かれれば、西方はこれまで通りシラクイラの権威の許に服すことができます。
 その際には、ドメニコーニ殿のような〝先を見通せ、話の分かる御方〟がアンダイエを差配しておられることが望ましい…──と、そのように我らとしても考えている次第……」
 首席文官に微笑んで見せた。
 ルーベン・ミケリーノが除かれればルージューは再び聖王朝に服すことに異存はない。その際の交渉の窓口にはドメニコーニ殿を考えている、との秋波である。
 黙っているドメニコーニにアティリオは続ける。
「──なに、ルーベン・ミケリーノを捕らえて引き渡せ、などとは言っておりません……。あの男を討つ我らの動きを見逃し、事が成れば、速やかに事態を収めるべく動いて頂きたい」
「…………」 ドメニコーニは慎重な面差しのまま訊く。「即答が必要か?」

「ルーベン・ミケリーノがアンダイエに着くまで後4日程…──西方を大戦から避けるのは〝いま〟です」
 そう微笑んでアティリオは応じた。ドメニコーニは目を閉じて息を吸う。
 それから再び目を開けたドメニコーニは静かに告げた。
「いいでしょう。私はルーベン・ミケリーノのことは与り知らぬ身。戦の理由が無くなるのであればそれがよい」
 アティリオとアニョロはそれに肯くと、「では…──」と、アロイジウスと2人の従士──クロエとアベル──を従え、席を立った。



 アニョロら一行は、ドメニコーニの屋敷を、表でなく裏の路地に面した戸口から辞した。
 随分と静かだった。
 開戦とその後の顛末の一報は長官府ならびに西方軍に届いているが、市中はその限りでないのか普段と別段変わらぬ午後の営みにある。表通りを1本(へだ)てれば喧噪もなかった。
 アンダイエは9年前の戦役の痛手から未だ立ち直ってはいなかった。

 目抜き通りからは人目につかない路地をしばらく歩いてから、アニョロはアティリオに訊くとはなしに言う。
「──あんたに〝全権〟が任されていたとは初耳だった……」
「はて……私はそう言ったか?」
 何喰わぬ表情(かお)でアティリオは応じた。
「ルーベン・ミケリーノを除くに於いてのみ、ジョスタン(あに)からは〝自由な裁量〟を与えられているがね。〝ルージューの全権〟などというものじゃない……。もっとも、父上とてこの位の〝手〟はチラつかせようから、ま、事後承認……ということになる」
 それを最初、怪訝な表情でアティリオのことを見返していたアニョロだったが、やがて呆れ顔で何か言葉を探そうとして、結局、何も見つからずに口を閉ざすこととなった。

 そんなアニョロに、今度は話題を転じてアティリオが訊いた。
「ドメニコーニはどう動くと見る?」
「そうだな……ドメニコーニ殿はあれでなかなか野心家だ」 アニョロは一息を吐き、「──確かにアレは効果的な〝手〟だった……と思う」
 と顎にこぶしを充てて言った。そんなアニョロにアティリオは薄く嗤う。
「では、布石は成ったな」
「ああ…──」
 アニョロは表情を改め肯いた。
「──後は我らの首尾如何だ。ルーベンを討つことさえ出来れば、後はドメニコーニ殿が巧く捌いてくれようさ……」

 アニョロの乾いた声を耳して、数歩後ろを付いて歩くクロエの表情(かお)は曇った。アニョロもアティリオも、自らの命を〝賭け金〟とした危険なゲーム(賭け事)に夢中なように見える……。
 先ほどアティリオは、〝役〟が完成する(手札が揃う)前に、賭けのリターン(配当)を吊り上げようとさらにチップ(掛け金)を張ってみせた。
 ──これでは〝命の切売り〟だわ……。
 クロエは内心の不安を押隠しつつ、先を歩く2人の背を見遣った。

 その彼女には、それが同道する彼女(クロエ)の身を案じるが(ゆえ)レイズ(吊り上げ)だったことを理解できなかった。
 ただルーベン・ミケリーノを討てばよいのであれば態々(わざわざ)レイズする必要などない。西方軍の一部の者と謀り、〝捕らえられ引き立てられる〟ことを装って検分のルーベン・ミケリーノの前に立てば、彼を刺すことなど造作もない。後はどうなろうとルーベンを除くことは出来よう。それが〝一番安い役〟なのである。
 だがそれではクロエの身を確実に守ることはできない。
 ルーベン・ミケリーノを斃した後、アンダイエとルージューとが〝互いの弓を下ろす〟段取りを示し、その交渉の窓口であると認識させることで事後の安全を得る、というのがアニョロとアティリオの描く布石だった。そのための〝手札〟をオリンド・ドメニコーニに対して切って見せたのだ。
 ──…が、いまのクロエは、そこまで思い至ることはできない。


「アーロイ!」
 路地を行く一行は、その黄色い声に足を止めた。……女の声である。
 最後尾を歩いていた当のアロイジウスは、振り見遣った視界の先に小柄な少女の人影を見た。
「ソニア……?」
 知った顔の少女だった。未だ十代も半ばの面差しには子供らしさが残っていた。アロイジウスのアンダイエでの下宿先の娘でソニアといった。
 少女は駆け寄る素振りを見せたが、アロイジウスの周囲に見知った顔のないのに逡巡し、歩を止めた。
「……アロイジウス」
 アニョロが顰めた声と共に目配せを寄こす。アロイジウスはそれに頷いて返すと、立ち止って様子を見ているソニアの方へと歩みを向けた。アニョロは歩みを再開し、後を追ってルージューの者が続いた。そして一行は路地を折れて消えた。
「アーロイ…──」
 そんなアニョロらを目で追っていたソニアという名の少女は、一行が路地に消えると、
「……いまの人達は?」
 と、怪訝にアロイジウスを見上げて訊いた。
「うん……」 アロイジウスは曖昧に応える。「──…彼らは、カルデラを経由してきた〝北からの商人〟さ。彼らの船に乗せてもらって来たんだ」
 咄嗟にそう言っていた。

「ふぅん」
 ソニアの方はもう一度だけ路地の奥に目線を遣ったが、あとはもうそれ以上詮索することなく、改めてアロイジウスを見上げて笑顔になった。そして…──、
「ね、いつ帰ってきたの? この後は? 部屋には戻るんでしょ? 何で連絡をくれないの。アンダイエにはいつまで? 夕食は? ……そうだ! アニタさま! アニタさまとのその後はどうなの?」
 〝いつも通り〟の畳みかけるような矢継早の言葉の奔流……。気圧されたアロイジウスは少し困った表情(かお)となり、ソニアは邪気の無い顔を見下ろした。

 秘かに恐れていた通り……、気拙いことになった、とアロイジウスは思った……。
 それを押し隠すのに決して少なくない努力をして彼女に笑って返す。
 出来ればこれでこの場を立ち去りたかった。このまま彼女が質して来るであろう言が恐ろしかった……。
「──ウテロ兄さまは一緒じゃないのよね……何か言付かってはないかしら? ね? どう?」

 嗚呼──、やはりそれを訊かれることになるか……。
 アロイジウスは、期待の目で見上げるソニアから、何とか目を逸らすのがやっとだった。
 アニタの奇禍を知らぬソニアの無知な残酷さは堪えることが出来た。が、全てを知っている自分が、ソニアに同じことをせねばならない…──。


 今年数えで15歳のソニアには、エレウテリオ(ウテロ)・ムナーリという5歳年齢(とし)の離れた従兄がいた。彼は聖王朝よりアンダイエに小さな居館を与えられ西方軍に組み込まれている土着世襲の竜騎で、西方軍にあってアロイジウスの同僚であった。此度のカルデラ南壁の戦いにも翼を並べて戦っている。
 年長で面倒見のよい男であったエレウテリオは、アロイジウスを弟のように可愛がってくれた。ソニアの屋敷を下宿先にと紹介してくれたのも(ウテロ)であった。アニタとの婚約の報告を竜騎仲間に話した時、一番に喜んでくれたのも彼だった。
 そのエレウテリオの顔は、〝第1次カルデラ南壁の戦い〟の後の〝浮舟の砦〟になかった。あの戦いで還ってこなかった竜騎は14騎…──エレウテリオはその1人だった。


「どうしたの、アーロイ? ……何だか顔色が良くないよ?」
 言葉を探すアロイジウスを心配そうな表情でソニアが見上げていた。
 アロイジウスは笑みを浮かべ直す。結局、こう言っていた。
「──ボニファーツィオ卿の使いなんだ……。しばらくアンダイエに留まるけれど、先の人たちを案内しなくちゃいけない。彼らと船宿に同宿するから部屋には戻らないよ」
 それを聞くソニアは残念そうな表情(かお)にはなったが、〝そんなことより〟というふうな期待の目線を向けてくる。
「ウテロは……」
 アロイジウスは嘘を言った。
「カルデラでの観兵式の準備で、まだ現地に居るよ…──」 ソニアの表情に負けて付け加える。「〝砦には何もないけれど、帰路にはカプレントを回れるからソニアに何か買っていく〟と言ってた……」
 付け加えたことの方は嘘じゃない……。カプレントで上等の服を扱う店を紹介してくれと頼まれ、こっそりアニタに手紙で訊いたのだ。


「そか……」
 ソニアはその言葉に満足すると、もう行くからと片手を上げたアロイジウスを笑顔で見送った。──彼女はエレウテリオの許嫁だった。
 アロイジウスは、背を向けると足を速めてその場から離れた。



 同じ日の午後も下って冬の陽が翳る頃──。
 アンダイエの3つの主要な港の(うち)、北側──ルージューへの玄関口──の港の埠頭に黒塗りの快速艇が滑るように接岸し、(もやい)を結んでいる。
 ローブ姿の女がアンダイエに降り立ったとき、強い風が桟橋を吹き抜けた。
 目深に被ったフードが孕んだ風に跳んで、長い髪が(こぼ)れ流れた。

 冷たい風が、島を渡っていった……。
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登場人物紹介

■エリベルト・マリアニ(12 →19 ⇒22歳/♂)


竜騎見習い →聖王朝宮中竜騎(アレシオ・リーノ近習衆筆頭)




本作の主人公の1人。蒼い瞳、「麻くず」の色の髪トウヘッド。幼少時より〝物静かな〟顔立ちながら、その瞳に怜悧さを宿していたという。成人後は精悍さが強調されるのはお約束。もちろん均整のとれた長身。


生家は聖王朝の武門プレシナ大公家に代々使える宮中竜騎の家柄で、父リスピオは大公麾下の〈プレシナ大隊〉にあって筆頭の竜騎長である。


アレシオ・リーノの竜騎見習いへの志願の折での〝とある行い〟がアレシオの目に留まり、取り立てられることとなる。以後、彼の半身とも言うべき存在となった。




主人公の1人アロイジウス・ロルバッハの竜騎の師であり、そのアロイジウスの姉ユリアを妻に迎えた。


そのユリアを巡り権門マンドリーニ公の勘気を被り、第1部の後半では近習衆を解任され閑職に左遷の憂き目となっているが、アレシオ・リーノからの信頼は些かも損なわれていない模様。




<メイキングこぼれ話>


モデルは『銀河英雄伝説』のキルヒアイスですよ、それは。(笑)


物語の幕開けの視点の主人公なのに、以降、第1部ではほとんど出番がありません。(汗) 失敗ですねぃ。


でも物語全体ではアレシオ・リーノの片腕として活躍することが約束されているので〝問題無しノープロブレム〟なのですよ!

■アレシオ・リーノ・プレシナ(11 →18 ⇒21歳/♂)


竜騎見習い →プレシナ第2大隊第3中隊長 ⇒第2大隊次席指揮官(プレシナ大公家嫡子)




本作の主人公の1人で、聖王朝三公の1つ、武門のプレシナ大公家の嫡子。黒曜石の瞳、射干玉ぬばたまの髪の美丈夫──女性と見紛う美貌ながら溢れる才気、命令することになれた物言い、美しきモノへの憧憬、貴族たる気概と魂……、そして前線に兵と共に在ることを厭わぬ剛健、という真の武人。(盛り過ぎw)




自らの竜騎見習いの志願の折に出会ったエリベルト・マリアニを〝竹馬の友〟として側に置き、緩慢な衰退の中にある聖王朝にあって、火薬を始めとする科学技術を利用した軍制への改革を推し進めている。


かつては元老院派の論客ランプニャーニ宮中伯に学び武威に慎重な姿勢を見せていた。


なお、自身の傲慢を戒めるためか、幼き日に施しをした〝へロット下層民の娘〟から突き返された小金貨をペンダントとして常に身に付けている。




<メイキングこぼれ話>


当然こちらはラインハルトと思いきや、黒髪の美しい貴公子。現在なら『キングダム』の嬴政な感じでしょうか?


本作全般の主人公。やはり真価は第2部以降……ということに。


ちょっとだけネタバレな感じで言うと、〝ジブリ作品『風立ちぬ』の主人公は自分の理想的な美にしか関心のない残酷な男〟というキャラ分析を読んでインスパイアされてみました。そういう複雑なキャラを描いてみたいです。(笑)

■アロイジウス・ロルバッハ(8 →14 ⇒17歳/♂)


戦利奴隷 →竜騎見習い ⇒独立竜騎(西方軍長官府附き武官/ロルバッハ家当主)




本作の主人公の1人で最年少の少年竜騎。鳶色の目と同じ色の巻き毛の髪。頭の回転が速く弁も立つ。


元はアンダイエの工房職人の子だったが、アンダイエが聖王朝に攻め落とされたことにより姉ユリア共々戦利奴隷となった。奴隷市でロルバッハ砦の独立竜騎ファリエロに救われたことで姉と共にロルバッハの養子となり竜騎となる。




竜騎として養父とエリベルト・マリアニの薫陶を受け、優れた若武者であると共に〝知識の間〟ではアニョロ・ヴェルガウソと同窓という文武両道の者である。


その人物像の最大の特徴は〝誠実な為人ひととなり〟で、理よりも情で行動する。


アニョロとはその妹アニタと共に兄妹同然に育つ。そのアニタとは互いに憎からず思う間柄であるが……。




<メイキングこぼれ話>


いたって〝普通の〟主人公です。多くを語る必要はないという……。(笑)


モデルは安彦良和の『アリオン』の主人公アリオン。


……でも、ちょっと不幸な出来事が続いてますね。ごめんよ、アーロイ。

■アニョロ・ウィレンテ・ヴェルガウソ(18 ⇒21歳/♂)


竜騎見習い ⇒アンダイエ商館長代理(ヴェルガウソ子爵家当主)




本作の主人公の1人。17歳で父を流行り病で失い子爵家を相続した。ヴェルガウソ家はタルデリ宮中伯家を補佐する官吏貴族の家で、画に描いたような中級貴族の家柄。貴族社会の体面は立てるが個人にへつらうということをしない性格で、少々扱いにくい人物。


一応、竜騎見習いの資格はある(師は友人でもあるエリベルト・マリアニ……)が自他共に認める文筆の人で、聖王朝の学術機関〝知識の間〟で学ぶ学徒である。知恵者を気取っている。


アロイジウス・ロルバッハの身元引受人を父から引き継ぎ、彼とは兄弟のような仲。アニタという名の妹が1人いる。




主家の主ポンペオ・タルデリの西方長官着任に伴いルージューの地に赴任、アンダイエ商館の館長代理として聖王朝西方の情報収集を取仕切っている。そういった〝裏向き〟の活動の中でルージューの姫君クロエと出会い、見初めることとなる。


左利き。




<メイキングこぼれ話>


立ち位置的には『アルスラーン戦記』のナルサス(当然ダリューンはエリベルト)。……なのだが、キャラの造形は『鋼の錬金術師』のエドワード・エルリックな感じ。気の措けない〝身内〟に見せる気さくさと、貴族社会の中での達観した立居振舞とのギャップが魅力……に描きたいものです。

■ジョスタン・エウラリオ・マルティ・ポーロ(20 ⇒23歳/♂)


ルージュー辺境伯マルティ家 次男




本作の主人公の1人。物語の序盤から西のカルデラの側に居る〝いま一人の〟貴公子。(……なのだが、アレシオ・リーノ同様、第1部では余り目立っていない。)


西のカルデラの地に6つの邦を束ねるルージュー辺境伯を世襲するマルティ家の御曹司で、多くの兄弟親族がいる。


聖王朝に先駆けて火薬主体の軍制を模索するなど天賦の〝戦の才〟を持つも、一族に関わる諸豪族の干渉に嫌気がさしており、すぐ下の異母弟アティリオと図って〝出来た弟〟と〝うつけの兄〟をそれぞれに演じ、周囲の目を欺きつつ韜晦していた。


〝果断の人〟の二つ名を持つ。




その二つ名の通りの〝動くべき時の果断さ〟と〝動くべからざるそうでない時の泰然さ〟を合わせ持ち、〝過去に縛られない柔軟さ〟と〝こうと決めたら梃子でも動かぬ頑固さ〟がある。


欠点は、大邦ルージューの御曹司として育ったためか他人の風下に立つことに慣れておらず、侮られることを嫌うこと。が、傲慢であるかと言えばそういうばかりでもない。


政略で名門ユレ家の姫オリアンヌを妻に迎えたが、夫婦仲はたいへんに睦まじい様子。


プレシナ大公家の嫡男アレシオ・リーノを高く評価し、警戒してもいる。




<メイキングこぼれ話>


アレシオ・リーノの好敵手ライバル。精悍で豪快な兄貴系。イメージは『十二国記』の延王 小松尚隆かな。


〝戦バカ〟を触れ回っていますが実は深慮の人のよう。


でも人間としては判りやすく、裏表のないナイスガイを目指します。

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